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ファミレスぐーたん







「くそ〜アカギのやつ〜
俺が悪いと思う!?」
「さあねぇ〜なまえちゃん鈍だし」
「ちょ何それ俺鈍じゃない」
「!待ってなまえちゃん!」
「え?」

放課後、早く仕事が終わったなまえが佐原と一緒に下校しようと校庭を横切っていると急に佐原がなまえを止める
なまえが佐原の方を見るといつになく真剣な顔つきでどこか見ている

「なに、なんだよ、ねー」
「ちょっ…静かに、ほら、もう」
「なになになんだよねえねえねえねえ」
「ちょああもうテラウザス!!ほら、アレ!」
「ん?」

キョロキョロと佐原の視線の先を探すとそこには男子と女子が一人ずつ

「ねぇ、カイジくん!一緒に帰らない?」
「や…あの、ちょっと…」
「カイジくんったら!あ、照れてるな〜?」
「ちがいます!」

「ククク…ぷくく」
「ははは、可愛いなあ〜」
「くはは!ひ〜っ面白ぇ〜!」
「そんなに?」
「だってなまえちゃん気付かない?カイジさん美心さんが苦手なんだよ」
「えーそうなの?」

「カ・イ・ジ・く〜ん」
「俺用事あるから!」
「あっちょっとぉ!」

「ハハハ、逃げた!」
「ふーん、複雑だな〜」
「カイジさんが一言『俺も』って言や話は簡単なんすよ!
…ねぇカイジさん♪」
「え?」
「おま…他人事だと思って好き勝手言いやがって…!」

なまえが振り返るとそこには息を切らしたカイジの姿
走って美心を離し、追い付かれないよう美心の逆をついてなまえ達の後ろに回り込んだらしい

「ハハハ、そんな!他人事だなんて!」
「じゃあお前が美心と付き合えよ!」
「じゃあ何でお前は美心ちゃんじゃ嫌なの?」
「っそれは…」







「あのな〜見た目なんか慣れだって!」

ところ変わってとあるファミレス
佐原とカイジ、そして向かい合うソファになまえが座っている
真ん中にポテト、佐原の前にパスタ、カイジの前にドリア、なまえの前にパフェ
カイジはこころなしか居心地悪そうにスプーンを進める

「俺だって最初一条とかアカギに会った時美人過ぎてびびったけど今はもうムカつくもん」
「あ、それわかります逆パターンでオレ最初山崎先生と目合わさないように必死だったもん」
「あーそうそうわかるわかる俺も俺も〜!だよねーでも山崎先生って実は超面倒見いいの知ってる?」
「ですよね!この間すっころんだ子の荷物拾って立たせてやってたし」
「ハハ、それ多分辺ちゃんだ」
「それはわかったけどさぁ…」
「ん?」
「けど…?」
「別にオレはあいつが美人じゃないから好きじゃないわけじゃなくて…」
「でも坂崎は中身も女の子らしいと思うけど」
「へぇ〜なまえちゃん知ってんすか?」
「去年副担やってたからさー
知ってたかカイジ、教室の窓際に置いてあった花、あれ坂崎が持ってきて水代えたりしてやってたんだぜ!」
「えぇーすげー!乙女じゃないすか!」
「いや…それは知ってるけど…」

やはりイマイチノリ切れないカイジをよそに、なまえと佐原は盛り上がる

「しかもさぁ、家庭科が調理実習の時とかちゃーんと担任と副担だった銀さんと俺の分とっといてくれるし〜」
「うわぁ〜ええ子やぁ!」
「あとこれは偶然見掛けたんだけど、告白してフラれた女の子と一緒に泣いてあげてたな…」
「ああー女の子っすね〜!それ大事!」
「なんか俺もらい泣きしちゃったよ…フラれた子も坂崎もいい子なんだもん…」
「ええ話や…」

なまえと佐原はしみじみと頷きあっている
完全に置いていかれたカイジがしんみりする2人を冷めた目でみながらコップを傾ける
そこへなまえが顔をあげてカイジの方を見た

「で?なんだっけ」
「だからカイジさんが美心さんをフる理由」※まだフられてはいない
「ああそうそう!おいてめぇこらなんで坂崎フるんだよ」※まだフられてはいない
「…;
なんつーか…別にオレのタイプじゃないっつーか…」
「「…」」


とうとうスプーンを止めてうーんと考え始めるカイジ
そこへ佐原が身を乗り出す

「じゃあカイジさんのタイプってどんなんすか?」
「へ…」
「美心さんみたいなのじゃなくて、」
「そうだな、それがわかんなきゃ坂崎のフラれ損だろ」※まだフられてはいない
「う、う〜ん…」

