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彼の幸せ6

───日曜

「さ!まずは野菜とお肉の下拵えをしましょう!」

「はーい!」

「安室くんと美織ちゃんと蘭ちゃんはお肉を頼める?お料理慣れしてる人に頼みたいから!
スジもあるし…お野菜は私と子供たちと園子ちゃんでやるわ」

「分かりました。結構な量ですね…」

な    ん    で    お    ま    え    が    い    る

何故か安室さんがいるし、もうここ無法地帯だな。怖。

ちなみに沖矢さんは今日はなりを潜めててもらってます。だって哀ちゃんがかなり警戒してるから。彼がいないなら、という条件出てたので。

だからまぁ良いんだけど…

「…安室。ちょっとツラ貸せや」

口端をひくつかせて笑う松田。

「肉の下拵えを終わったあとでよければ」

いつもの爽やかな王子様スマイルを松田に向けた。松田自身は気持ち悪そうにしているが。
確かに降谷零としてはこんな風に笑わないもんね。

「あぁ蘭さん、そこ、そっちの向きよりこう切った方が組織を潰さず切れて良いですよ」

「あ!切りやすい!ありがとうございます安室さん!」

「安室さん〜切れたの多くなってきたから先に焼いちゃいたいんだけど」

まぁ気にしている暇はないので普段通り料理を進める。
本日はこの間食べたビーフシチュー。
事前に義姉さんは沖矢さんからアレンジを聞いているらしい。

「はい。もう入れていいですよ」

「え?でもまだあまり温まってないけど…」

鍋はあまり温まっておらず火も弱火だ。
これでは火が通るのに少し時間がかかりそうだが。

「肉の細胞が収縮するのは45度から55度と言われています。細胞が収縮してしまえば硬くなってしまいますから最初は45度未満で熱するのが硬くならずにいいんですよ」

「へぇ〜」

「まぁずっと弱火では時間がかかりすぎるので少しずつ温度をあげて焼き色をつけましょう」

ほんとこの人なんでもできるな…

本来の彼を知る松田も新一も誌面で見ていた私もこの時ばかりは同じ表情で同じことを思っていたに違いない。

「有希子お姉様〜」

「はいはいどうしたの〜?」

「…お姉様…?」

「コナンちゃんなんか言った?」

「な、なにも…」

まぁ、見た目若いし37って言われても違和感しかないから何も言うまい。あ、悲しくなってきた。

子供たち(本来の子供は歩美ちゃんのみだが)も包丁の扱いは慣れているようで野菜も綺麗に切れている。

「あ!そうだ!
人参は丸のままで!乱切りしなくていいわよ〜!」

「え?」

「ジャーン!」

「あ!おほしさま〜!」

「せっかくみんなで作るんだから型抜きしましょ!ハートもあるわよ〜」

と義姉さんがクッキーなどに使う型を数個机に並べた。
これで歩美ちゃんは完璧にそちらに夢中だ。

肉の方は焼き色も綺麗について安室さん様々である。

「こ、これなら真さんに出しても…!」

「カレシに出すのに丁度いいわね」

浮かれる園子ちゃんに哀ちゃんがため息をついて星にくり抜く。

「美織ちゃんも!ほら!」

「え、ちょっ私は別に…」

「一個くらいいいじゃな〜い💕」

と手渡された型をひとつだけ抜き火の方に戻った。

「うふふ」

なにやら義姉さんの笑いが聞こえたが…



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