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B組名物ペルセウス






「あっおいアカギ!」
「なまえ。なに」
「なにじゃない!みょうじ先生だろ!これ、CPDA提出確認書!出してないだろ」
「うん」
「ん!」

提出すべき書類が全員分そろわず、教室を出た廊下でなまえはその白い頭を呼び止めた
なまえは怒った顔のまま書類を出せ!と全身全霊で語りかけながらアカギの方へ手を差し出した
アカギはそれを見て、その手にポケットから出した飴を乗せた
なまえはそれを見てぱああと笑顔になる

「わあ、ありがと!」
「どういたしまして」

アカギが自然な流れでなまえの頭を撫でる
なまえは早速アカギからもらった飴の包装を開けようと端っこをつまんだところでハッとしてかああっと赤くなった
静かに肩を震わせているアカギとだんだんと赤くなって眉間に皺がよっていくなまえ

「ち、が、う…!!」
「なかなかノリがいいじゃない」
「うるさい!!CPDA出せこのお馬鹿!!」
「ククク…」
「笑うな!あーもーっ!!」

持っていた出席簿で珍しく声を出して笑うアカギをバシバシ叩くなまえは廊下でもかなり目立っているのだが
周りの生徒は一切声をかけない
微笑んで良いのか恐れれば良いのかわからないからである
あのアカギに冗談でも唯一手を上げられるなまえは生徒の間で“対アカギ専用ペルセウス”と影で称えられている

しかしそこへ躊躇もなく近づく生徒が一人

「みょうじ先生、これ提出のアンケート」
「平山」

散々今までじゃれあっていたアカギに瓜二つの平山が手渡したのはCPDAと同時に配布されたアンケート用紙
それをクラス全員分まとめて提出しに来たのだった
級長は別にいるのだが、平山はこうした雑務を嫌がらず、誰もやるものがいなければ仕方なく手をつけてくれる、
簡単に言えばB組の雑用係となっていたのだった(知らぬは本人のみである)
一枚の紙を出すの出さないのとごちゃごちゃやっていたところへの平山のファインプレーになまえはいたく感銘を受けたようである
ガシッと平山の手をとるとその手を握り平山をきらきらした目で見つめる

「え!?ちょ、先生」
「お前は良い奴だな平山!先生嬉しい!」
「は、はあ…」
「平山みたいな奴ばっかりだったらさぞ学園の風紀は乱れることを知らないんだろうな!!」
「そうですか…ていうかあの、手…」
「あ、悪い悪い」
「いえ…」
「…ククク、何やら初心な凡夫ばかりの学園ね…確かに風紀の乱れは無さそうだ…
まあその分面白みもないんだろうけどね」
「な、なんだと…!?」
「なんだと!?」

平山と対アカギ専用ペルセウスが同時に警戒態勢をとる
一方アカギはいつもどおり余裕綽綽と言った感でそれを鼻で笑う

「お前みたいなのばっかりいる方が怖えよ!」
「そうだそうだ!怖えーよバーカ!!」
「いっつもいっつも人の揚げ足取りやがって!」
「大体なんでもかんでも賭け事吹っかけんな!勝てるかバーカ!!」
「あと髪あげて俺のフリしてむちゃくちゃ悪行働くな!こないだ奇襲かけられたんだぞ!!」
「え、マジ?大丈夫だった?」
「あ、はい。安岡さんも一緒だったんで」
「ああ良かったー気を付けなね、ただでさえお前見た目目立つんだから」
「まあオレは気を付けてるはずなんすけどね…」
「だよね〜グフう!?」

なまえと平山が何やら井戸端会議のようなゆるい雰囲気になってきたところでアカギが乱入
というよりなまえにのしかかった
かまって、ということらしい

「こら、降りなさい」
「やだ」
「まったく、お前はちょっと平山を見習いなさい」
「意味がわからない」
「え…(涙」
「お前のほうが意味わかんねーよ!」

すぐ後ろにあるアカギの髪の毛を一束掴んでつんつんと引っ張るなまえ
ふと平山に視線を滑らせて、目が合うと手招きをした
平山は首をかしげながら身動きの取れないなまえのほうへ少し近寄る
するとなまえはおもむろに平山のほうへ手を伸ばすが平山は驚いて身を引いてしまった
なまえが怒った顔をして手をパタパタさせるので、また近寄ってすこしかがむと髪の毛を一束掴まれた

「いて」
「ちょっと、なまえ?いたい」
「すげーキレー」
「いて、いてて」
「…なまえ」
「いいなーすげーていうかこれ楽しい」
「いててて」
「いたいってば」
「楽しい楽しい、すごい」
「いて、いていて」
「…いたい」

アカギと平山がやめろと言わないのを良いことに髪をつんつん引っ張って遊ぶなまえ
楽しくなってきたようで頬が緩んでにやにやしながら髪を離さない

「…」
「…」
「…あれ、痛くない?それっ」
「あいてっ!いたい、いててて」
「っ、いたっ…」
「いたい?ごめん」
「いたっ、いてて」
「いた…いたい、なまえ」
「うんごめん」
「いたたたた」
「なまえいたい、いたい」

「…何してるんですか…」

ハッとして3人が声のしたほうを見れば、A組のひろゆきが不可解なものを見るようなひどく冷たい目でこちらを見ていた
ひろゆきの周りにいた生徒は同じようにこちらを凝視していたが3人がそちらを見ると
見てませんよ!とでも言いたげに足早に通り過ぎていった

アカギにのしかかられているなまえがアカギと平山の髪の毛を引っ張って痛がらせて遊んでいるこの状況をどう説明しよう…
いや、説明しようがないな、というかめんどくさい
と3人はそのままの体勢で同時にあきらめた



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