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清掃せよ!





「わああああ司馬懿ー!!!司馬懿司馬懿司馬懿甘寧ー!!!

「「どっちだ/よ!!」」
「聞いて聞いて!!見て!!」

俺が大喜びでバッとやつらの前に広げて見せたもの

「お?数学…38点…!
おおおやったじゃねーかなまえ!!」
「えっ「だろー!!孔明先生のおかげだぜ!!お前は?」
「へへーん、どうだ!!」
「どれどれ、物理、44点…!
なんだよお前もすげーじゃん!!」
「…」

イエイッ!!と爽やかにハイタッチを決める俺たちはもう毎度のことながら冷たい目でこっちを見る司馬懿のことなど気にしない

「えっなになになまえ数学赤点じゃねーのかよ!!すげぇんだずえ〜!!」
「もち!フフン」
「良かったですなみょうじ殿、祝・脱赤点ナリ」
「ほんと頑張ったな俺ら!」
「おおよ甘寧!サンキューお前ら!」
「聞いてくれなまえッ!!俺も英語で赤点を免れたのだァーッ!!」
「「「なにィーッ!!??」」」

わいわいと俺の席のまわりにテンション高い野郎どもがテスト片手に集まってくる
うんうん、今回はみんな頑張ったな!

「なぁにを低レベルな点数で騒いでおるのだ」
「全くやってられぬわ馬鹿めが」
「とかいってえ〜なんだかんだ助けてくれたくせにィ〜」
「や、やめんか!」

うりうりと肘で小突くと司馬懿はちょっと照れたように手で払う
ああ、司馬懿を怒らせる楽しみも今日はひとしおだぜ…!(キラキラ

「チッ、ニヤニヤとだらしのない顔をしおって…!
だいたい私はお前にはなにもしていない!」
「まあそうだよね」
「(なんかムカつく)」
「なんだみょうじ貴様また他の者に手を借りたのか情けないやつめ」

ふん、と鼻を鳴らす袁紹に俺は何故か踏ん反り返って人差し指を立てた

「あんなー!なんと俺の数学は諸葛亮…じゃない、孔明先生が面倒を見てくれたのだ!!ハッハッハ!!」
「それで38点か。臥龍が泣いておるぞ」
「バアッカお前諸葛亮はな、俺が夏休み補講になるのが堪えられんっつって勉強教えてくれたんだぜ?
どっかの名族とは違って友達思いだぜ三国一の名軍師はよォ」





「こういう裏事情があってもか?」

長いブラシの柄の頭に顎を乗せて怠そうに言うのはいつも通りしかめっ面の曹丕

ここはそう、炎天下の水のないプール

向こうの端で孫権がホース片手になにか言ってこっちに手を振っている


俗に言う、プールの掃除ってやつである


「俗もなにも、プールの掃除以外の何物でもなかろう」
「うるせーっ諸葛亮のやろおおお
一瞬でも友情に感動した俺の涙を返せ!!泣いてねーけど!!」
「まあまあなまえ、陽射しもきついことだし、一緒にさっさと終わらせてしまおう」
「うう…趙雲…お前だけが俺の今の希望だ…」
「相も変わらずお前の目は節穴らしい。ここにもいるだろうお前のシャイニングホープが。」
「早速暑さにやられたか文帝」

モップ片手に苦笑しているだけなのに、腕をまくった白いシャツが何故かまぶしすぎる趙雲と暑さでさらにツッコミどころ満載の曹丕
遠くの孫権は今度は砂袋を抱えてまたなにか言っている

そう、諸葛亮のおかげで赤点及び補習を免れた俺は、代わりにA組に回ってきていたプールの掃除当番をかわらされたのだ

諸葛亮曰く、「テスト前の時間はテスト返却のみで早く終わったHRの後の解放感あふれる放課後の時間と等しく貴重である」ってことらしいっつーか長ったらしくてわけわかんねーよーだ!!バカ!!

つまりは教えてやったんだから掃除代われハゲってことらしい
ハゲてねーよボケ

「貴様こそ暑さでそろそろヤバイのではないか」
「うっせうっせ、ほっとけ文帝
あ″〜もぉー孫権てめーもさっきからうっせーんだよ!!何言ってっか全然聞こえねーよ!!
あ?じゃあうるさくねえって??うっせー!!!」
「もはやむちゃくちゃだな貴様」
「さ、洗剤を撒こう
なまえ、滑らないようにね」
「うぇーい」

いつの間にか、ビニールタンク片手にプールサイドに立っている趙雲に適当に返事を返すと思わず袖で汗を拭う
ギンギンの直射日光に滴るわ滴るわ
これぞ水も滴るいいおとk「ウェッチュウ!!」
「うおおおぉぉお!!?」
「やっときたか」
「ななななんだよいきなり!!!??水!?え!?え!?」
「ホォォウッ!!」

