喧嘩?ううん、じゃれてるだけ(微糖)
お題サイトDOGOD69様より
戦場では次々と敵をなぎ倒し、政ではキレのある意見を進言しては、上をあっと言わせる。
男らしい精悍な顔つきに、しっかりとした体型。
性格は真面目で少し不器用。
そんな男が居れば、女たちは放っておかない―――
「ようっ、清正!」
「いってえ!」
らしい。
「何すんだ、馬鹿」
「いったあああああ!」
しかし、この男はどうであろう。
少女とも言える女と頭のはたき合いをしている。
周りはまた始まったか、とちらり一瞥をくれるだけで何事もなかったかのように自分の持ち場に戻っていく。
「あっあんた!今ゲンコツで殴ったな!!」
「よかったな、背が伸びてるぞ」
「あ!本当だ!たんこぶが出来て背が・・・って馬鹿か!!」
「馬鹿はお前だ、馬鹿」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんだっての!」
「ガキの言い草だな」
「ふんっ、そのガキに仕合いで負けたのはどこのどいつだったかなーっぷぷぷ」
「テメエ・・・っ」
「なによ?またやるっての?ムダムダ、また恥かくだけだって」
「はっ、この間のは手加減してやってんだよ」
ぐぬぬぬ、とまるで犬が威嚇するように唸り合っていた。
そこに現れたのが、自称"喧嘩奉行"の福島正則である。
「まあまあ待て待て!ここは喧嘩奉行の出番だあな!」
「勝手に出てくんな大馬鹿」
「そう固いこと言うなって!さあさ、一本勝負の喧嘩でケリをつけろっておねね様が「何い!?おねね様がだと!?」・・・お、おう」
ねねの名前を出した瞬間にころりと態度が変わり、正則の喧嘩案に乗り始める清正。むしろ早くしろと急かす始末。
恐るべし、おねね様効果。
「燐も、さっき秀吉様がさっさと喧嘩終わらせて仕事手伝ってほしいって」
「秀吉様が!?」
作戦通り!正則は目を輝かせた。
なぜなら、ねねと秀吉の名前を出す作戦は何を隠そうねねと秀吉本人が正則に託した作戦だからである。
「よーっし!じゃあさっそくやるぞ!!武器を吹っ飛ばすか尻餅つかせて、戦えなくした方が勝ちな!・・・始め!!」
真剣で大丈夫なのだろうか、正則は内心ヒヤヒヤしていたが、これもあの二人の令なのだからしょうがない。
正則の声を合図に、互いの刃を交える二人。
いつの間にか、正則の隣には秀吉とねねが座っていた。
「あのよ、おねね様?これでマジでよかったんですか」
「うん、大丈夫だよ。ありがとうね、正則」
「でも、ガチの喧嘩ッスよね?あれ」
「喧嘩のはずないじゃろう、あんなに口角上げて楽しそうにしているんじゃ」
「あの二人の真剣勝負はね、相手の気持ちが剣から伝わってくるんだよ」
正則が目を凝らして二人を見ると、なんだか楽しそうに見えなくもない。
さっきまで、あんなにいがみあっていたのに。
「二人ともいい子なんだけど不器用で口下手だからね」
「そ。あいつらはアレでいいんじゃよ」
そういう関係もあるのか、小首を傾げながら正則は仕合いを見守ることにした。
「ねえっ、清正!!アンタ、力落ちたんじゃない!?」
「お前こそ!動き鈍くなってきたんじゃねーか!?」
刃と刃が交じるとき、
たしかに二人は笑っていた。
嬉しそうに、
すこしだけ照れくさそうに。
end
(よし、正則。ワシらであの二人の祝言の準備をするで)
(じゃあアタシは赤飯を炊こうかしら)
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