さよなら、本当にさよなら(甘)






お題サイトDOGOD69様より





※学パロ






毎日早起きするクセがついたのはちょうど2年前


ぼさっとした髪をしっかりコテで巻いて、のぺっとした顔をしっかりメイクをする。

制服をゆるく、可愛く着こなして、全身鏡でチェック。



うん、完璧!



「おはよー」

「はよ」





自分を偽り続けて、

嘘で塗り固めて


本当は何が楽しいんだろう






「燐ー?」

「えっ?何?」

「もー大丈夫ー?今日帰りカラオケ寄ろうって話」

「あーうん、いいよー」




馬鹿みたいに騒いで、

馬鹿みたいに遊んで


楽しいんだけれど、




楽しくない





「九条さん」

「あ、もーりー」

「ちょっとお手伝いしてくれないかな」

「えー」

「社会係、でしょ?」

「・・・はーい」


社会の先生、毛利元就。

通称、もーりー。


社会係は教科連絡以外仕事がないって聞いたのに、プリントを運べだとか放課後丸つけ手伝えだとか、聞いてた話とぜんぜん違う。

でも、まいっか。


カラオケ、これでナシになるし。


「ごめーん、カラオケはまた今度ね」

「ま、係だししょーがないよねー」

「燐ドンマーイ」


すまないね、なんて眉を下げるもーりー。

いやいや、それがですねえ、むしろありがとうですよ。


「ありがとう?」

「カラオケ、別に行きたかったわけじゃないし」

「そうなのかい?友だちと遊ぶ約束をしたんだろう?」

「うん、でもいいの」


何だか追求されるのが嫌になってきて、もーりーの困った顔から目を背けて、一緒に歩いてたけれど、わざと二歩先を歩いた。

でも、それ以上もーりーは追求してこなかった。


きっと、もーりーは気が付いているのかもしれない。


私が、偽り続けて、嘘を塗り固めていることに。



「九条さん」

「なに?」

「その髪ってどうやっているんだい」


しばらく廊下を歩いていると、二歩後ろを歩いていたもーりーが声をかけてきた。


「ああ、コレ?毎日コテで巻いてんの」

「コテ?」

「髪のアイロン。こうやってくるくるにすんの」

「へえ、すごいね」


大変そう、到着した社会科準備室のカギを開けながらもーりーは呟いた。

一方もーりーの髪を見るとあちこち寝癖なんだかパーマなんだかわからないけれど、あちこちはねている。


「じゃあ今日は丸つけね。私は1組から3組までやるから、4組と5組はお願いできるかな」

「はーい」


社会科準備室はもーりー以外社会の先生は誰も来ない。

なんでかと言うと、もーりーの机には大量の本が積まれていて、それらは両隣の他の先生の机に今にも降りかかってきそうになっているからだ。

危険を察知したのか、諦めたのか、もーりーの両隣の先生は社会準備室に現れることはなく、待機時間はいつも職員室にいつもいる。

まあ、それをもーりーをさらに本の虫化を加速させたんだけれどね。


「もーりーはふわふわだね」

「え?何が」

「髪の話」


もちろん手は動かしたまま。赤ペンで丸とバツを付けながら、話も進んでいく。

ちらっと見たもーりーは、自分の髪を触りながらそうかなーなんて確認している。

・・・先生、手が止まっています。


「若い子みたいに整髪剤とか使っていないからかな」

「ああ、ワックスのこと?」

「うん、それ」

「いいんじゃない。もーりーっぽくて」

「それはほめられているのかな」

「うん、もーりーって性格もふわふわしてるし」

「そんなことないと思うんだけれどなあ」


へにゃ、効果音を付けるならこんな感じ。

老眼なのか単純に目が悪いのかメガネをかけた顔は、私を見てへにゃりと笑ってる。


「ねえ、触らせて」

「っ」


うん、やっぱりふわふわだ。

黒髪だから固そうに見えたけれど、もーりーの髪は思ったとおりのふわふわ具合だった。


「やっぱり髪ふわふわだね。・・・もーりー?」

「えっ、あ、すまない」


あ、真っ赤だ。

それに目もあちこち泳いで、私と目が合うことはない。



もしかして、照れた?



「もーりー、照れてる?」

「・・・まったく、大人をからかうものじゃないよ」

「だって触りたかったんだもん、それにちゃんと触らせてって言ったもん」


すっかり照れたもーりーは、逃げるように丸付け作業を再開した。ちょっとだけ眉間に皺を寄せながら。

俯いたもーりーの顔はまだほんのり赤くて、ちょっぴり可愛かった。

でもきっと笑えば、もーりーはまたぷんすか怒るかもしれないから、笑いはこっそり隠して。


「九条さん」

「なーに」

「きっと君も似合うよ」

「何が」

「コテ?で巻かなくたって、黒髪を染めなくたってね」

「もーりーみたいに自然体にってこと?」

「うん、君は綺麗だから」




さらさらと流れる私の髪。

それを撫でる無骨な手。



うわ、やられた。



「九条さん、照れてる?」

「もう、子どもをからかわないでよ」



ぜったい、顔真っ赤だ。

もーりーの方だって見れない。


「だって、そのままの君が一番素敵だと思ったんだ」



すっかり照れた私は、気が付いたら手が止まってた丸付け作業を再開した。ちょっとだけ眉間に皺を寄せながら。

丸付け作業に集中しているふりをして顔を俯かせているけれど、きっともーりーにはばれているんだろう。

だって、さっきから笑いをこらえているし。



「これで、おあいこだよ」

「先生、ひどーい」

「ひどいなあ、本心で言ったこどなのに」

「もうっ」





でも、先生がそう言うなら、



そうしてやってもいいかもしれない、なんて。










end

(さよなら、イツワリの私)

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