後頭部への衝撃と背中に流れる冷たい滝に振り向くとそこにはヘッドのゴツいホースを持って左右対称のポーズを決める張角の野郎がいやがった
そうだ、こいつもA組だった

「不ぅ遜な発言に…イェッチュウ!!!」
「さっきからなんなんだよそのニャンチュウって」
「天誅と言っているのだろう」
「どう考えてもGET YOUって言ってるだろ」
「洗剤が少ない上にあまり体に良くないから水で希釈して使うんだよ。張角殿、頼みます」
「任されよぉう」
「それはそうと一発返させろ」
「ホゥェエエエイっ!!」
「んな!?おぅわあぇ!!」

ちゅるん
どきゃっ

張角のホース(ゴツいヘッドの繰り出す水圧は殺人級)が今度は俺の足元を刺す
それを避けようと足に力を入れるとバナナの皮よろしく俺は。。。

『なまえ、滑らないようにね』

そしてこともあろうに俺が滑った拍子に俺の持っていたブラシの柄は曹丕の顔面に直撃した

「く…き、貴様…」
「あ、え、や…さ、さすが文帝…鼻血も滴るいい男☆」「ホゥッ☆」
「合いの手いれてんじゃねーよこの黄巾野郎!!!」

どんどん背後が黒くなっていく文帝
俺はとりあえず張角に足払いをかました
が、やつはひらりとそれを避け、着地しない

着地しない

もう一度言う、

着 地 し な い



「うええええええ!!!??」
「アァホ面にぃ…ンゥゥケッチュウ!!!」
「ぐへええええいててて今言った!!今絶対ゲッチュウって言った!!
ていうかなんで浮いて…いてててちょ水圧!!水あブッ「水がもったいない。すかさず希釈」《ザバァ》
「おええええ洗剤ぶっかけてんじゃねえよ文帝!!人間のすることじゃ「そして希釈した洗剤でブラシがけッ!!!」《ドゴォ!》
「ぐはああああああ!!!!」

あろうことか俺は孫権のブラシでカーリングよろしくヒットされ洗剤の上を滑りながら勢いよく頭から25mタッチした
これはコントか?コントなんだな?
おかしいな、俺の怒涛のタッチで壁が崩れるはずなのになあ

「…なにその…無駄なチームワーク…」ピクピク
「なまえ、大丈夫か!?」

趙雲は心配そうな顔をして優しく俺に手を差し伸べる
当然のように後光が見える
心なしか(張コウ先輩とは違った)羽も見える

「もう帰る…おうち…」
「大丈夫か!?しっかり…!」
「ちょう″う″ん″…グス…」

趙雲の逞しい腕に抱えられ、野次馬の爆笑する声など耳に入らない

「俺…もうダメかも…」
「なまえ…!だめだ、しっかり!」
「最期に…俺…前から趙雲のこと…」
「なまえ!まだ…まだ私達には…

プール側面の清掃が…!」
「ゲッチュううう!!!」(※なまえ)
「いたっ」
「趙雲のバカッ!!アホッ!!イケメンッ!!」
「なまえ!待っ…うおおっ!!」
「罪なイィケメン…イィヤッチュウ!!!」(※張角)

今日初めて俺以外に、しかもあろうことか趙雲に張角の天誅が下った瞬間だった





「ひとぉつふた〜つぅは、阿ぁ斗ぉ〜も踏むぅが〜」
「みぃっつよ〜っつぅは、呂布ぅも泣ぁ〜く泣くぅ〜」
「無双ぉ〜男はぁ、こがねぇ〜のなさぁけ〜」

「…なんだその奇怪な歌は」


心を入れ替え、地味〜なブラシがけの作業を黙々とこなす俺たちはいつの間にやらタタラを踏む女達の心境になっていたようだ…
俺と張角と孫権は並んでそれぞれのブラシを調和させ、製鉄民のごとく己の業に打ち込んでいたというのにこの文帝は…

「お前ダメだな…モロの腹行きだよお前は…」
「もろとはなんなのだ、一体それはなんだ」
「ああ、もしかして『もの◯け姫』かな?」
「さっすが趙雲〜!文帝はあれな、『も◯のけ姫』この夏の課題図書な」

良かったらDVDを貸そう、と申し出る孫権
さっき知ったんだが孫権は家族ぐるみでジ◯リが好きらしい
中でも尚香さんはハ◯ルの動く城が、孫権は天空の城ラピ◯タが、
孫策は平成狸合戦◯んぽこが、孫堅先生は紅の◯が好きということだそうだ
まあ孫家の細かいデータには全く興味はないが、孫堅先生とは話が合いそうだと思った
ちなみに俺は小さい頃から魔女の宅◯便一択である

「さ、じゃあ水を流して終わろうか!」
「わーい!!やったやったそうしようぜ!!」
「長かったな、しかし」

今度こそ趙雲と曹丕がホースを持って、俺らがエボシタタラ歌を歌いながら磨き上げたプールを流して行く
俺と孫権と張角は仕事から解放される喜びのあまり肩を組んで(何故か曹丕のホースの的になりながら)タタラ歌の続きを歌って締めた

