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モ男子倶楽部、乗っとらる!
 











なまえがいつものようにモ男子倶楽部部室こと理科準備室へ向かうと、教室の前には
泣きじゃくる辺ちゃんと怯え切った矢木がたたずんでいた


「ええええちょっなになにお前らどうしたの!?」
「せっ先生ぇ〜!」
「渡辺しーっ!」
「!?一体何が…!?」


いきなり懇願の眼差しと緊迫の表情を向けられ、半ばパニック気味ななまえ
何が起きてるのかさっぱりである
とにかく話を聞こうとしたその時、教室の中からけたたましい笑い声が聞こえてきた


「ま…まさか…」



?「この間浦部がマツキヨでやわらかめの歯ブラシ買ってんのみちゃったあー」
?「いやいやいや硬めじゃなきゃだめだろー!」
「「「キャハハハハハ!!」」」



「ひえええん先生あれなあに?なんでここにいるのさ!」
「落ち着け、お前ら…
あれはな、世にも恐ろしい、
『女子会』ってやつだ…!」
「あ、あれが『女子会』…!ゴクッ…」
「ジョシカイっ…!あれが…!」
「ああ…俺も現場に居合わせるのは初めてだが、実力者以外が居合わせるとその場に居るだけで体力ゲージが減るそうだ…!!」
「イワコデジマー!!」

がたがたと震える3人
そのとき、突如部屋のなかから音がしなくなった

「!!!!」

3人は身をちぢこめて扉に全神経を集中させている
微かな物音一つ聞き漏らさぬよう…

「…」
「…」
「…」
『…』


ガラッ!!
「「「ぎゃあああああ!!」」」

「わ、なに、びっくりしたあー!」
「あーやっぱりみょうじ先生だあー!」
「えっちょっとなんで泣いてんのー」
「え…」

理科準備室から顔を出したのは、
5年の伊藤美緒、4年の西尾、3年の山崎の3人だった
見知った顔にほっとするなまえ

「あはは!先生何やってんの〜」
「ちが、君らが中にいたからどうしようって話してて…!」
「一人で?」
「え…?」

なまえが振り返ると、そこにはお約束通りだれもいなかった…

「(あいつらっ…!!)」
「ねー先生も入る〜?」
「え?あ、なに」
「今ね、家庭部の活動中なの!」
「そーね!先生も語ろ〜!」
「いや、俺は…!ていうか活動って語りなんだ」
「一名様ご案内〜!」
「いらっしゃいませー!」
「ホストの客引きか!!」
「「「「キャハハハハハ!!」」」」





家庭部とは、なんとなく手芸とかそういう女の子っぽいことをする部である

ここでメンバーを紹介しよう

部長 5-B 坂崎美心
性格 乙女、女子力MAX
備考 最近お菓子作りが気になってる。

5-A 伊藤美緒
性格 快活、サバサバ系
備考 アクセパーツを買って自分でつくるのが好き。

5-B 田中沙織
性格 くせのある優等生
備考 アロマテラピーを勉強中。

4-A 天 一子(天の妹1・仮)
性格 とにかく明るくてラテン系
備考 料理に変なスパイス加えるのが趣味。

4-A 天 二葉(天の妹2・仮)
性格 盛り上げ特攻隊長
備考 いかにまずくて栄養価の高い料理ができるか研究するのが趣味。


4-A 西尾裕美(仮)
性格 今時だがどこかマイペース
備考 変なパッチワークを量産している。

3-A 山崎めぐみ(仮)
性格 活発、楽しいことが好き
備考 肉じゃがだけは神域。

4-B みょうじなまえ
性格 ヘタレな雑食系教師
備考 お菓子作りはうまいが料理はそうでも「ちょっと待ったあー!!」
「「「「キャハハハハハ!!」」」」
「いや、キャハハじゃないし!なに、なんで俺数に入ってんの!?」
「いやー、実はってほどでもないけど私別にこういうの得意じゃないし」
「じゃあ凛子様は何故顧問になったんですか」
「だってこの子達のお願い断れないだろ?」


