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門をくぐれ!



三國学園、と名前の彫られた真新しい門が鈍く光るここ
もと曹魏学院の校舎を増改築して作られた
三校合併新設校、三國学園高等部である

ちなみに三校というのは
曹大附属(学校法人曹魏学院曹魏大学附属高等部)と
孫呉二高(孫呉学園第二高校)と
蜀高(蜀漢高等学校)
の三校である

何故、というのは知らないがとにもかくにも有名高校が合併し
おびただしい数の生徒が今年からこの学び舎に集められたのだった
それを初日から思い知らせるように門の周りにうごめく新入生の群れは
早速なまえのめんどくさがりな習性を刺激したが、さすがに初日からフけて先生に目をつけられるのはマズイと
どうにか一歩を踏み出したのだった

「(人数多いわけだよ…うぜえぇぇぇどけどけ!!!)」

口には出さず、心でひたすら叫びながら進む
とは言ってもその眉間には深い皺が刻まれている
新学期のわくわくも早々に、既に疲れて来たなまえはフラフラになりながらクラス分けの表に群がる人だかりへ近付いた









同じ学校だったもの同士で談笑するものが多く、教室は賑やかだったが、
なまえはじっと教室の入り口を見つめていた
そして教室の戸が開き、一人の生徒が入ってくるなりなまえはがたっと立ち上がった

「袁本初テメェェ!!」
「うぐ!?なっ、みょうじ!?えぇい放せ!!」
「るせぇこのやろうテメー!!」
「離さんかうつけめ!!くっ、私が何をしたというのだ!!」
「知るか!」
「そこへ直れェェ!!!」

なまえに暴行を受けたその生徒はなまえと同じく、合併対象の三校以外の華北学院出身の御曹司、
袁紹本初であった

「何の脈絡も無しに奇襲をかけるのは止めろと前から何度も言っておろう」
「るせーよ馬鹿こちとら一人で寂しかったんだよ阿呆!!」
「きっ貴様、馬鹿だの阿呆だのと…!」

可哀相な発言ながらも罵詈雑言を撒き散らすなまえに袁紹がまた眉を吊り上げたとき、教室の戸が勢いよく開いた

「席へつかんか若いのー!!」

何やら担任と思われる、威勢の良い年配男性である
なまえや周りの何人かはびくっと驚きを見せたが一部の生徒はハハハ、と笑っている
「黄中」と書かれた男性の名札は深緑色をしており、彼とその生徒たちはきっと蜀高出身なのだろう
笑い声を残しながら一斉に席へつくと出席が取られた

「む」
「お」
「ちっ、貴様が後ろとは…」
「わはは!敵に背中を向けるとは!」
「やかましい!おとなしくしておくのだぞ」
「まさか」
「即答するでない!!」
「まずは自己紹介じゃな!わしは蜀漢高等学校から来た黄漢升じゃ!古文漢文担当じゃあぁ!!」

年の割に果てしない元気を持つ黄忠は黒板に大きく達筆な字で名前を書くと
皺を増やして思い切り笑った
なまえは袁紹の背中にシャーペンをぶすぶす刺しながら嫌いじゃないなーと思いつつ始まった生徒の自己紹介を聞いていた

「名は袁本初。華北学院出身だ」
「みょうじなまえです。同じく華北出身でーす」

自己紹介が終わり、袁紹が座ろうとした時に椅子を引いて転ばせようとしたなまえの手は、
何度も同じ手を食らった袁紹によって椅子に届く前に払われた







「よ、みょうじなまえ?俺甘興覇!」

HRが終わり、休み時間を知らせる鐘がなった時、早速熟睡の体制に入っていたなまえが顔を上げると前に男子生徒が立っていた
周りの生徒の例に漏れず背の高い男子生徒はニカッと精悍な笑みを向ける

「?おー、よろしく」
「甘寧でいいぜ!これから相部屋よろしくな!」
「うん。ん、ん?え?なにが?

…………………は?」

甘寧と言ったその生徒を見上げる姿勢のまま固まってしまったなまえ
相部屋とはなんのことだろう。なまえには思い当たる節が何もない
あいべや
その単語によって(頭の中で)激しく混乱するなまえに首を傾げる甘寧

「あれ、知らねぇ?クラス掲示の隣に貼ってあったんだけどよ」
「ていうか………相部屋って…………

ええぇぇまじでまじでなに相部屋って1つの部屋2人で使うの!?きいてないんだけどねえ、ねえねえねえ!!!」
「や、俺に言われても!むしろなんで知らないんだよ?
ま、とにかく行きゃわかるぜ!!」
「説明せんかワレェェェ!!!」
「ぐはあぁ!?」
「あ、相部屋の事実ですっかり流れちゃったけど、なまえでいーよ、よろしくな甘寧」
「お、おう…(なんてマイペースな…)」

他人と相部屋なんざごめんだよ!
つーかむしろ生活能力無くてごめんだよ!あっ俺上手い!
などと一人で盛り上がるなまえを甘寧は頬を擦りながら呆然と見ていた



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