「ひゃっふーい!!終わったー!!25mプール完泳ー!!!」
「いや、陽射しも厳しい中、やり切ったな!」
「特になまえは諸葛亮殿の代わりとはいえ手伝わせてしまってすまなかったな、助かった」
「水臭いぜ趙雲!まあ俺の方が水びしょ濡れだけどな!!」
「つぅうまらんトークにぃぃい…
「「「ゲッチュウ!!!」」」
「「「わはははははは!!!」」」

暑さと解放感からか、プールの中で変なテンションでゲラゲラ笑う俺たちにに突如凛とした声が響いた



「殿方のプール掃除は終わったのですか!?」

「は…」
「あ…」
「げ…」
「月英さん…」


背後に真夏の厳しい太陽を背負って、プールサイドにしゃんと立つ麗しい月英さんの凛々しい問いかけに、急に静かになる俺たち
そのシルエットはまるで狼藉者を成敗する仁王像の様で、掃除は終わっていたにも関わらずさっきまで馬鹿騒ぎしていたことでビビるビビる、孫権なんて口を開けて固まっている

まあ、右手に蒼天湖月持った月英様は真の三国無双だから無理もない

「ええ、ちょうど終わったところです」
「そうでしたか、ご苦労様でした」

すぐさま冷静に返す趙雲に、月英様は武装を解いてにっこり笑った
一斉に止めていた息を吹き返すように力を抜く俺たち
…いつもそうしていればただの優秀で人格者な美人なんだけれども…

そんな月英様の後ろからひょこっと小さい影が現れた

「みなさんお疲れ様です!暑くて大変だったでしょう?
関羽先生からの差し入れ、溶けないうちにどうぞ!」
「わああい大喬さんだああありがとう!!」
「差し入れか、ありがたい!」
「かたじけない、ありがたくいただこう」
「我はクジ付きのアイスをいただこぉうぞ」
「フン、こんな安いアイスでは割に合わんな」
「じゃあよこせ」
「しっしっ、あっちへいけ」
「あれ?そういえばどうしてなまえさんはB組なのに手伝ってくださったんですか?」

プールサイドにしゃがんで不思議そうに俺を見る大喬さんはめちゃくちゃ可愛い
実はさっき差し入れを持ってきてくれた大喬さんが天使に見えて、大喬さんが可愛いのと差し入れが嬉しいのでテンションがまたもや崩壊した俺を曹丕がすごく冷たい目で見てたというのもあって俺は手を払うジェスチャーをする曹丕の足をげしげし踏みながらいやー、と大喬さんに笑い返した

「かくかくしかじかで、諸葛亮にまんまとやたれたよね、ハハハ」
「そうだったんですか!
それにしたってご苦労様です、ありがとうございました!」
「いいって別に、差し入れももらっちゃったし!」
「いや、なまえには感謝しているよ
おかげでこの炎天下のプール掃除も苦ではなかった」
「(趙雲って天然タラシタイプなのかな…)」

「みょうじくん」
「はいっななななんでしょう」
「お二方の言うとおり、孔明様との約束と言えどこの過酷な作業のお手伝い、ありがとうございました」

プールサイドにあがると、月英さんが俺の前にきて大喬さんとはまた違った女性らしさを漂わせて微笑んだ
動きに合わせてしなりと少し茶がかった髪が垂れ、それはそれは美しいのである
そして俺の右手を取ろうとする月英さんに俺は慌てて濡れっぱなしの手を引っ込めた

「あ!や、俺濡れてるし、洗剤もついてるから…」

が、月英さんはまたにこりと笑って躊躇なく俺の手をとった
「ありがとう」と握手されているあいだ俺はぽかーんと綺麗な笑みをうかべる月英さんを見ていた

月英さんの思わぬ深みに触れたような心持ちに、笑って頭を掻くしかできない俺の後ろで「ヒューヒュー」とか野次を飛ばしていた張角が一瞬走った閃光によって直後地に伏した(隣にいた孫権もなぜかダメージを受けてダウンした)のを見て、やっぱ男はダメだなと実感した




後日、廊下で関羽先生に呼び止められ、またもやお礼を言われてぽんぽんとでかい手が俺の頭を撫でてくれた
最初はアイアンクローかと思ったけどそれはそれは大きくて優しかったので俺はもう舞い上がった

「ああーA組っていいよな〜!関羽先生いるし趙雲いるし大喬さんいるし月英さんいるし〜!」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「俺A組行きてーなあ〜!
ぐびゃっ」
「なまえ行っちゃ嫌なんだずえ〜!!」
「その発言を撤回して頂きたい!!」
「ならーーーーーん!!!!」
「うぐ…俺…A、組…行きたかったな…」
「なまえーーーー!!!」

孫策のタックル(布団しまえよ)と張遼のボワっていう無双アーツ(YAMADA breath)と馬超のチャージ1(バモーキ大回転)が炸裂して(俺のこと好きなの?嫌いなの?)
倒れた俺に手を差し伸べてくれる趙雲はB組にはいなかったとさ…





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