×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

そんなこんなで初対面

話を聞く限りは補導さえすれば改心の余地あり。

「あんたに何がわかるのよ」

「さぁ、わからないよ。
私は天ちゃんじゃないし、天ちゃんみたいに長い間いるわけじゃない」

「…じゃあいつ死んだの」

「ついさっき」

正確にはわからないが。

「…は?」

「私が死んだのは感覚的にはついさっきだよ。
だから死後の世界は天ちゃんのが先輩だね」

「なんでそんなに簡単に受け止められるの…?
死んだんだよ?あんた。
もう家族にも友達にも会えないしやりたいことも出来ない!それなのになんでそんなに普通にしてんのさ!」

そうか。この子は寂しかったんだ。
資料に書かれていたのは賽の河原の平均年齢は5.6歳。同い年の友達もおらず、急に死んで家族からも離され、更にはこの子は最年長にあたって、よく子供たちの面倒を見ていたらしい。
1人で寂しくっても我慢して、小さい子を気にかけて、それでいて自分が年上だからって変なプライドを持ってしまって…

「ちょっ、なんであんたが泣いてんのよ…」

「…寂しかったんだね、天ちゃん」

「っ寂しくない!」

「本当に?
私だったら、自分もしんどくて辛いのに、一番上だからしっかりしないといけないなんて環境絶対に耐えられない
頼ってもいいんだよ。1人でなんて苦しいだけだよ」

天ちゃんは顔を歪めた。

「…頼り方なんて知らない。
私に頼る人なんていない!
なんで?親より先に死んだから親不孝って…
あいつらが私に何してくれたってのよ!いっつも私をストレスのはけ口にしてたくせに…!」

そう言って声を出して泣いた天ちゃんがこの時初めて年相応に見えた。

泣き止んだ彼女を澤村さんと地獄に送るため3人で地獄の門へ向かう。

白澤様には「閻魔庁には目つきのクソ悪いカスみたいな鬼がいるから気をつけてね!」と言われてしまった。
なにそれこわい。

門を抜ければそこは地獄。
天国は本当に自然豊かな地上って感じだったが、まさに地獄。
荒れ果てた荒野に響く阿鼻叫喚。

思わず顔を歪めた。

「んじゃ、閻魔庁向かうか。
なんだ日比野緊張してんの?大丈夫だって!
閻魔大王は割といい人だから」

閻魔大王「は」?

ギィッと扉が開けば生前に美術の授業で見たような地獄絵図の感じの部屋が見えた。

「この者を衆合地獄とする!」

「ひ、ひいいい!!!」

ズルズルと引き摺られていく男を無視して澤村さんが中央の大男へ近寄った。

「あれぇー?澤村くんじゃない!
どうしたの?」

「大王様お疲れ様です。
いやね、賽の河原から逃げた子を届けに」

「あぁ、烏天狗警察から聞いてますよ。
抜け出して年齢詐称してキャバで働いてたってやつですね」

大男の横にいた…恐らく目つきの悪さから白澤様の言っていた方だろう人が出てきた。
目付きが悪くて取っ付き難い印象だが、なかなかのイケメンである。

「あ、鬼灯様聞いてたんですね」

…どっちが大王?って思うくらいには閻魔大王であろう大男より、こちらの鬼の方が貫禄がある気がする…。

「それより、そちらの方は?」

「あぁ、紹介します。日比野」

「は、はじめまして!
本日より天国警察に配属されました日比野咲良警部補であります!」

ビシッと敬礼し、二人を見る。

「そんなに固くなくていいよ〜
咲良ちゃんね、ワシは閻魔大王だよ。
よろしく〜」

閻魔大王クソフレンドリーだな。もっと怖くあれよ。地獄絵図の怖さの4分の1以下だよ。

「閻魔大王第一補佐官の鬼神、鬼灯です。
よろしくお願い致します」

「まぁ、自己紹介はそれくらいにして、問題の亡者です。ほら天」

「…」

鬼灯様が天ちゃんに近寄る。

「反省してますか?ちゃんと」

その手には重そうな金棒が握られており、目つきの悪さも相まって恐ろしい。
天ちゃんは天ちゃんで一言も返さないし…

「…あの、鬼灯様!」

初対面でも多分、この人が賽の河原では保護のようなものだろう。

「資料読みました。で、私が事情聴取したんですが、天ちゃん、寂しくてこんなことしたんだと思います」

「…あんた…」

「ほう。寂しければこういうことをしてもいいと刑事のあなたが仰るんですか?それは、随分と甘い考えだと思いますが?」

こええ!!
でも、天ちゃんのために負けるわけにいかない。

「よくありません。
でも、強がって大人ぶってても、賽の河原って事はこの子はまだ子供です。それなのに下の子を気にかけたりして、自分は周りに頼れない。
この子がまだ子供だから賽の河原でジェンガ積みしてるんですよね?な、なら!
この子の保護者として気にかけたりするのは保護責任者としての義務ではないでしょうか!?」

「そうだねぇ…
その子、最年長で同い年もいないもんね…」

何故か閻魔大王がグズグズと泣いてしまった。

「なるほど。確かに一理ありますね…
いいでしょう。子供のしたことですし、今回は不問にします。
それに、そういう面としては私どもの責任でしたね
澤村さん、いい新人さんですねぇ…
特に上に臆することなく自分の意見を言えるところがいい。近頃の若者はそれさえもできませんから。うちに欲しいくらいの心意気です」

「ありがとうございます
警視に伝えときます」

笑って澤村さんが返事したが、これは、褒められたのか?

「まぁ」

続く言葉に、ビクリと肩を揺らす。

「少し甘すぎるようですがね…」

と顎に手をかけた。


拝啓
現世のお母さん。
地獄怖いです。

そんなこんなで初対面

やっぱりこっちの補佐官が閻魔大王なんじゃ…
そう思ってると手が止まってる閻魔大王に飛蹴りを食らわせていた。

*

Modoru Main Susumu