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モ男子倶楽部結成!









「皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございます!

祝・モ男子倶楽部、発足!!」

「も…男子…くらぶ?」
「そして何故このメンツ…」


東校舎の空き部屋もとい、モ男子倶楽部部室に集まった男3人組
みょうじなまえ、矢木圭次、そして司会の辺ちゃんこと渡辺裕一はモ男子倶楽部発足に
手に持った紙コップをぶつけ合った


「そりゃあんた、モテない男子のクラブだもの!僕らの共通点、モテないこと!」
「傷を抉って楽しいか?楽しいのか?」
「コンセプトが地味ならメンツも地味っスね…」
「それを言っちゃおしまいよ矢木さん!」


辺ちゃんが口元で×をつくり、何やらホワイトボードを引っ張ってきた
そこへ

顧問:なまえ先生
部長:矢木さん(5B)

と書くとすぐに矢木がオレ5Aだから!と書き直す


「それでモテない男を集めてどうしようってんだよ辺ちゃん」
「モテる男へ共に進化しよー!」
「そう簡単に言うけどな…」


頭を掻く矢木を余所に辺ちゃんはまたホワイトボードへ赤い字で
【脱!モ男子!】
と書く

カリスマや超人、賭博覇王や雀帝ばかりがスター扱いで人気を集めすぎ、
目立たないモ男子が大量発生しているこの学校で訓練を積んでモテ男の仲間入りをしよう、ということらしい
健全な男子生徒の発想だが、如何せんこの学校のモテ男は常識外れであり、並の人間が到達できるレベルではない

「あのなあ辺ちゃん、俺だってモテたくなくてモテないわけじゃないんだぜ」
「じゃあなんでモテないのさー」
「…」
「みょうじさん…」
「そもそもなあ、モテるって一言に言ったってお前、俺だって魚類にならモテるもん!」
「や、やめとけよみょうじさん」
「うんと、今回は人間の女の子にモテないメンツを集めてみました」
「…」
「だから言ったのに…」
「じゃあモテるってなんだよ!モテ男って一体なんなんだよ!!」
「はい、いい質問いただきました!」


キュキュキュ…
【今日の義題:モテ男とは何か】


「渡辺、議題の議、ごんべんが足りないぜ」
「はい辺ちゃんペナルティジューーーース!!」
「ひえ〜っ、ほんとに飲むの〜!?」
「「一気一気一気!」」
「っぷはー!!ご馳走さまですっ!!おええ〜」
「いよっ!麻雀狂!」
「おっとこらし〜!!」
「それだ!」
「「?」」


【今日の言義題:モテ男とは何か】

・男らしい


「まずは目指すべきモテ男の研究です!」
「おお、辺ちゃんがマトモだ」
「さあ皆さん、どんどんあげてこー!」
「じゃあ、顔」
「いきなりそこっスか…」
「だって!皆なんだかんだ言って見るのは顔じゃん!」
「イケメニ、と」
「じゃあ〜…包容力」
「お前…なんか気持ち悪い…」
「ひどくないスか!?」
「はい、ほうよう力」
「あと、コレ」
「お金、と」
「みょうじさんなんか恋愛観汚い」
「気持ち悪いほど純なお前に言われたかねーよ!!」
「僕は〜雀力だと思う」
「雀力?」
「ちょっと待てよ、それって矢木より俺の方がモ男子ってこと!?」
「そんな悲壮な顔しなくても…!」


違うかな〜と言いつつ雀力、とマーカーを走らせる辺ちゃん
残りの2人はイマイチ納得しかねる表情で首を傾げる


「だって、じゃあ、校内一のモテ男って誰だと思う?」
「校内一のモテ男…?」
「そりゃあ…うーん…」


2人の頭に数々のモテ男の顔が浮かぶ
男らしいやつら、キラキラしたやつら、デキるやつら、鋭いやつら…
中でも特異な容姿と破竹の博運を持つ男


「「アカギ…?」」
「ピンポーン!僕もそう思う!」


別のスペースにアカギと大きく書いてグルグルと何重にも囲む
そして箇条書きにした【雀力】の項目と線で結んだ
一瞬なるほど…と納得しかけたが2人同時に首を振る


「いやいやいやでもアカギは別だって!あれを目指すのはさすがに…」
「真似しようと思ってできるもんじゃねえぞ」
「それにアカギもちろん麻雀も強いけどそもそもイケメニじゃん」
「背もあるし」
「足長いし」
「変に頭いいし」
「…カリスマだし」
「…一流だし」
「「…」」
「ちょっと2人とも泣かないでよ〜」


暗い空気を纏い顔を伏せてしまった2人に慌てて辺ちゃんがぱたぱたと手を振る
アカギはやはり人域を越えているのでモ男子が目指すには遠すぎたようだ

一旦丸に囲まれたアカギの文字だけを消すとじゃあ、と2人を振り返る


「次にモテるのは誰でしょう」
「うーん…誰だろ、原田とかかなあ??」
「宇海とかじゃね?4年の」
「あーわかる〜零さんかっこいいよね!」
「あと天もモテるだろ、あれはモテる」
「スね、天と原田は他の学年の女子からもしょっちゅう呼び出されてるぜ」
「えーそうなんだ!涯くんもだよ!年上の女の人から…うわあ〜っいいなあー!」
「なにィ!?涯もスミにおけんな…!」


まとめるとー、といってなまえは青いマーカーのキャップをきゅぽっと取って
ホワイトボードの【今日の言義題:モテ男とは何か】の隣にいびつな三角をキュキュキュ、と書いた
そして横線を何本か引き、一番上の層にアカギ、と書いた


「ここ、神域ゾーン」
「うわ、いいなあ〜」
「ゾーンって言うか…一人だけど…」
「天、原田、宇海、涯
ここ、雲上人ゾーン」
「そこまでいけたらもう文句無いよね!」
「そこまでって学園屈指のスター揃いだぜ?」
「いいの〜!目標は高く持たなくちゃ矢木さん!」
「で、ここ、逆境無頼ゾーン」
「あちゃあ〜っカイジさ〜ん!」
「いきなり悲しいとこもってくなよ…」


カイジ、と書いた逆境無頼ゾーンはいうまでも無くトライアングルの最下層である
そこに辺ちゃん、矢木、なまえ、と付け足すとそういえばとなまえが振り返る


「なんでカイジいねーんだよ、モ男子倶楽部名誉会長だろ?」
「(ひっど!!!)」
「そういえばそうだ、忘れてた!今から呼んでくる?」
「…あ、でもカイジには坂崎がいるんじゃね?」
「「……………〜っ!!!」」


矢木の言葉になまえと辺ちゃんに電流走るーーー!!!
ひとしきり電流を食らった後にガクリと肩を落とすなまえと辺ちゃん
決してスペックの高いほうではないカイジ、一度仲間だと思ったにもかかわらずこうして
抜けてしまうと精神的ダメージがあるらしい


「ひ〜ん、僕たちこの三角形にすら入れないんだ〜!」
「…ええいこんなものー!!」
「あっちょ、みょうじさーん!!!」


涙を散らしながら自暴自棄にびゃーっとホワイトボードを全消しにかかったなまえに
矢木は自分で書いといて…!と思ったがあえて何も言わないことにした

その日モ男子たちは焼き鳥の屋台で再び(お茶の入った)杯を交わした




【モ男子倶楽部部誌】

担当:矢木

内容:校内一のモテ男はアカギである。以上。



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