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組織せよ!





【激写!我が学園風紀委員の実態】


「はぁ?なにそれ」
「学園新聞だよ。今日放課後掲示板に結構人集まってたんだぜ?」


髪が濡れたまましゃこしゃこと歯磨きをする俺に甘寧が一枚のビラを寄越す
言いながらタオルを乗っけてくれる甘寧はなかなか俺の世話係りも慣れてきたようだ


「ふーん、どれどれ」
「フハハハハハ!ついにボロを出したな風紀委員の凡愚どもめ!」
「なにがそんなに楽しいのかわかんないけどもう夜だから静かにな」
「生徒会と風紀委員はライバルだからな、嬉しいんだろ」
「え、生徒会…?
なに、司馬懿って生徒会なのー!!?」


驚きのあまり歯磨きな口のまま叫ぶ俺に司馬懿と甘寧は顔をしかめる
仕方あるまいよ、初耳だもの


「汚い馬鹿めが!なにをそんなに驚いているか知らんがもう夜だぞ!静かにしろ!」
「なんで知らねーんだよ」
「いや俺が聞きてーよ!いつの間に!?」
「私は生徒会役員会計担当だ。よく覚えておけ」
「ちぇっ偉そうに!
ってああああ!!この写真!!」
「気付くのおせーよ」


ビラを改めて見直せば一面の見出しの下には撮り覚えのある写真
そう、俺達が体育館の穴の前で撮った写真である
がっつり空いた穴の前でシェーポーズの俺、何故か鎧姿で槍を構える馬超、ガオ、と虎ポーズの孫策が楽しそうに写っている
馬鹿っぽーーー!!!


「これが全校に配信されてんの!?一生の恥なんですけど!!
特に俺!!馬鹿丸出し!!」
「ありのままで良いではないか」
「うるせーよ!!ああなんでこんなことになったんだよー!!」
「殿もきっとご立腹であろうな…」
「風紀ピンチだなァおい!」
「え、殿…?あそっか、曹操様風紀顧問だっけ…
…え、てことは…」









「お前風紀委員てまじかよ!!」
「なにを今更、騒々しいぞ」


次の日、教室で俺は袁紹のヤロウを問い詰めた!
どうやら風紀委員は孫策、馬超、張遼、袁紹らしい
全員うちのクラスの招待生じゃねーか!!!


「なんで!?なんで俺の知らない間に委員会とか生徒会とか決まってんの!?」
「逆に何故貴様は知らんのだ」
「いいないいな俺も風紀委員入りたい」
「ダメー!残念だなみょうじ!定員オーバーだ!」


がははは!と笑う袁紹のみぞおちに右ストレートをお見舞いするとその首根っこを引っ掴み、職員室まで引きずっていった


「ぐっは…放せ…」
「たのもー!」
「なんじゃいみょうじ!騒々しいのう!!」
「先生ー!俺も委員会したあーい!!」
「遅いわぁぁ!!」
「うるさいぞ貴様ら」
「「だまらっしゃい!!」」


黄中先生とのコンボを決めると袁紹は静かになった
ん?白目剥いてる?まいっか


「だって!俺も風紀委員になりたいもん!」
「風紀委員はもう足りとるわ!!」
「じゃあ生徒会」
「ほざけ若いのー!!」
「あぶねっじゃあ他になにがあるんですか!!」
「庶務委員、などどうかな」
「あ、関羽先生!」


乱闘寸前の俺らを見兼ねたのか、関羽先生が困ったような笑顔で提案してきたので俺はとりあえず先生にひっついた


「これ、みょうじ、関羽殿に何しとるんじゃ」
「関羽先生を見たら直ちにひっつかずにはいられない、いやむしろひっつかねばならない!」
「なんと!傍迷惑な!!」
「ははは…もう慣れてしまった」
「わーい関羽先生〜すりすり」
「時にみょうじ、庶務委員ならば一名枠があるのだが」
「庶務委員…?」







「はい!ということで三年生の教室にやってきました!」
「何故私たちがつき合わねばならんのだ」
「どーせ一人じゃ怖かったんだろ」
「それはね、司馬懿、甘寧、こういうわけなのだよ」


俺は踊り場の角からちょっと顔を出し、司馬懿と甘寧のリードをしっかりと掴んで廊下の方を伺いながらクククと笑う
三年にはやっかいなのがいるからな!


