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白衣のやくざ












流血表現注意!



「沢田せーんせーっばんそこください」
「なまえか、どうした」
「ちょっと裁断機で指を裁断しました」
「またお前は………

…え?裁断機…!?
大怪我じゃねえか…!」

書類から目を外し、顔だけをなまえの方へ向けた沢田の顔はみるみる青くなった
パタ…とペンを落とす沢田とカラカラ笑うなまえ
手は真っ赤に染まり、ちた、ちた、と赤い血が滴り落ちる

「ハハハ俺血怖いんでもう大変なんですよ〜、せんせー、結婚してください」
「(なまえが痛みと恐怖のあまり混乱っ…!!)こっち来い馬鹿!」
「うぎゃあああ痛いよお森田ぁぁぁ!!」
「森田いねえよ!!」

パタパタ血が流れ出る手に完全に混乱したなまえ
なんて厄介な…と思いつつも沢田はなまえにタオルを持たせ、手を心臓より高い位置で固定させた
なまえが泣くまいとぎりぎり歯を食いしばって痛みに耐えている目の前で沢田はテキパキと治療の準備を始める

「さ、さわだせんせい…おれ、し、んじゃうの…」
「アホか」
「い、た、い…ち…とま、んない…」
「すぐ止めてやるからここ座れ!」

血が止まらず世界の終わりのような顔つきのなまえを円い椅子に座らせ、止血を始めた

「せ、んせい…」
「わかったわかった、すぐ治してやるから」
「せ、せ…」
「はいはい。いいから傷見せろ」
「さ、わ…せ…」
「少し痛いが我慢しろよ」
「%★♯@♪$」
「お前メンタル弱すぎだろ…」

沢田が作業を始めると、止まらないなまえの血が沢田の手や白衣の袖をも染めていってしまう
それも怖くてなまえは鼻をすするが、全く気にせずにそつなく作業する沢田を見て少しだけ正気に戻った

「い、いっ!…いぅ、ひいいぃぃ〜」
「…我慢しろ」
「うぅう…ぃぐ…いっ…!」
「…あと少しで終わっから」
「あとすこし、て、ど、どれぐらい…」
「ガキかてめえは…」

一段落くと、ため息混じりになまえの頭を小突く
手を上に固定して、流血がおさまるのを少し待つ間、沢田は白衣を脱いで袖の血がついた部分を水につけていた
なまえがか細い声でせんせい、さわだせんせい、と呼べば、
ここにいるよ、早いとこ血止めてくれや、と苦笑いで返す
沢田はどこか中学生を相手にしてるような感覚に笑いそうになりながら、ワイシャツの袖をまくる
なまえといるといつもその感覚に擽られる思いだが、沢田は沢田でどこかそれを楽しんでいるのだった

やがて作業を再開すべく、今だに眉を八の字にした子どものような表情のなまえに仕方ねえな、とこぼして向き合う

「ったく…」
「す、すすすいません…」
「血ぐらいでメソメソすんな!
死にゃしねえし、これくらいなら病院行かなくても平気だな」
「ほ、ほ、ほんと…」
「ほんと。」

やがてガーゼを重ねて包帯を巻いていく
キツめに締めたところでなまえがひく、と顔を引きつらせると沢田はちらと目だけでなまえを見た

「っ…、…」
「痛かったか」
「う…いえ、大丈夫です…」
「よし、いい子だ」
「うう…」

大方の治療は終わり、なまえの手についた血を丁寧に拭っていく沢田の手になまえは段々と落ち着きを取り戻していく
だがまだ不安そうななまえの表情に沢田は少し呆れたようにため息をつく

「男は女より血を怖がるって言うけどよ、お前は怖がり過ぎ」
「う…だ、だって…」
「そうそう出血多量で死んだりしねえよ
お前の今回の怪我も切ったところが悪かっただけで、傷は全然浅いもんだ」
「ほ、ほんとに…」
「ほんと。」
「う、よ、良かったあ…」
「…けど、あんまりドジ踏みすぎるんじゃねえぞ」
「はい…気をつけます…」
「…」