まー確かに…と呟くなまえにでしょう、と首を傾げてみせるのは、
学園の女王、生徒指導部部長、社会科地理教諭遠藤凛子である
事務所所長の遠藤勇次の従姉妹で、これが天海祐希似の超絶美人なのである
しかし時に一睨みで相手を黙らせる冷徹な鬼のような一面から、一部の人間からは凛子様と呼ばれ恐れられている伝説の借金取りである

顧問 遠藤凛子様
性格 女王
備考 最近スマホと格闘してる。


みおみお「ねえ、みょうじ先生ってお菓子作るの上手いって聞いたけど!」
めぐたん「あーあたしも聞いたことありますー!」
さおりん「え、先生のお菓子作りってそんな有名なんですかw」
なまえ「えええ確かにお菓子作るの好きだけどそんな大したものじゃ…」
一「オトメンwww」
二「草食www」
なまえ「ち、違…!それを言うんなら平山の方がオトメンなんだから!」
西尾ちゃん「違いますよお先生、平山はオトメンなんじゃなくて乙女なんです」
「「「「キャハハハハハ!!」」」」
一「あの可愛いマスキングテープとか持ってそうだよねw」
二「キャハハ!エプロン似合いそうw」
なまえ「(ひ、平山っ…!)」
西尾ちゃん「あっだからさー、今度先生の手づくりのお菓子食べたいなーっ」
美心っち「あっあたしも食べた〜い!」
なまえ「おお、いいよ!今度作ってくる!みんな何がすきなの?」
一「マフィン!」
二「シフォン!」
めぐたん「マカロン!」
さおりん「パンナコッタ」
みおみお「チーズスフレ」
美心っち「フォンダンショコラ」
西尾ちゃん「ザッハトルテ」
凛子様「ブッシュドノエル」

なまえ「よ、容赦ねーな…」
「「「キャハハハハハ!!」」」


ひとしきり黄色い声で笑ったあと、美心っちがちょっともじもじしながらねーみんなー、と呼びかけた

美心っち「あのね、豪華なお菓子の名前で盛り上がってたところあれなんだけどー…」
みおみお「なになにー?」
美心っち「あのね、卵余ってたからマドレーヌ作って来たの、恥ずかしい〜っ!」
なまえ「恥ずかしいの?」
めぐたん「えーっすごい!」
さおりん「見せて見せてー!」
一「すごっ!きれー!売り物みたい!」
美心っち「やだー、それはほめすぎー!」
二「いやいやフツーに美味しそう!」
西尾ちゃん「ほんとだー!先生見て見て!すごい!」
凛子様「あら…ほんと、綺麗に作れてるー」
美心っち「ねえねえみょうじ先生、どーお?プロから見てどんな感じかなあ?」
なまえ「プロ!?わ、超キレーじゃん!坂崎すげー!」
美心っち「ほんと!?」

なまえが凛子にならってタッパーを覗けば、そこにはきつね色のマドレーヌが綺麗にならんでいた
ココアパウダーやシュガーパウダーが店で見るように華やかにかけられている

美心は嬉しそうに中からマドレーヌをだしていくが、ふと声を上げて手を止めた

美心っち「どうしよう…」
さおりん「どしたの?」
美心っち「みょうじ先生の分…」
なまえ「あ…」

一瞬の沈黙のあと、なまえは慌てたように手を振る

なまえ「オレいいよ!あの、えっと、なんかごめん…」
一「アッハハ!先生ミソっこ〜!」
なまえ「う、うるさいな!」
みおみお「じゃあ先生、私と半分こしよ!」
なまえ「え、いいの…?」

なまえが美緒の方を見ると、美緒はニコニコしながらなまえの隣に座った

みおみお「うん!先生にはお礼したいの」
なまえ「お礼?」
みおみお「そう。はい、ちょうど良かった」

そう言って美緒が取り出したのは青い傘だった
そう、ついこのあいだなまえがこっそり美緒へ貸した相合傘である

なまえ「あ…!」
みおみお「本当にありがとう!見直しちゃった」
なまえ「えっいやそんな…」
一「えーなになに、ワケあり〜?」
二「聞きたい聞きたーい!」
西尾ちゃん「kwsk!!」

