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もう嫌だよ

「なにが?」

疲れたよ

「なんで?」

巡って何十年前の朝を迎えてまた彼が死んで

時が進んで戻って戻って戻って

彼が死んで

進んで戻って回って

あぁ、また戻る感覚がする瞼を閉じて開けばまた始まる…

「さあお嬢さんこの手を掴んで」

誰なの

声だけが聞こえる

「君をこの泥沼から引きずりだしてやろうじゃないか」


やめて彼を助けないと


「気楽になれよ人間」


やめ


二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。
一人は泥を見た。一人は星を見た。






僕たちは今緊急事態に陥っていた。

「だぁああああああ!!んだこの数!!」

「少年、吸血鬼は」

「多分あの瓦礫の上にいるヤツっす!」

「レオナルド君は非難を、スティーブン、ザップ滅殺を試みよう」

「わかった」
「うっす」

夜の喧騒、周りには大量のグール
そして瓦礫の上に君臨する血の眷属”ブラッドブリード”らしきもの
こんな状況に陥ることには10分前に遡る


『人類しょっくーーーーん!!日常になりつつある非日常楽しんでいるかい!?』

テレビから耳障りに入ってくる堕落王の声
事務所にいた僕らはすぐさまテレビへと視線を向ける

『人類諸君!君たちは世界がいくつも存在するというのはこの異界と交わった時に認識しただろう!
 そして昨日!君たちが息をしている間にまた違う世界とこの世界は交わった!!!!』

一瞬場の空気が凍った。

異世界と交わった、それがどう意味するのか
3年前の出来事がフラッシュバックする


『まぁ交わったといわれてもほんの数分、君たちは気づきもしなかっただろう!
 それでも面白いことは起きた!異世界からの落とし物だ!まあこれは模造品だがね』

気味の悪い仮面が画面いっぱいに映る

『これについては先ほど実験を行って理解した、
これは血界の眷属とはまた異なる吸血鬼を生み出すものだ!!』

誰も理解が追い付かなかった。
こいつは今何と言ったのだろうか
体中から冷や汗が出てきた

『もう少し実験はしたかったのだが生憎吸血鬼となった実験台が仮面を持ち出しそのまま出て行ってしまってね!
 早く手を打たないとそこらじゅうで血祭フィーバーが起こるぞお!さあ!ライブラ諸君!
 心して楽しませてくれ!!』

一人勝手に仮面の男はわめき散らしそういってプツンと画面は切れた。

「クラウス」

スティーブンさんがクラウスさんに誰よりも早く声をかける

「…全構成員に通達を」

とてつもなく険しい顔をしたクラウスさんが絞り出すかのように指示をした

「ライブラ総員に継ぐ、先ほどの堕落王のは見ただろう
これより血の眷属ならぬ吸血鬼を捜索、無線は入れたままにしろ」

スティーブンさんは言われると同時に素早く携帯をとりだし指揮をとる

「さあお前ら固まってる場合じゃないぞ、一刻も早く迅速な処置をするんだ」


構成員の情報を受け現場にたどり着いた時には

何人もの干からびた死体

グールになっている人間や異界人

まさに地獄絵図だ

そして今に至る。

ハロ―、ミシェーラ

兄ちゃん今日も生きて帰れるかな…


安全であろう瓦礫の影からチラリと様子を伺うと
激闘が繰り広げられていた。

「うぉぉ、やべぇこれ大丈夫か?」

「そこの少年、」

「うぉおあ!?」

クラウス達の戦う様子に気を取られ背後からかけられた声に驚いた

振り向いた先には少女が立っていた

濃紺のPコートにジーンズのレギンスパンツ腰には
ポーチが下げてありそして足元はゴツめのブーツ
失礼ではあるが小柄な身長と幼い顔の割には大人びた格好をしていた。

そして一番髪や服が少し濡れていることが気になった

「ここに来たばかりでねひとつ伺いたい、」

「は、はあ」
レオナルドの後ろの状況は彼女からは真正面なはずなので見えているだろう
なのに彼女は驚きも悲鳴も出さずただ淡々とレオナルドに質問をする

「あれは倒して良い対象物かな?」

「え?」

スイッと彼女が指さしたのは瓦礫の上にたたずむ吸血鬼

「え!?え?!」

レオナルドは一瞬思考が停止した
倒して良いかと彼女は聞いたのだ

「で?どうなの?人類の敵かどうかを聞いているの」
「敵です」
どう見ても年下なのに対等に話してくる彼女になぜか自然と敬語になっていた。

そして彼女はそのレオナルドの言葉を聞くとニィっと口をゆがませた。

「石仮面め…」
「えっと、あの?」
「少年にここから3歩右にずれた方がいいその方がフラグが立たない」
「は?フラ…グ?」
すると彼女の周りに花が咲き誇った
「少年に加護があらんことを」
光る札をレオナルドの額に貼り付け合掌し
彼女は走り出した
「え!?あ!!!」

「いやぁ…数多いっすね」
数の多さにうなだれるザップ

「ザァップ泣き言吐くなよ」
そんなザップを見てスティーブンは溜息をこぼした


「とりあえず高みの見物をキメてるアイツをどうにかしないとっすね…」
チラリと上を見れば優雅に足を組みこちらを見ている男
手には先ほどテレビで見た仮面が握られていた

