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▼ 私だけの秘密

「それでは失礼致します、ガレット様」

 カツカツとブーツの踵を鳴らし扉の前でスカートの裾を軽く上げる。その言葉を合図にただのメイドであった彼女は一友人になった。無機物のような、とまでは言わないか仕事と割り切った、冷めたとも表現出来る表情から一変する。外見年齢より更に若い乙女の表情だった。

「ガレットぉ〜〜!!聞いて〜〜!!」
「聞く聞く」
「今日ね!?カタクリ様のメリエンダのお皿を下げに行ったの!すると私の仕事なのにカタクリ様自らお皿を台車に乗せて下さってね!!」
「ええ」
「本当にお強いだけでなくお優しくて素晴らしいお方…!!」
「そうね」

ついさっきまでの仕事場で、ついさっきまで主人であった女性と同じテーブルについて夢主は語り出す。それはもう怒涛の勢いだ。慣れているガレットは微笑みながら話を促す。

「それにね、メリエンダの後に首元のファーにケーキの欠片がついていらしたの!お食事をされてる姿なんて滅多にお見せにならないから、その、本当に彼も食べて下さってるんだな…それも、欠片に気づかないぐらい美味しく召し上がられていたのかなって…」
「カタクリ兄さんも甘い物は好きよ」
「知ってる〜〜!!メリエンダの後の時間のカタクリ様いつもより甘い匂いがするから知ってる〜〜!!それでも普段とのギャップが……もう…好き…」
「落ち着きなさいよ、もう」

自分のおかわりついでに夢主の紅茶も注いで目の前におく。この机に突っ伏して兄への愛を叫ぶ姿を可愛らしいと思ってしまうのは贔屓目か。ついつい頭を撫でてしまったのはご愛嬌だ。

「じゃあ夢主の『今日のカタクリ様』はもう終わりでOK?」
「え?まだまだあるけど?寧ろ尽きると思った?」
「ごめん。聞き方を間違えた。『誰かに話したくて堪らない今日のカタクリ様』は終わった?」
「……とりあえずは?」
「じゃあ私から夢主にビッグニュース。今日これからこの部屋に兄さんが来る予定なの。夢主も同席すれば?」
「…………え?あ?は?ちょ、ガレット、その『兄さん』って…」
「勿論カタクリ兄さん」
「む、無理!だって仕事着だし!大臣同士の集まりに私なんかが…!!」
「大した用件じゃないわよ。殆ど兄妹の世間話だし」
「それでも…!!というか来るの何時!?ガレットのことだから本当にもうすぐなんでしょう!?もう行くから…!!」

夢主の赤い顔のままバタバタと忙しなく出ていく夢主をガレットはため息半分に見送った。大人しく出席すれば話が早いのに、と言う台詞は心に止めて。





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