ちぢこまってしゅんとしながら言うなまえにどことなくバツが悪そうに沢田はガシガシと頭を掻く

「……ほんとに、あんまりひやひやさせんなよ」
「え…」
「血ダラダラ垂らして半泣きになって来るんじゃねえってんだよ」
「ごめんなさい…でも、怪我したら…」
「すぐに来い」
「え、じ、じゃあ…」
「怪我すんな」
「え、えええ」
「…ククク、アホ」
「っ…」

沢田の顔が近づいて来たと思うと、
血の跡がついていたらしく、頬をぐし、とタオルで擦られた
目の前まで近づく切れ長の目になまえは一瞬驚いて後ろに引いてしまうが、頭に手を添えられて結局はなされるがままに煙草の匂いを感じながら大人しくしていた

何とはなしに沢田の目を見ていたが、いざ目が合えば慌ててキョロキョロするのを沢田が笑うと恥ずかしさに眉をさげて赤くなる
それがまた沢田を笑わせるのだが。



終わりに親指の腹で目尻の微かな涙跡をぐいとこすると、目の前の沢田はその鋭い目を細めて面白そうに喉で笑っている

「そうびくびくするなよ」
「だ、だってっ…!」
「ハハハ!さ、治療は終わりだ。
あいつらもそろそろ待ちくたびれてんだろ」
「あいつら…?」

そう言って椅子から立ち上がり、扉の方へ歩いていく沢田
ぽかんと見ているなまえを振り返り、ニッと笑ってからドアを開けた
と、つんのめって二人倒れこむように入ってきたのは…

「カイジ!?一条!?」
「良かったな、お迎えが来て」
「え、お前らなにしてんの!?」
「いや…その…」

扉のところで気まずそうにしている二人を見てなまえは驚きで唖然とし、
沢田はそんな三人にドアに寄りかかったまま笑った

カイジ「ほら…なまえが来いって言ってたからさ…職員室行ったんだけど…」
なまえ「あそーだ、忘れてた」
沢田「おい…」
一条「みょうじは印刷室だって言ったらこいつ呼んで来いとか言いやがって」
「だって印刷室って生徒入れねーし…
そしたら一条が血相変えて飛び出してきてさ」
「血相変えてません血の跡に驚いただけですバカイジ」
「なっ…お前な…!」
「うん、ごめん二人とも」

ふにゃ、となまえが申し訳なさげに笑うと、険しかった二人もなまえの方を伺うように見た

「なまえ、手…大丈夫なのか?」
「うん、すっげー痛いけど沢田先生がやってくれたから大丈夫!」
「なら、いいけど…」
「心配してくれたんだ、ありがとなカイジ!」
「べ、別に心配っていうか…!」
「へへ。一条もありがと」
「…」

一条は腕を組んでなまえを見据えたまま、何も言わずにげし!と足を蹴る

「いだっ!な、な!?」
「ふん、バカが。今度から裁断機一人で使うなよ」
「えっでも」
「使うなよ」
「はい…」

一連の流れを見守っていた沢田がククク、と笑うと3人はどこか恥ずかしくなって外へ出た

「沢田先生!ありがとうございました」
「おう。もう来んなよ」
「う…頑張ります」
「お大事に」

そう言ってなまえの頭にぽん、と手を乗せてニッと笑う沢田になまえも笑顔で手を振った





「あっやべー、印刷室掃除しないと…!」
「あ、オレ一応床とか拭いといたけど」
「え…マジで!?うわ、ありがとカイジ!!」
「…ちなみに、血塗れのプリントはオレが刷り直してやった」
「ええ!?嘘!?一条ありがとう!!」
「おい嘘ってなんだよお前な」
「お前らいい奴だな…うっ」
「それはいいけど、気をつけろよ、なまえドジだから…」
「えっそうだっけ、ていうかカイジに言われたああ」
「お、オレはドジじゃねーよっ…!」
「ドジじゃなくてクズだもんな」
「なんだと…っ!」
「なにお前ら犬猿なの?」
「「別に!」」
「………
俺は二人とも好きなんだけどなあ…(しゅん」
「「(うっ…!)」」






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最後のは沢田先生に言うべきだった



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