気付けば全員がキラキラした目でなまえを見ている
さすがは女子である、一言一句漏らさぬ姿勢は恐怖すら感じさせた

なまえ「いやっ別になんていうか…!」
みおみお「ほら、水曜日雨土砂降りだったじゃない?その時私たまたま森田くんと帰り一緒になってね」
めぐたん「きゃーっウソ!すごーい!」
さおりん「なにそれー!ずるーいいいなあー!」
西尾ちゃん「えーっどうやったんですか!?」
みおみお「いや本当にたまたま!それで森田くん傘持って無くてさー」
凛子様「あんた悪運強いねえ」
なまえ「ちょ…悪運って…」
みおみお「で、私折りたたみ持ってたんだけど、そこで出したらバカでしょ!?」
さおりん「そうね、バカよ!」
なまえ「(ビクッ)」
凛子様「いちいちビビるんじゃないよ」
みおみお「そしたらね、みょうじ先生が下駄箱の影からこの傘貸してくれたの!」
「「「わあ〜っ!!」」」
めぐたん「すごーいなまえ先生素敵!!」
さおりん「へえー!先生も空気読めるんですね!」
なまえ「!?」
西尾ちゃん「そういうのすごくいいと思う!GJ!」
なまえ「え、あ、うへへ、照れるなあ…」

今時の女生徒に褒められて思わず頬が緩むなまえ
家庭部の盛り上がりは今や最初の比ではない
理科準備室の机に皆身を乗り出し、あれやこれやと矢継ぎ早に声をあげる
いつもはなまえ達がモ男子的研究を進める辛気臭い理科準備室は黄色い声の飛び交う花園と化していた

美心っち「じゃあ森田くんと相合傘したんだあ!素敵〜!憧れちゃう!」
めぐたん「森田さん肩幅広いからきっとみおみおさんを濡らすまいと肩びしょ濡れだったんじゃないですか!?」
二「肩幅wwwでもそれいーね、男らしい!」
一「で?どこまでいったんですか!?」
みおみお「え、どこって…普通に駅まで」
二「違あーう!手繋いだ?」
一「ハグしちゃった?」
二「チューまでいった?」
なまえ「!!?」
「「「ええ〜!!」」」
みおみお「し、してないって!!やめてよ〜!」
なまえ「あーびっくりした!やめてよ〜!」
「「「キャハハハハ!!」」」
美心っち「でも先生はどうやって帰ったんですか?」
なまえ「あ俺?俺一条の傘に入れてもらったー」
「「「え…?」」」
なまえ「…え?」

ざわ・・・
ざわ・・・

なまえ「え…え…!?」

思いがけず突如ざわめく空気になまえは大いに動揺した
それまでキョロキョロと忙しなく輝いていた瞳がいっせいになまえに向けられる
そして凛子様が頬杖をついたまま言い放った

凛子様「あんたらデキてんの?」
なまえ「…は?え、はあ〜!?」
二「あああ〜ついに誰もが思っていながら言わなかったことを…w」
なまえ「ちょ、ちょっと待っ、なんでそうなるんですか!!」
凛子様「だって…ねえ?」
西尾ちゃん「一条さんて他の先生とあんまり絡まないし〜」
さおりん「なまえ先生の前だとわがままになるし」
なまえ「だからってそんな短絡的な…!」
凛子様「あそういえばみょうじくん高校の時から一緒なんだっけー」
「「「キャアー!」」」
なまえ「ちが…寮が一緒だっただけで…!!」
一「あそういやお泊まりもしたんでしょ!?」
なまえ「えっちょっと待っなんで知っ」
「「「ギャアー!!」」」

悲鳴が理科準備室に響き渡る
今や家庭部のテンションは最高潮に達した
なまえは発言すら困難な場の流れに恐れおののきながらも
わりとよく一条の家に泊まることは黙っていることにした

めぐたん「やっぱりそうだったんだー!」
なまえ「そうってなに!?違うよ!?」
凛子様「照れんなよ」
なまえ「照れてませんよ!!」
一「いやいやうちらはそういうのウェルカムだからさw」
二「そうそう、大好物w」
西尾ちゃん「むしろもっとイチャつけ」
なまえ「え!?」

