いつか、君を好きだと言うだろう(甘)







お題サイトDOGOD69様より











安芸に行くぞ、そう言って私の主と奥方様はいつものように駆けていった。


「元就公にお会いしたいのですが」

「おや、宗茂に?千代じゃないか。上がっておいで」

「お、大殿!いつからそこに!」

「馬の音がしたからね、まさかと思って」



第一印象はどこか抜けている人。

温厚そうな顔つきに(この見た目で御年が…信じられない)少し曲がった烏帽子。

落ち着いた話し方に、大量の本、本、本。


「すまないね、なかなか片付かないんだ」

「いや、もう慣れました」

「いつみても湿気た部屋だな」

「すみません。彼女はっきりと物言うもので」

「はは、かまわないよ。それで、彼女は?」

「俺の忍ですよ。御気になさらず」

「せっかく来たんだ。君も外にいないでお上がり」

「え、あ、」


一体どうすればいいのだ。

宗茂様には元就公には気をつけろと言われているし(何を気をつけるのだろう)

奥方様は先ほどから元就公を睨んでいる(威嚇している?)


・・・第一、私は忍であるのだが。



「あの、宗茂様」

「・・・構わない。俺の側に来い」

「私と宗茂の元にいるなら来い」

「は、はい。唯今」


なんだかものすごく強調された気がする。


そんなに強調しなくっても私は立花の忍なのに。



「む、宗茂さま」

「何だ」

「私、ご心配なさらずとも立花を離れはしませんよ?」

「(そういう意味じゃないんだがな)ああ、離れるな」

「はい、死するときまで」


なんだか安心したような顔の宗茂様、得意げなお顔をした奥方様。

そして、


「立花の家臣は主を慕っているんだね」

「当たり前だ。貴様に渡すなど、この立花?千代が許さぬ」

「・・・はは」


なんだかお疲れのお顔をしている元就公。

何かあったのだろうか。


やはり、私がここにいると話もできないのでは・・・。


それに本来、忍がこんなところにいることすら間違ってると思う。

あまり宗茂様はお気になさらない方だけれど。


「あの、やはり外で待っております」

「ああ、適当にしていてくれ」

「御意」


あの空気に居たたまれなくなり、部屋を出て、少し離れた。

宗茂様に万が一のことがあったとき、いつでも駆け寄られる準備は怠らずに。


「しかし、何かお決めになるのかな」


同盟はもう組んだ。

先日、和議のための会議も行った。

・・・雑談?


「その割には重苦しい雰囲気だったような・・・」




元就公が。




「それにしても素敵な庭」


元就公が少しでもお休みになれるようになのか。

庭のすみに色とりどりの花が咲いていた。

赤や黄や桃など、美しく可憐な花ばかりだ。



「立花の庭にも植えてみようかな」



きっと宗茂様も奥方様も喜んでくれる。

戦ばかりの日々、少しでも気が休まればいい。

彼らは戦場を好んで戦っているけれど、それでも心を痛めないということはないと思うから。

ほんの少し、少しでも。


「・・・って忍の仕事から大分外れているような」


そういや、今までも仕事だとか命令と言っていたけれど、冷静になって考えてみればふと首を傾げるようなこともあったような。




気にしたらいけない気がした。




「燐」

「宗茂様!申し訳ありません」

「構わない。戻るぞ」

「はっ」

「またいつでもおいで」

「そうですね、また今度お邪魔します」

「燐も、また来るといいよ」

「え、あ、ありがとうございます」


不思議な方だ。

忍などにお声をかけるだなんて。


「ああ、そうだ。帰るついでに書状を持っていってほしいんだが、いいかな?」

「はい」

「本当は私のところのに頼めばいいのだけれどね。生憎、別件で出てもらっているんだ」

「はい、私でよければ」

「これなんだけれど・・・」


ぐい、私の視線が彼の顔からずれて、青色。

耳に吐息。


持たされた書状。





「いいかな?」

「は、はい」






いつか、君を好きだと言うだろう。


だから、そのときまで。


私を忘れないで欲しい。








「元就!貴様!!」

「風神と雷神が相手になろう」

「はは」








耳が熱い。


end

(やはり不思議な方)

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