灰色の瞳は明日を恨んだ(甘)






お題サイトDOGOD69様より








※現パロ













グレーの細めのスーツに、今日は薄いピンクのYシャツ。


ネクタイは黒。よーく見ればドット柄。


無精ひげが生えているものの、鷲色の髪は後ろにゆるく撫でつけている。



「かっこいいなあ・・・」

「ああ、立花さん?」

「それは甲斐の好みでしょ」

「ええっ、じゃあ誰よお?幸村さん?それとも三成さんとか?」

「違うよ、あの人」

「・・・まさか、」

「・・・うん」

「ええええええっ!?」



でも、女性からの評価は下の下(らしい)




「もおっ、よりによってなんであの人なのよおおっ」


他にもイケメンいっぱいいるじゃないの、と隣でお弁当を持って憤慨しているのは甲斐。

口癖は"モテたい"。

けれどもあの人はダメだ、この人は格好良くない、となかなか辛口の彼女。


「だいたいねえ、アンタあの人の噂聞いたことないの?一番の女たらしよ、ゼッタイ」

「んー、そうなんだけれど、結構しっかりしてるところもあるかなって」


たしかに孫市さんは噂でよくいろんな女の人を口説いたりしてる、って聞く。

でも、仕事のときの孫市さんはすごく頼りになる人だ。

表情も真面目で、周りのフォローも忘れない。

・・・時々、軽口だけれど。


そう告げると甲斐は納得がいかない顔でお弁当の卵焼きを食べた。


・・・私の卵焼きなんだけれどな。



「うん、おいしい」

「そう?よかった」

「そりゃそうだ。燐ちゃんは料理の天才だからな」

「げ」


俺にも一個ちょうだい?

そう言って現れたのはさっきまで話の中心人物だった、孫市さんだった。


・・・気が付かなかった。

もしかして話聞かれてたりして。だとしたらまずい。

私が孫市さんに好意を寄せていることも気付かれたかもしれない。


言わないつもりだったのに。



「んー、やっぱうまいな。ねえ、今度俺にも作ってきてよ」

「ダメです!アタシがゼェェッタイ許しません!」

「えーっ、そりゃねえぜ!なあ、燐ちゃん?」

「え、あ、え?」



ち、近い・・・っ


でも、この感じだとさっきのこと聞かれてないかも?



「俺、一度でいいから燐ちゃんの弁当食いたいんだよー。なあ、頼むっ」


このとーり!

そう手を合わせて頭をさげる孫市さんが私の目の前に。


神様、これは夢か何かですか?


「・・・どうぞ」


必死に言った一言。

かわいくない一言。



でも、



「マジで!?」



彼の笑顔が咲いたから。


きっと、一歩前進とまではいかなくたって


半歩くらいは進めたのかな。




「孫市さん」

「あれ!?もう昼だっけ」

「はい、ずいぶん集中していらっしゃったので、声おかけしようか迷ったんですけれど・・・」

「全然気にしなくてもよかったのに、待たせてごめんな」

「いえ、大丈夫です。待ってますから」

「いいねえその台詞。なんていうか新妻みたいでさ?」

「えぇっ、そんなつもりは・・・っ」

「まあ、俺は燐ちゃんならいつでもウェルカムなんだけれど」


よし、昼行こうぜ?

パソコンを閉じて、何事もなかったかのように歩き出す背中。

広い逆三角形の背中が素敵です・・・じゃなくて




私、ゼッタイ今顔真っ赤だ。




「お先します」

「お疲れ様ー」


お昼の孫市さんの言葉が頭から離れなくて(誰にでも言ってるのかもしれないけれど)午後の仕事なんて手に付かなかった。

気が付いたら仕事が終わる時間になっていて(甲斐に言われるまで気が付かなかった)急いで片付けをした。


「あ、明日土曜日」

「何か明日あったっけ?」

「ううん、明日お仕事お休みだから、お弁当作れないなあって」

「ああ、孫市さんに?」

「うん、せっかく接点持てたのに」


一日でも惜しいと思ってしまう私は相当重症なのかもしれない。

また月曜日からお弁当を作れるかもしれないのに。

また月曜日からお話ができるかもしれないのに。


「あ、噂をすれば・・・」

「え?」

「ほら、行ってきなさいよ。チャンス逃しちゃうわよ?」

「う、うん!」


オフィスを出てすぐの柱。

こちらに向かって手を振る男の人がいた。


グレーの細めのスーツに、今日は薄いピンクのYシャツ。


ネクタイは黒。よーく見ればドット柄。


「孫市さん」

「よかった!もう帰ったらどうしようかと思ってた」

「あの、何か私に用事ですか?」

「ああ、完っ全に俺事なんだけどさ。いいかな」

「はい。私の出来ることでしたら」


ゆるく撫でつけられた鷲色の髪をがしがし。



「あのさ、」

「はい」

「明日、」











end

(君の明日俺にくれない?)

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