変な方向へヒートアップするこの状況を打ち切るべくなまえは手をおおいに振った

なまえ「だって一条って俺の顔見る度鼻で笑うしナルシストだしエリ◯様だし…って」

ハッとして後ろを振り向くなまえ
皆一様にわけがわからず首を傾げる

さおりん「どうかしました?」
なまえ「いや…前もカイジと佐原に一条の話してたら何時の間にか後ろにいてさ…」
一「こわwww」
二「www地獄耳www」
なまえ「…まあ言っても好きだから友達やってるんだけどね。
そういえばそのとき坂崎の話もしたよ!」
美心っち「えっ、私!?」
みおみお「それほんと!?」
一「カイジなんか言ってた?美心っちのこと!」
なまえ「えーっとね、」

話が上手く逸れてホッとするが今度は期待の眼差しに囲まれる
そう、女子とは一回の会合の中で何度でも盛り上がることができる不死身の生き物なのだ
女子のパワーにおされつつえーっと…と考えて見るが、なまえの頭の中にはしかしどうしてもカイジが美心っちについて何か言ってる記憶がない

なまえ「えー、っと…
…確かね、…ん…」
凛子様「早く」
なまえ「はいっえっとあの、
なんか照れてモゴモゴ言ってたからハッキリとどう思ってるかとかは、あの…
でも俺と佐原で猛プッシュしといたから!GJ!」
さおりん「猛プッシュってなによ」
なまえ「いや、坂崎が如何に女の子らしいかっていうプッシュ」
美心っち「やだ、恥ずかしいよう〜」
二「それにしてもカイジもオクテだな〜」
一「カイジといい森田といい…ちょっと凛子様喝入れてやってくださいよぉ〜」
凛子様「そうねえ、今度一発シメとく?」
西尾ちゃん「シメとく〜!」
なまえ「(し、死亡フラグー!!)」

なまえの背を冷たいものが走った
と、同時にふと思いついたことがあった

なまえ「あのさ、告白はしないの?」
「「「ハアアア〜!!?」」」
なまえ「えっあ、なに!?ごめん!」
めぐたん「あのねえ先生、告白はそんな簡単にするもんじゃないの!!」
二「もーデリカシーのカケラもない!」
さおりん「小学生じゃないんだから…」
なまえ「す、すみません…」
美心っち「先生も恋すればいいのに、そしたら片想いの素敵さがきっとわかるのになあ」
みおみお「そーね、同感!」
なまえ「片想いの素敵さ??」
西尾ちゃん「先生にわかるかなあ」
なまえ「どうだろう…w」
美心っち「あのね、片想いって素敵なモラトリアムなのよ」
なまえ「モラトリアム…?」

なまえがオウムのように聞き返すと、美心っちは少し落ち着いた雰囲気で話し出す
女子達は色んな雰囲気を持っているが、今の美心っちは恋する乙女の雰囲気なのだとなまえにもなんとなくわかった

美心っち「告白しちゃったら付き合うかフられるか決まっちゃうじゃない?
でも、結果をだしたくないの、だって相手を想っている時間が辛いけど幸せだから…!」
なまえ「なるほど」
凛子様「みょうじくん絶対わかってないでしょ」
二「野郎www」
なまえ「いやいやいや!ちょっとはわかったよ!複雑…なんだよね?」
美心っち「そうね、一言では言えないの」
さおりん「(誤魔化したな)」
一二「(誤魔化した)」
凛子様「(誤魔化しやがった)」
みおみお「相手との距離感に一喜一憂しちゃうの」
美心っち「そうそう!それから考えちゃう…なに思ってるのかなーって」
なまえ「ふーん…」

片想いトークで盛り上がる女子達は楽しそうに笑みをこぼし、各々の思いを語っては頷きあう
なまえはなかなか通じないところはあったが、
彼女らが一生懸命に恋をしているのは素直に可愛いと思った
その瞳の輝きの眩しいこと
これが女子学生の特権、女子会の醍醐味なのだとなまえは学んだ

お土産にもらったハーレクインの名作セリフ集はさておき、青春只中の女子高生の恋を応援したくなったなまえであった



【モ男子倶楽部部誌】

担当:みょうじ

内容:女子会は意外に深かった。以上。



なまえ「あとマドレーヌもらった」
矢木「何参加してんすか」





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