「俺は庶務委員になるべく、ホウトク先輩に挨拶をしに行こうと思うのだがここはどこかね?そう!三年生のろうかである!」
「うん、で?」
「うん、一人じゃ怖くて」
「やっぱりかい!!!」
「つき合ってられん!帰るぞ甘寧!!」
「ああっちょっと待ってよ!違うんだって!二人が必要なんだよ!!
もし「夏」から始まって「惇」で終わる例のあの人がいきなり出てきたら俺司馬懿のビームがなきゃ死ぬだろ!」
「ビーム目当てか貴様!!」
「それにほら、司馬懿のビームが鈍足のあまり避けられても甘寧の無双乱舞がありゃうまくまけるだろ?」
「どんそ・・・きさ・・・馬鹿めがぁぁぁ!!!」
「ぎゃあああああ!!!」
「ま、だいたい予想はしてたけどよ」


司馬懿のビームをおもいくそ浴びた
そうだよね・・・ビームは速いんだよね、へへ・・・


「ほら、なまえ!三年A組ってここだろ!」
「えっちょっと待ってよ!まだ心の準備が・・・
ちなみに字が「元」から始まって「譲」で終わる例のあの人は何組?」
「夏侯惇殿はC組だ」
「セーフ!!」
「すんませーん、ホウトクさんいますかあー」


甘寧が扉から呼びかける
こいつほんと度胸あるっていうか肝でかいっていうか心臓に毛生えてるっていうかってうわっなんかこっち来たっ


「なまえ!いったいこんなところでどうしたのですか?」
「えっちょうこう先輩・・・いや、だからホウトクさんを・・・」
「そんなことよりなまえ、みましたよ学園新聞!なんと醜い!!」
「うるせっ・・・ごほん、うるさいですよちょうこう先輩」
「恥です!あなたの古くからの先輩であることが私は恥ずかしい!」
「なっそこまで言うことないじゃないですかあ!!」
「おい!茶番は良いからホウトクを出さんか!」
「あっそうだやべっもたもたしてたら喰われるんだった
先輩、ホウトクさんに会いたいんですけど」
「ええ、ホウトク殿でしたら今教室にはいませんよ」
「いねーのかよ!!早く言えよ!!」
「どこにいるんですか?」
「さあ・・・よくいらっしゃるのは鍛錬場か畑ですかね」
はたけ!!??んまあいいや、行ってみよう甘寧!司馬懿!」
「つかれた」
「ま、がんばろうぜ」


俺の後ろで甘寧が司馬懿の肩をぽんと叩く
くそっ・・・二人の友情がまぶしいぜ!
その時超大声がそのさらに後ろから響いた


「ホウトクならさっき裏庭に行くって言ってたぜ!」
「うおおおおびっくしたー!!!」
「きっ貴様!真後ろで大声を出すなァ!!」
「司馬懿声裏返ってるぜ」
「でけー!ちょうこう先輩ぐらいでかい」
「失礼ですね、私はでかいのではなく高いのです」
「まだいたのか貴様」
「そんなことよりよぉ、おまえらホウトク探してんだろ?
もうすぐ帰ってくると思うぜ!あ、ほれ早速いやがったホウトクーーー!!!!」
「ぎゃああああうるせええええ!!!」


大男が窓から怒鳴ると(もうちょっと窓から顔を外に出して怒鳴ってくれ)
外から張飛殿ぉ〜という声が聞こえた
なに、三年生の連絡手段って大声なわけ?


「ほれ、下にいるから行ってこいよ!」
「ありがとうございます大声張飛!」
「ありがとな大男張飛」
「死ね張飛」
「司馬懿は残れ。ここから落としてやるから」

おまえの鈍足より早いぜと手招きする張飛から司馬懿はするするーと膝蹴りの要領で逃げてった
あいつ運動神経悪いけど妙に器用だよな



「某に御用か」
「はい、今日から庶務委員になりました2年B組のみょうじなまえでーす」
「おおお…!仲間になってくれるか!」
「え…はい…」


な、仲間?
普通に「あ、よろしくでーす」とかじゃだめなのか?
ところでその手に持ってるのは鍬と鋤でおk?
農夫でおk?


