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修復せよ!2






「さ、これで上薬が乾けば終わりだずぇ!」
「うおぉ!やり遂げたのだな!!」
「へへ、たまにゃ肉体労働も悪くねーってな!」
「ダメ、俺もうダメ、マジ身体が悲鳴上げてる」
「フン、脆弱な奴だ」

やっと壁が元の形を取り戻したところでわあっと笑い合う俺達
他の箇所と板の色こそ違うものの、確かに壁は復活した
俺ら(というより俺以外の3人)はもちろん力仕事に関して何の文句もない出来だったが、
工芸委員はやっぱりプロで、体力的な意味でも申し分ないが手際の良さは段違いだった
見慣れない工具を何の戸惑いもなく使いこなし、
一瞬で見事に工程を進めてしまうのだ
やっぱり周泰先輩ってすごい!!周泰先輩って!!
解放感と達成感に喜びを分かち合いつつもバテ気味な俺にその周泰先輩が近付いてきた

「……おい…」
「あ、え?はい」
「……手は…大丈夫か……」
「手?あ…」

俺は他のやつらより体力もないので、実は後半はもはやヘロヘロのまま作業して、
自分の手を金槌で打ち付けたり、木材の端が刺さったりと手へのダメージが甚だしかったのだ
周泰先輩の差し出した大きな手に自然にぽい、と自分の手を預ける
あれ…俺の手縮んだのかな…(涙

「……痛いか…」
「ちょっと…でもこのぐらいなら平気っす」
「…そうか…」

ふ、といつもあまり変わらない表情を緩めて俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる周泰先輩
よく頑張ったってことかなあ
嬉しくなって俺もにこにこする
褒める時は褒める!流石先輩!

「手ぇ痛いのか?大丈夫かよ」
「甘寧。うん、大丈夫」
「おいなまえ!手大丈夫かよ!」
「え?だから大丈夫だよ孫策」
「なまえーっ!!手が痛むのか!?」
「だから大丈夫だってば!つーかワンテンポ遅ぇよお前ら!!」

わいわいと群れて俺の手に触りたがる野次馬に
自分の手を握りシフト移動で好奇心から伸びて来る手をさささ、と交わす
俺多分この学校来てからさっぱり強くはならないけど素早くなった気がする

「体力も集中力も無いからそんなことになるんだ。自業自得だな」
「へーんだ、血も涙も無い下降豚先輩の言うことなんか気にしないもんね」
「なんだとっ…貴様!!」
「やーい、血の色みどり〜」
「黙れこの軟弱者がァ!!!」
「ギャアアだからあんたらそれ(武器)どっから出してんだよばかぁ!!!!」
「えぇいちょこまかとうっとおしい!!おとなしく斬られろ!!」
「斬…!!?ギャアア死ぬ!殺されるー!!誰かぁー!!!」



俺がまさにめっきりんがの餌食になるかと思われたその時、
鋭い音を立てて刃が交錯した


「う、え…?」
「丸腰の後輩相手に貴方のような猛将が獣のように襲いかかる…


美しくありませんよ夏侯惇殿」

「あ…張恰先輩…!!!」


俺と河口屯先輩の間に立ち、獰猛な滅麒麟牙を鋭い鉄爪で美しく受けていたのは、
俺と同じ華北学院から美しくないとか何とか言いながら曹大附属へと転校していった張恰先輩だった
キン!と音がして両者が武器を降ろすと、美しい笑みを浮かべた張恰先輩が目映い蝶を散らしながら俺を振り返る
あー、久しぶりに見たなこの効果(和み

「お久し振りですなまえ、相も変わらず美しくありませんね」
「「え」」
「張恰先輩〜!!」

きっとその場にいる全員が違和感を感じているであろう中、俺は張恰に飛び付いて感動の再会が果たされた
3年間の付き合いとは言え、俺も張恰先輩に懐いていたし張恰先輩もまた美しくないとか何とか言いながら俺を可愛がってくれていたのだ
お前的にはそれでいいの?という感じの周りを置いておいて俺達は(というか主に先輩が)またきらきらオーラを出しながら慈しみあう

「ああ…この理不尽な感じ…!懐かしい〜!」
「2年振りですからね、とはいえ貴方背も伸びてませんね、ふふ」
「先輩はむしろガンガン伸びますね〜!」
「時に夏侯惇殿!
私の可愛くないなまえに手を上げた理由をお聞かせ願えますか?」
「そういえばそうだった、そこをどけ張恰!そいつをこっちに渡せ!」
「いけー夏侯惇!そこだずぇ!」
「夏侯惇殿の正義を示すのだ!」
「なまえちょっとは反省しな!」
「なんだとてめぇら〜!!」
「美しくありません!!!!!」
「死ねいみょうじ!!!」
「ギャアアアア何故ー!!!!」


校内屈指の猛将2人の無双乱舞を受けた俺は全治1ヶ月と診断された



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