間隔の共有化(甘)
お題サイトDOGOD69様より
※現パロ
自宅から歩いて数分の、いつもの駅。
いつもの駅のホームのベンチ
オレンジ色のそれの一番右はこの時間、私の特等席となる。
20分おきに来るいつもの電車は、私が通う大学の最寄り駅まで走る。
「あ、」
お気に入りの本屋でたまたま目に入った本を購入した。
ふだんはあんまり読まないけれど、大河ドラマの小説版。
最近、大河ドラマとか流行ってるし、今日はこれを読もう。
何ページか読み進めたところで、ちょっとお疲れ気味のサラリーマンと、ちょっと厚化粧のOLがホームに下りてくる。
いつもの光景だ。
きっと、あの人たちもベンチに座る私の光景も、いつもの光景になっているんだろうけれど。
そこからまた数ページ。
あ、あの足音は。
(私の大学から4駅くらい先、だったかな)
学ランを着た、高校生。
名前はわからないけれど、いつも持っているバッグに刺繍で学校名が書かれている。
部活動のチームみんなで買ったのかもしれない。
学校名の下に、ご丁寧にも部活動名までも刺繍されているのだから。
(また、歴史書だ)
彼もまたこの時間は本を読む。
けれども私が読むのはよくある恋愛小説とかミステリー小説とか物語で、彼は歴史書か歴史が絡んだ文庫しか読まない。もしかしたら日本史が好きなのかもしれない。
(若いのに渋いなあ)
なんだか、私が読んでいるフィクションの小説がちっぽけに思えてきた。
思わずため息をはいてから、また彼を目で追った。
風が吹くと、さらさらしてそうな彼の髪は風に揺られて、髪で精悍な彼の顔が見えた。
・・・やだ、私ったらなんだか変態みたいじゃない。
「まもなく電車が参りまーす。黄色い線の内側に下がってお待ちください・・・―――」
ああ、もうっ。
たまには空気読んで、ちょっと遅れて来なさいよね。
(そんなこと思っても、遅れるわけないんだけれど)
「それ、おもしろいですか」
「え?」
「あ、すみません。私、日本史に少し興味を持ってて、その、あなたの読んでいる本が目に入って、」
お声をかけてしまいました、そう告げる目の前の彼は、私の描いた幻想だろうか。
もしかして、今は夢のなかだったりして。
「あの、ドラマは見てたんですけれど、小説はまだこれだけしか読んでなくって・・・」
今日買ったばかりのそれは、まだ一章も読んでおらず、内容もぜんぜん進んでいない。
それに、おもしろいかと言われたら正直そうでもないように思える。やっぱりドラマの方が映像もあるし楽しい、のだろうか。
「あ、そうですよね。すみません」
そのとき、
電車がホームに到着した。
「もし、よかったら読み終わったら感想教えましょうか」
「え、いいんですか!?」
「はい、遅くなると思うんですけれど」
「お願いします!」
”やくそく”
ちいさな、やくそく
電車に乗る私の足取りは軽かった
to be continued... ?
(え!?噂の高校生と!?)
(うん)
(やったじゃない!大進展!)
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