「ははは!愉快であるな、某、仲間をずっと欲していたのだ」
「へー(え、庶務委員てそんなに人気ないの?)」
「(うちのクラスも結局候補者が出なかったではないか)」
「(因みに言うと学年でも出なかったらしいぜ)」
「(まあだから余ってるんだろうけどさ…そんなにアレなの?)」
「(その名の通り、庶務全般をこなす厳しい委員だからな)」
「まつまりはパシリだよな」
「なにィィィ話が違うじゃねえか!!」
「貴様に似合いの委員だな!!フン、運命とは恐ろしいものよ!!フハハハハ!!」
「うるせえー!!なんかもっと書類管理とかのカッコいい委員かと思った!!」
「庶務委員も充分カッコいいですぞ」
「わ、びっくりした、いたんですか」
「そちらから話し掛けて来たのに…」
「「「…」」」


大きな体をちぢこめてしゅんとするホウ徳さんはなんだか奇妙に見えて俺らの間に一瞬沈黙が訪れた
だってなんか壊れたロボットみたいな角度でしゅんてしてるからさあ…

その時、カシャっと言う音ともに辺りが明るく光った


「わ、なに…」
「みょうじ先輩、庶務委員に正式就任ですか!」
「違います」
「えちょみょうじ殿」

「よお、陸遜」
「こんにちは甘半裸殿」
「俺の字興覇なんだけど…」
「ちっ、相変わらず鼻の良い奴よ」
「ジャクソン…?」
「陸遜です」
「ディクスン…?」
「陸遜です」
「ワクチン…?」
「燃やすぞ」
「うぎゃああああちちちっち!!!」
「うおおおなまえー!!!」
「うわあああ馬鹿めがああ!!」


燃えた!!俺燃えた!!!
つーか言う前に燃やした!!
死ぬかと思った!!!なにこいつ怖っっ!!
甘寧と司馬懿の決死の消火作業で一命を取り留めた(司馬懿の扇は微妙に意味無かった)
目の前が霞むぜ…


「おい!なまえしっかりしろ!」
「陸遜殿、紹介しよう。こちらが新たに我が庶務委員に加わるみょうじなまえ殿だ」
「わあ、おめでとうございますみょうじ先輩!今のお気持ちをどうぞ!」カシャカシャ
「自分の、軽率な…行動を、ぐふっ…悔いています…」ガクッ
「なまえー!!!」


甘寧の腕の中で息を引き取った俺を陸遜は嬉々としてカメラに収める
ホウ徳先輩はもはや俺など眼中になく、「これがほんとの庶務2!なんちて」とか言ってる(正直燃やしたい)
司馬懿はさっきの消火活動で同じく瀕死状態だ


「明日の一面は決まりですね!月英殿にデータを送らなくては」
「一面…?ワクチン、一面てなによ」
「あなたも懲りませんねみょうじ先輩」
「陸遜様、一面とはなんのことでしょう」
「ご存知ありませんか?
まあ自己紹介もまだでしたね。
私は孫呉二高出身1年A組陸伯言と申します。広報委員を務めて学園新聞を発行しているのです」
「へー…」
「申し遅れたが某は曹大附属出身3年A組ホウれいめいと申す」
「ふーん…
あちちちちち!!!ちょっわかったからもー!!

…ん?ちょっと待てよ、てことはあの恥ずかしい写真使ったのお前かー!!!」
「百聞は一見に如かず、いい写真をありがとう!」
「ムカつく!!」
「ささ、気を取り直して!目線くださーい!」
「ふん!覚えてらっしゃい!」


といいつつカメラを向けられるとどうしてもキメてしまう俺
やれやれ、才能ってヤツかな…
陸遜が色んな角度からシャッターを切りまくる横で回復した司馬懿と完全に飽きた甘寧が◯×ゲームを始めた
そのまた横でホウ徳さんが呟いた


「フィルム入ってないのに」
「しーっ!」
「陸遜てめえええああああちちちちちちあーもーだいっきらいだー!!!!」






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