初めはただ、友達の弟。それだけだった。
なのに、俺は。






気になりだしたのは、あの時。
小テストでハレルヤにカンニング疑惑がかかったときだった。
その寸前、教師が見回りにきたとき。つい反射でそちらを見てしまった。そうしたら、あの顔だった。
ハレルヤを見て、にやりとした、まるで、憂さ晴らしのいい標的を見つけた。とでもいうように。
それからすぐにあの騒動だ。
ハレルヤはやっていないのだろう、腕を掴まれて立たされても呆然としていた。
そのときの周りの反応、クラスメイトの冷たい反応に鳥肌が立った。こいつらは、ハレルヤのことを。クラスメイトを何だと思ってるんだ。
こいつは誰よりも真面目に勉強しているじゃないか。なのに。みんな見ているはずなのに。
それよりも気を引かれたのは、それを見たハレルヤの反応。何も感じないのかと思っていたハレルヤが、泣きそうに顔を歪めていたことだった。
それからは、自然と体が動いた。






ハレルヤに腕を引かれたときはちょっとドキっとした。

「いい、もう」

ハレルヤが辛そうに顔を歪めている。まだ俺は言ってやりたかったが、そこまで口を出せる立場じゃないから身を引くことにした。
あ、俺、そういえば勝手にハレルヤって言ってた…。駄目だっただろうか。でも。

「そういえば俺、勝手にハレルヤって言ってたな。でもハプティズムだとアレルヤもいるしわかりにくいかなって。いいか?」

そう言うと、意外にあっさりと了承してくれた。それをいいことにニールと呼んで欲しいと言った。苗字呼びは慣れてないし、なによりハレルヤに名前で呼んでほしかった。
そしたら「かばってくれて、ありがとう、ニール」なんて言うもんだから、またドキっとした。さっきよりももっと。
それからやけにハレルヤが気になって、気が付くとハレルヤを眺めているということが多くなった。
今思うと、俺はこの時にハレルヤに恋をしたんだ。






そして、今日の自習時間。
友達と話していたら、ふとハレルヤが目に入った。
いつもはしていない黒ぶち眼鏡をして友達と話すハレルヤを見てかなりときめいた。ハレルヤ眼鏡してる!
その眼鏡があんまりにも似合うから、ついじっと見つめてしまった。

「なーに見てんだよニール。…ってお前、またハレルヤかよ。お前ハレルヤの話ばっかりだな」

話していたパトリックが呆れた、というように言う。しょうがないだろ。もうこれはどうしようもないんだ。

「だってハレルヤ眼鏡してる!やべえすっげえ似合ってるんだけど!」

写メとりてえ!と言うとパトリックがため息をついた。そのあとすぐに「あ」と言った。
「なに?」と言うと、パトリックがハレルヤの方を指差す。見ると、
ハレルヤが友達に机越しに抱きつかれていた。

「な…っ!?」
「あいつら仲いいよなー。やばいんじゃねえのニール」

にやにやと笑うパトリックを睨むと、「おお怖えぇ」と言うだけだった。くそ。からかいやがって。
チャイムが鳴ると同時に席を立つと、ハレルヤの方に向かう。
腹は括った。…多分。
ハレルヤの腕を掴み、「ちょっと、話あんだけど。いいかな」と言うと、ハレルヤはわけがわからない、という表情をしていた。
そりゃそうだよな。ごめんな。でも。
もう、後戻りはできない。あとは言うだけだ。
購買で昼ごはんを買って、屋上へ進む。
後ろにいるハレルヤは何も言わない。俺も振り向く余裕なんてない。
屋上はもうすぐ。
さて、なんて言おうか。どうしたらいいだろう。
考えても考えても頭はちゃんと働いてくれない。
こうなったら出たとこ勝負だ。どうにでもなれ!






そのときの俺は、まだ知らない。
ハレルヤが俺を好いていてくれたこと。
ハレルヤも俺を見ていたこと。
俺たちが、付き合うということ。





ハレルヤ。お前はアレルヤと勘違いしていたけど、俺はずっと、ずっとずっと。
お前の名前を呼んでいたんだ。


end.







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