04 私と金曜の放課後



今朝、新開くんに先日の約束通りお弁当を渡した。一応、彼の好きなものを入れたんだけど、口に合うかなぁ。ちょっとだけ心配になった。昼休憩が終わる頃、新開くんが私の教室へ足を運んでいた。荒北くんに用かな? と思っていると、私の名前を呼ばれた。弁当美味かったとのご報告だった。弁当箱洗って返すからと言い残し彼は去っていった。

そして放課後。私はなんとなく図書室に足を運んでいた。新しく入荷した小説を借りようと思って、あとついでに料理の本も。お弁当のレパートリー増やそうかな…って。いや、別に次を期待してるとかそんなじゃなくてですね! ただレパートリーが!! って私は誰に言い訳してるんだろう。そういえば、荒北くんは何が好きなんだろう。肉食系っぽい…。唐揚げ…? ハンバーグ…? ステーキ…? うーん。また荒北くんのこと考えてる。

本を借り教室に戻ろうと廊下を歩く。窓から外を眺めるが、そう簡単には見当たらない。サッカー部しかいないや。残念。ため息をひとつ残し、私は帰路へつく。といっても寮だからすぐなんだけど。

小説を手に取り読み始めるが、いまいち気乗りがしない。もやもやと頭に残る荒北くんの顔。なんだよもーう! どうしてこんな気持ちになるんだろ。ゴロゴロとベッドを転がっているとふわふわとした睡魔が訪れる。


目が覚めると外は真っ暗。寝ぼけ眼で辺りを見回す。やっちゃったーとぐしゃぐしゃの髪を軽く整え浴場へと向かう。

お風呂からあがり、軽く髪を乾かし部屋へと帰る。あ、自販機で飲み物買ってこ。共有スペースへ足を運ぶと人影が見える。

「荒北くん?」
「あれ、みょうじさんじゃん。珍しいネー」
「寮で会うのって珍しいよね。荒北くん、何飲んでるの?」
「ベプシィ。飲むゥ?」

ちょ、ちょっと待って!? えっ、えっその、えぇっ!? 心臓がバクバクと音を立てる。

「みょうじさん顔真っ赤ァ」

ケラケラと笑う荒北くん。からかわれてる! すっごいからかわれてる!

「ふくれっ面も可愛いネェ」
「そんなこと言っても何も出ないからね!」

てかそんな目でこっち見ないで! かっこよすぎるから! ちょっときゅんってしたから! 自販機にお金を入れる。何買おうかな、なんて考えてると後ろからバンッと音を立ててボタンが押される。後ろにはやっぱり荒北くん。怖いよ元ヤン…。音を立てて自販機から落ちてきたのはベプシ。取りたいけど動けない。振り返ると、荒北くんの顔。近い、近いよ…! 殆どぴったり壁になって立っている彼。壁ドンみたいっていうか、壁ドンっていうか…死ぬほど恥ずかしいっていうか!!

「ハイ。じゃあネー」

ひらひらと手を振りながら彼は去っていった。なんなの、荒北くん。手渡されたベプシだけがじんわり私の体温を下げる。

「荒北くんのバカ…」

誰もいない共有スペースに私の声だけが小さく響いた。




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