異次元の狙撃手17
その夜、事件がまた進む。
ウォルツが姿を消した。
京都府警が言うには明日戻ると残し、裏口から消えたと。そしてグリーンは関西方面に目撃情報が上がっている。
その事から、まだ何かあると情報を洗い直すらしい。
「なんでウォルツが姿を消したのか、か」
「犯人がわかった?それとも…騙されてる?」
「…鳴ってますよ」
「え?」
鞄の中でバイブ音が聞こえる。
「ほんと…もしもし?蘭ちゃん?」
『美織さん!世良さん!目が覚めました!』
「真純ちゃん?…そう。よかった…」
前にいる沖矢昴の姿をした赤井さんも、ほっと息を吐いた。
「じゃあ、今日中に病院向かうわ…」
「それなら、貴方に頼みましょうか、送迎」
「ったく…このじゃじゃ馬娘」
睨みつけてくるのは陣平さん。
「えへへ〜ってことにしておいて。
ま、私のは怪我し損だったけど」
「痛み止めは?」
「もーった!」
───────────────
病院へ着くとそこは既に新一が到着していた。
どうやら真純ちゃんと話していたらしい。
「真純ちゃん、良かった…
コナンを守ってくれてありがとう」
「いやいや、蘭くんとの約束したからね」
「…話したぜ」
「そう、教育にこんな手段とるなんて、まぁ狙撃手らしいと言えばらしいかしらね…」
「実戦でしか練習できない、か」
その時、扉が開いた。
「おーい!見舞いに来てやったぞー!」
「元太くん声が大きいですよ!」
「お前ら…何持ってんだ?」
少年探偵団と博士が入室してきた。
その手にはダンボール箱と巻かれた紙。
「すっげえいいもんだよな!」「お姉さんを元気づけてあげようと思って!」
開かれたそれは夏休みの宿題、ベルツリータワー周辺の模型だ。
「へぇー、立派ねぇ」
「すごいなぁ!それ、君たちだけで作ったのかい?」
「夏休みの宿題なんだぜ!」
「まだ完成はしてないんですけど」
「お姉さんに見せたかったの!」
「ありがとう」
その姿を微笑ましそうに見る蘭ちゃんに園子ちゃんもすごい、と褒めている。確かに完成度は高く、かなりの物だ。
建物の形は違えどサイズ、配置は一致している。
まさにミニチュア模型。
チェックやサイズの調整は哀ちゃんがしてくれたららしい。横では面白がっているのか、哀ちゃんは新一に何もしてないけど〜と嫌味を飛ばしていた。
あとは色を塗るらしいが、写真が足りないらしい。
それを見た園子ちゃんはベルツリータワーに招待してくれるらしい。それも、再開はしてないから貸切で。
「…灰原、あの模型縮尺は合ってるんだよな?」
「えぇ」
新一は近づいて模型をのぞき込む。
それに倣い、私も近づけば、元太くんが「ここから見るとビルの高さが同じ!」と言う。
「元太!ちょっと見せてくれ!」
小さく手帳をちぎり、立てるように紙を乗せて新一に狙撃地点を伝える。
「平面じゃない…これは」
「立体での…メッセージ…」
「等脚台形…五角形…!」
「…行くわよ」
「えっ!コナンくん、美織さん、行かないんですか!?」
驚いたかのように聞く蘭ちゃんに「今日はやめとく!」と新一は返し、私もごめん、と一言謝って病室を出る。
「陣平さん!車!」
「はぁ!?」
「ベルツリーの方面!」
車に乗り込んで彼を急かす。
「時間がねぇ…!ジョディ先生?」
電話に出てスピーカーにすれば彼女の声が聞こえる。
『はぁいクールキッド新たな情報よ
大阪府警がスコット・グリーンを確保したわ』
「え?」
グリーンが確保。このタイミングで?と言うよりも彼がまだ大阪にいるのなら今から行われる犯行はありえない。
そして、FBIからの情報が、ひとつ。
ハンターが東洋人の男と暮らしていた、というもの。
「それがケビン吉野なら…!」
『それと、美織さんからのリクエストで二人の出入国履歴をみたわ。ケビン吉野はアメリカにいた』
「陣平さん早く!!」
「ちっ、サイレンつけるぞ!」
『どこへ向かっているの?』
「次の狙撃場所らしき所だけど、時間が無いんです」
『何か手伝えることは?』
「僕の推理が正しければまたベルツリータワーの展望台が関係してくるはずなんだ」
『ベルツリー…OK私達はそっちに向かうわ
くれぐれも気をつけて!』
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