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前略、職員室より






安岡→浦部→僧我







「どーぞ」
「ん、ああ、悪いな」

そう言って机に置かれたコーヒーを口に運ぶ安岡
視線はスポーツ新聞を追ったままである

「角界まで八百長で叩かれちゃ日本もお終いだな」
「ああ、相撲の?」
「そ。八百長ってのは裏の文化だろ〜なぁんで揉み消せなかったかね」

あーあ、と新聞を畳んで机にバサッと放るともう一方の新聞を広げた
一面に大きく立派な競走馬の写真が載っている
ズラッと並ぶのは馬の名前である

「なまえくん今週のレース買った?」
「…アーネスの単勝です」
「でたよ、全く…懲りないなお前も」
「じゃあ安岡さんはどいつにはったんですか?」
「俺はナリタさ。シシアマゾンとの複勝狙い」

安岡が新聞に載っているナリタブライオンの勇姿をなまえに見せてその向こうからニヤリと笑った

「うわ〜これだから!またそんなつまんない取り方したんですか!」
「つまるつまらんも大事だが博打は勝たなきゃ話にならんだろ」
「それもわかりますよ?全部考慮してのアーネスエイジです」
「だからあ〜あいつぁ一回奇跡のようにナリタと競っただけだろうよ」
「その奇跡を馬券代で買ってるんです!」
「はいはい。ま、その奇跡が起きたらまたおごってくれや」
「んも〜」

安岡の新聞をズイと横から覗き込むなまえ
顔を並べてあーでもないこーでもないとJSA議論が始まった

「今までにいくらスッたよ?」
「そんな計算してたら競馬は楽しめませんよ!」
「本音は?」
「計り知れません…」
「ハハハ、正直でよろしい!」

バシバシとなまえの背中を叩いて喜ぶ安岡
ふと真顔に戻ってガシッとなまえと肩を組む
なまえは驚くが安岡のなすがまま少し身をかがめて内緒話のような体勢になった

「知ってっか?ここだけの話…」
「えっなになになんですか!?」
「しっ!実はよ…平井先生って…」
「平井先生って…!?」
「たった一走のレースで600億稼いだ…って噂だぜ」
「ろ、ろっぴゃむぐ」
「しーっ!」

安岡は即座になまえの口をふさぐ
なまえは声に出せない分の驚きを手足をバタバタ動かして表現する
そろりと安岡が手を放すと小声で激しく悲鳴をあげた

「どういうことですか600って…!」
「600とは言っても…恐らく300ずつ張って取り合って、実益は300ってとこだろう」
「600だ300だって…国家予算かって!」
「いや、国家予算が600は困るだろ」
「ですよね、国家予算が600億ってマズいですよね」

ヘラヘラと笑うなまえはそのままのテンションで、でも〜と続ける

「なんか額があんまり突飛すぎて現実味ないですよ」
「ん〜まあそうなんだが…ただこの情報のルートは確かなんだよな」
「え〜でもそんなにお金あったらもう仕事しなくていいじゃないですか」
「いやまあそうだけどよ…
しかし初心に帰って考えてみろよ、平井先生だぜ?」
「う…」
「平井先生なら300や600、それこそ国家予算の兆単位で金を動かしてても不思議じゃなさそうじゃねえか…!?」
「た…確かに…!」

なまえと安岡の目は爛々と輝き、ハアハアと徐々に高揚していく

「ていうか平井先生だったら国が傾く程の金額を指一本で左右してもおかしくないですよね!」
「それはちょっとおかしいが流れから行くと否めないな…!」
「おぉお…!スケールが違え…!」
「気付いたら世界中の財産の半数以上が平井先生の手の内…なんて未来が来るかもな…!」
「やべえええええ!!」


この間の抜けたおバカな会話をしっかり聞いていた銀二は
呆れてため息をつくとコーヒーを口に含む

そして2人の破天荒な結論に思わずクククと笑いを零した



→浦部



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