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宴のまえに








「じゃあ、7時にお迎えに行きますから駅にいてくださいね」

『ん、わかった』

「変な人についてったり、ふらふらしちゃだめですからね!
もー、この間だって俺すごい焦ったんですから」

『ハハ…悪かったって。ちゃんとお前待ってる』

「ん…じゃあ、すぐ行くんで待っててください」

『うん。早くな』





電話を切ると、なまえは足早に部屋を出た

今日は赤木の誕生日で…

と言っても、その真偽を確かめもせずに天が「赤木さんの誕生日パーティーしようぜ!」といって聞かなかっただけなのだが。

沢田の雀荘を貸し切り、出前をじゃんじゃん呼び、酒を煽る、
手は常に牌を触って金以外のものも時折余興で賭けてみたり。



要はいつもの飲み会なのだ





「お待たせしましたっ」

「お、早かったな」

「はー疲れた、赤木さん何時からいたんですか」

「えーと、どうだったかな…6時半くらい?」

「え…ええ!? なんで言ってくれなかったんですか!それならどこかお店に入って…」

「だってお前を待ってたから」

「あ、」





そっか…とバツが悪そうに頭を掻くなまえ

すいません、と言いながら赤木の言葉にすこし気恥ずかしそうにするなまえを赤木は面白そうにクククと笑って見ている





「いいさ、まだ7時になってないしな」


そう言ってぽん、となまえの頭を叩いた

なまえは思わず吹き出して、笑いながらじゃあ行きますか、と腕時計をちらと見た

そして歩き出そうとした時、なまえの斜め後ろで反応のない赤木に首をかしげた





「? 赤木さん?」

「いいだろ、ちょっとくらい遅れたって」

「は…ええ?またですか?」

「だってどうせ何時って決まってねえんだろ」

「まあ…そりゃ」

「じゃあちょっとくらい道草食ってこうぜ」





そういって楽しそうな笑みを浮かべながらぐいとなまえの腕を引っ張る赤木

自分が主役だというのにこうまで自由に行動できるのはこの人ぐらいだな、などと思いながら赤木を拒否することもなく、

今日もなまえは苦笑いで、なにやら上機嫌で楽しげな赤木に引きずられてゆくのだった










「そうやっていっつも俺が介抱するハメになるんですから〜」

「ハハハ…だから安心して酔えるんじゃねえか」

「ほんとにもー!特に赤木さんなんて一回目を閉じちゃうと俺の家着くまで絶対起きないし」
「あれいいよな、起きるとお前の布団で寝てんの」

「いいよな、じゃないですよ!」

「ハハハ!」





身体を揺らして笑う赤木になまえも思わず笑って怒るどころではない

そもそも怒るつもりはなく、ただじゃれあい半分の文句であることは2人とも言わなくても分かっていてこうしてじゃれ合うのが好きなのだった


ひとしきり笑うとドンと肩をなまえにあてた





「あーあ…なあなまえ」

「はーっ、はい?」

「今日も、お開きになったら、お前の家連れてってくれな」

「あれ、なんですか今更ー、いつものことじゃないですか」





笑いの余韻を引きずりながら軽く問い掛けるなまえに赤木は、ん…と濁す





「…赤木さん?」

「…なあ。すっぽかして、もう行くか?」

「え…?」





少し身を屈めて、下からなまえの顔を覗き込む赤木は、滅多に見ない穏やかな笑顔にいたずらっぽく目を細めていた

その表情に、なまえは刹那赤木の目を見たまま惚けた


そして、赤木の言葉を理解すると何故だか一気に心臓がギクシャクし始めるのがわかった





「え、な、何言って」

「なんてな、冗談だよ」

「は…?」

「ハハハッ!酒入れて牌触ってからがオツだろ、やっぱ」

「…」





一瞬、流れについていけずにポカンとするなまえにまた赤木はドンと肩でぶつかり、ほら、そろそろ行ってやろうぜと促す





「…もー赤木さん嫌だー」

「お?なんだよいきなり」

「意味わかんないんだもんもー今更ではあるけどー
あーもー!」

「いつかわかるようになるさ」

「それっていつですか?」

「明日」

「もー嫌だー!」







「…赤木さんとなまえ、遅いですね」
「あー?まだ30分しか待ってね〜だろ、慌てない慌てない!」
「ていうか天さんまだ30分しか経ってないのにお酒入り過ぎですから!!」
「まあそれはそうと、あいつらちゃんと来るかな・・・」
「え、沢田さんそれはどういう…」
「…」
「…」
「お姉さんビールもー一本!」













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