今日だけは


「苗字、今日は楽しかったな。さ、家に帰ろうか」
「うん」

クラピカの少し冷たい手が私の手を掴む。
私が握り返すと、クラピカは指を絡めるように手を繋ぎ直した。
もう片方の手で、クラピカは私の荷物に手を伸ばす。
「いいよ、クラピカ。重くないから大丈夫」
「今さら遠慮するな」
口の端を上げて笑うクラピカの笑顔に見惚れているうちに荷物を取り上げられる。笑った拍子に出た白い息が夕闇に溶けて消えた。

いつまで経っても、この美しい笑顔が私だけに向けられていることに慣れない。


「お邪魔します」

今日一日クリスマスデートをした私達は少し疲れた身体をソファに沈める。

「苗字とこうして二人きりでクリスマスを過ごせるとは思っていなかった」
「私も。お互い色々あったから、こうしてゆっくり幸せな時間を過ごしていることが夢みたい……」
この幸せに浸るように身体の力を抜いて目をつむった。

フワッと心地よい温もりが私の身体を包み込む。サラサラとしたクラピカの髪の毛が頬に当たってくすぐったい。

「クラピカ……」
目を開けてクラピカの方を見ると、驚くほど近くにクラピカの顔があって思わず目を逸らした。クラピカの綺麗な顔を見ていたいけど、私の顔を見られるのは耐えられたものではない。

「ふふ……苗字はいつまでも慣れないな。そういうところも可愛いが」
そう言ったクラピカは私の首筋をなぞるように優しくキスを落とす。

「っ……」

思わず身じろぐが肩を掴まれて呆気なく押し倒されてしまった。
今日はやけに積極的だ……久々に二人きりになれたからだろうか。
そんなことを考えているうちに首筋に軽い痛みを感じた。

「あ……また付けたでしょ」
「クリスマスプレゼントだ」
「もう」
不敵に笑うクラピカの肩を軽く叩く。
しばらくは詰襟を着なきゃ……


「苗字……」
少し湿っぽいクラピカの声が、熱い息とともに上から降りかかる。
切なく私を求めるその声に身を固くした。

すっかり温かくなったクラピカの手が服の中に侵入して、素肌を楽しむ。
少しぼやけた視界でクラピカの顔を見ると、熱のこもった彼の瞳とバッチリ目が合った。

クラピカはじっと私の目を見つめる。
きっと私もクラピカと同じ目をしているのだろう。
視界がぼやけているのもそのせいだ。


街の喧騒から切り離された二人きりの世界でクラピカの温もりに触れる。
それだけで胸が一杯になる。

不意にクラピカの熱い吐息が降りかかり、唇が触れ合った。
何度か軽いキスを繰り返し、クラピカの舌で唇を割られる。

「……ぁ……っ……。」

いつもの神経質さはなく、無遠慮に、それでも優しく包み込むように舌が絡まり合って転がされる。

「……んっ……。」
口蓋や歯列をなぞられて思わずクラピカの胸元をぎゅっと掴む。
クラピカの舌は、クリスマスプレゼントを強請る子どものように私を求めて離れない。
私も彼に応えようと舌を動かして、熱いキスが交わされた。


久しぶりのクラピカの感触が身体に溶け込むようだ。
今日くらいは、クリスマスの熱に浮かされてもいいよね……。


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