ずいずい、とどんどんカイジのほうへ身を乗り出してくる2人
何故か責められている心持ちでさらに言い淀むカイジに佐原は視線で急かす

「じ、じゃあお前はどーなんだよ?」
「へ?オレすか?」
「人にそんだけ聞くんだからお前も答えろよ」
「うーん、オレは〜AKG48の前野敦子をもうちょいグラマラスにした感じ」
「お前欲張りすぎだろ〜あっちゃんで充分じゃん!」
「いや〜顔おとなっぽ過ぎない割りにグラマラスなのがベストっすよ!」
「お前…欲だだもれかよ…」
「で、カイジは?」
「う…(つーか佐原のそれちがくね!?)」
「いろいろあるじゃないすか、優しいとかぁ〜」
「う〜〜ん…別に…普通で…」
「かわいいとか〜」
「ぶりぶりされても…萎えるし…」
「頭いいとか〜」
「頭いいやつなんかこりごりだぜ!」
「スタイルいいとか〜」
「オレよりデカくなきゃ別に…」
「うーんイマイチはっきりしないな、お前の女っ気の無さが異常なのはよくわかった」
「え!?」
「あれだな、カイジはカイジを見放さないでいてくれりゃいいんだ」
「な、なんだよそれっ…!それじゃあまるでオレがっ…」
「(スルー)じゃあ辺り見回してそれっぽい雰囲気の人います?」
「ああ〜…?」

遠慮がちに辺りをざっと見回すカイジ
煙草片手に大笑いする人、両手でマグカップを持ってちょっとずつ飲む人、一人で静かに本を読む人…
最後に後ろをチラッと見て視線がテーブルに帰ってきた時あっと声をあげた

「ん?」
「こんなん」
「…は?」
「え…?」
「…あ、いや、違っ…!」
「わーなまえちゃんてことすか!」

ぱ、となまえを指差して謎がとけてスッキリした表情から一転、慌てて声を掛けるカイジ

「そうじゃなくて…っていだだだだだだ!!ギブギブギブギブ!!」

カイジのなまえを指す人差し指を曲がっては行けない方向に力を加えるなまえ
因みに佐原は非情にも爆笑している

「女のタイプだっつってんだろーが!その上人指差して『こんなん』だ?悪かったな『こんなん』で!」
「い、いやだから今のは言葉のアヤ、というか…!」
「ふん!もういいよ別に、それ一条にもやられたことあるから」
「え!」
「どうせお前らは自分のわがままが通るてきとーな奴がいいってことだろ!もーカイジなんか一生独身つらぬいちまえ!」
「ちょっなまえ!(あながち間違ってはいないけれど!)」

今度はプイとカイジからそっぽを向くなまえの方に佐原が身を乗り出した
こころなしかテンションが上がってきたようである

「へぇ〜一条センセーとそんな話するんすか?」
「そりゃあお前、高校からの付き合いだもん
えーっと、3年と、4年で…もう9年ぐらいか?そんだけ友達やってりゃそんな話もするだろ〜」
「へぇー!一条モテたっしょ?」
「一条はモテねーだろ、あの性格だぜ?」

上の方へ視線を滑らせて指を折りつつ昔を思い出すなまえ
その前で佐原とカイジが茶茶を入れる

「うーんそうなんだよな…アイツ顔良いけど性格わりーから一部の女子にしかモテなかったよ
つーか俺に興味なしかお前らw」
「ほーらやっぱな(スルー)」
「えーでも男ってMっぽいのよりSのがモテるっていうじゃないすか(スルー)」
「あいつはSとかそんなんじゃない。悪鬼だ」
「カイジさん一条と何があったんすかw」
「あーあとあれだ、一部の男子にモテた」
「ぶはっ」

ニッコニコのなまえの爆弾発言に、カイジは佐原となまえにいれられたスプライトとレモンティーのミックスドリンクを吹き出した

「ハハハハ!なんすかそれ〜え!?どういうこと!?」
「ハハハ!だからぁ、男に告白されてたの!よりにもよってお決まりのぶふっ、大学図書館裏の中庭で〜!!」
「だぁーっはっは!まじすか!?」
「(これは…!)」

涙がにじむほど爆笑する2人の横で、カイジはいいことを聞いたっ…!と黒い笑みを浮かべた
そしてさらに情報を仕入れるべく顔をあげてなまえの方を見たカイジだがその顔からは血の気がひいた

「…」
「…なまえちゃん…」
「もうさあ〜ほんとあいつに意地悪される度顔の良さにいらっとさせられたけどさ〜」
「あの、なまえ…後ろに…」
「俺それ見た時もう爆笑しそうで走って逃げたよね〜!ざまあ!くははは!」
「…」

腹を抱えて本格的に爆笑しているなまえは、いつの間にか爆笑を止めて青ざめてい
る佐原やカイジに気付かなかった

ひーひー言いながら涙を拭うなまえの肩を誰かの手がポンと叩く
なまえはふうっと息を吐きながらその人物を振り返った






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