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団欒せよ!









「アバレアバレアバレまくぅ〜れ〜」

なまえが上手くはない鼻歌を歌いながら中庭横の渡り廊下を歩いていた
司馬懿はいつの間にか役員が決まっていた生徒会の集まり、甘寧はいつの間にか決まっていた体育委員の仕事で部屋は空
つまりはなまえは暇を持て余していたので、この無駄に広い校内を散策することにしたのだった
業者に任せてあるのか、無駄に整えられた豪勢な中庭に感心しつつ、
中庭の一角に林檎やら桃やら蜜柑やらやけに食べられる種類の木ばかりが植わっているスペースに違和感を覚えつつ廊下をてれてれと歩く

と、そのとき向かいの校舎から一人の男がこちらに走ってくる
ものすごい勢いの男になまえはびっくりして目を見開くが、その男と目が合うと男はなまえにまっすぐ向かってきた

「いいところに!」
「は!?」
「もうすぐここに眼帯の男が来る!そしたらそいつにわしはこの廊下を走り抜けたと言ってくれ!」
「ちょっ、待っ…」
「頼んだぞ!」
「えええぇぇぇ」

それだけ矢継ぎ早に言うとその男は廊下脇の茂みの中に隠れた
一瞬の出来事にわけがわからずなまえがぽかんと立ち尽くしていると第二陣の嵐がやってきた
男の言ったとおり眼帯の下に凄い形相をした男がこちらへ走ってくる
恐怖のあまりすべてを忘れそうになるがハッとして平静を装う
すぐに男はなまえの前まで来て怒鳴り声で問うた

「おぉい貴様ァ!」
「ええぇぇはいっ」
「ここに孟徳がこなかったか!」
「もうと…?え、えっと、そっちに走っていきました」
「礼を言うぞ!」

ギリッと奥歯を鳴らし走っていく男を見送ると、ガサッと音がしてなまえがバッとそちらを振り向くと、
さっきとは打って変わって安堵の表情をした男が出てきた

「ふふ、ははは、惇ざまぁ
そこの少年、礼を言うぞ」
「はあ…」
「ん?お前見かけぬ顔だが…どこの高校出身だ?招待生か?」
「はあ…招待状はきましたけど…えと、華北出身です」

この少し偉そうな男のペースのままそうなまえが告げると男はちょっと目を見開いて低く笑った
どうにも華北学院は笑いものらしい(全ては袁本初が理由と思われる)

「そうか、そうか華北か。それではわしのことも知らんだろう」
「はあ…」
「少年、今から暇か?」
「はあ、まあ…」
「ついてくるが良い、さっきのお礼に良いものをやろう」
「はあ…」

これはいうなれば『知らない人についていく』状態ではあるが、如何せん暇ななまえはそれでも
上等な身なりの割りに破天荒なこの男についていくのも面白そうだと思い足取り軽くその背を追った

「お前は何年生だ?」
「俺2年です、2年B組。黄中先生のクラス」
「2年B組?ははは、それはいい!とんだ偶然だな!」
「?」
「ついたぞ、入れ」

そう言ってその男は不敵な笑みを浮かべてある教室の扉に手を掛ける
ふと上を見上げると扉の横の表示板には『風紀委員会室』と書かれていたのだった





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