「スティーブン、ザップここは任せた」
「わかった」
「うぃーっす」

3人が動き出そうとした瞬間
それは起こった。

「どぅりゃぁあああああああああああああああああああああああ!!!」

男にしては高い女にしては低い雄たけびが上から降ってきた。

その声と共に瓦礫はすさまじい轟音と共に崩壊した。

周りは煙と誇りが舞い上がり視界を遮った。

「ヴぇっほ、ごっほっ」
「ザップは大丈夫だな、クラウス!大丈夫か!」
「あぁ、しかし一体…」
「気を付けろ、構えておいた方がいい」

倒壊した瓦礫をジッと睨みつけ煙が晴れたそこにあった光景は


幼い少女が先ほどの吸血鬼に馬乗りになり殴りかかっているところだった


「は?」
「え?」
「っ!?」
3人は目を点にするしかなかった

少女と吸血鬼の様子を伺っていると
少女の拳が少し光りそれを振り下ろしたが
吸血鬼はとっさにそれを顔に当たる前に避け鋭い牙を
腕に突き立てようとしたが少女は頭突きをかます。
鈍い音が響き吸血鬼は腕をジタバタ暴れさせ
少女を人間ではありえない力で吹き飛ばした
突き飛ばされた先には倒壊した後に剥き出しになったのであろう
先が尖った鉄骨があった
泥沼のような取っ組み合いが目の前で繰り広げられ
判断が一歩遅れたが少女を助けるべくクラウスは駆け出した

「うげぇえ!とか言っておくべき?」
飛ばされながらも少女は意味不明なことを呟いていた
そして鉄骨に串刺しになるであろう一歩手前でクラウスが受けとめた

「うごっ!?」
「レディ、お怪我は」
「!?ああ?えぇっとダイジョウブデス」

自分よりはるかに大きいクラウスに目を見開く少女
そしてクラウスはゆっくりと少女をおろし

二人は吸血鬼を見据えた

「加勢いたします」
「感謝いたします」
それ以上言葉はいらなかった
この少女が誰なのかなんでこんな場所にいるのかそんなことは二の次だった。


グッとクラウスは左手のナックルを握りなおし
少女は屈伸運動し右手は腰のポーチに添えられた

そして同時のタイミングで二人は動いた
クラウスは右から少女は左からと吸血鬼を挟む形をとる

「ブレングリード流血闘術111式」
「シャボン」



「十字型殲滅槍"クロイツヴェニクトランツェ"!!!」
「ランチャァアアアアアアア!!!!」


右からはは巨大な深紅の十字架の槍

右からは光りを纏った球体がいくつも飛んできた。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

吸血鬼は左右からの攻撃を直に喰らい
叫び声をあげた。

「ぐっ…人間ごときに…」

吸血鬼は攻撃を喰らってなお生きていた
だがそんなことよりもボロボロの左半身と違い
右半身が溶けかかっているのをクラウスは不思議に感じていた

少女は吸血鬼の胸くらを掴むと質問を始めた

「ハロー吸血鬼、石仮面で他に吸血鬼になった人は?」
「しらねーな」

「へぇ…後2、3聞こうあなたは連れてこられた人?」
「はあ?」

「ここに来る前に男の声を聞いた?」
「聞いてねーな」

「ふーん…あ、そうそうDIOは元気?」
「小娘がDIO様の名前を気安く呼ぶな」
「わかったありがとう」

クラウスは二人の会話の意図が全く読めず尚且つ少女は
じゃあ死ねと言葉とは合わない笑顔で拳を振り上げそれを

「波紋」

「!!まさかお前!ジョースターのっ!!!」

振り下ろした

「SYUAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

バチバチと音を立ててそれは吸血鬼の顔に命中し吸血鬼は
ジュワジュワと溶けていき最終的には身体も溶けて消えた

「ふぅ、これは返してもらうよ」
少女はゆっくりと息を吐きそばに転がっていた仮面を持ち上げる

「彼は…」
今まで会話を呆然と見ていたクラウスが口を開いた

「死にましたよ」

クラウスを振り返り少女はにへらっと無邪気に笑った

「レディ…君は「おおーっと!いっけない!セールが終わっちゃう!!じゃ!」
また!っと少女は言い残し走り去ろうとしたが

「ちょっと待ってもらおうかお嬢さん?」

「おわっと!?」

周りにいた大量のグールの始末を終えたスティーブンとザップが少女の前に立ちはだかった

「こっちにも予定っつーもんがあるんですよお兄さん」
「こっちはね、聞きたいことが山ほどあるんだお嬢さんお茶でもどうかな?」

にへらっと笑う顔
ニッコリと笑う顔
どちらも目は1ミリも笑ってはいない

だが2対1、クラウスも背後にいるので
正確には3対1、少女は深い深いため息をわざとらしくこぼした

「はいはい、予定も何もないのでついていってさしあげます」
「穏便なご協力感謝するよ」

スティーブンはまたニッコリと笑った

「あの声の奴が近くにいるかもしれないのに…」
ッチと少女は独り言をこぼし舌打ちをした


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