異次元の狙撃手14
大学の法医学教室で解剖したところ、ハンターは驚くほど痩せていた。
シルバースターを取った頃とは別人のように。
「…」
携帯を取り出してジョディ先生へ電話をかける。
数分と待たず、通話が繋がる。
『もしもし?どうしたの?』
「今さっき、ハンターの司法解剖の結果等ジェイムズさんに送ってもらったんだけど、病理解剖もして欲しくて」
『!あら、奇遇。
クールキッドも同じこと言っていたわ。
それと、頭部のレントゲン写真も』
「コナンが?へぇ…」
『こっちで掴めたら、またクールキッドと貴女に連絡するわ』
「はーい。よろしくお願いします」
「なにか気になることでも?」
「少しね…確信はないですけど」
─────────────
翌日
「はい」
『どうも。白鳥です』
「白鳥警部?どうしたんですか?」
『急ぎで佐久間さんに伝えたいことがあって
昨日、ジョディさんから病理解剖の話をもらい、実施したところ、胃から大量の強力な鎮痛剤が発見されました。
そこで、頭部MRIを見たところ、脳幹近くに銃弾の破片が残っていました。今回でなく、恐らく8年前戦場で受けた銃弾のものでしょう。銃弾は摘出できても破片は見落としていた』
「その破片が脳を圧迫していた…?」
脳とは、非常に繊細なものである。
異物がひとつあれば異常をきたすことなど簡単なのだ。
『えぇ、視神経も圧迫していました。
普段から強烈な頭痛に悩まされていたでしょう』
「待って、視神経も?それってつまり、殆ど目が見えてなかった…ってことでは?」
『その可能性は十分にありえます』
「…分かりました。ありがとうございます。
あ、それと、スコット・グリーン、ケビン吉野の両名と、ハンターと関わっている人間の出国履歴、入国履歴って参照できますか?
狙撃できなかったのなら、きっとアメリカへの出入国履歴があるはずです」
急いで服を着替えつつ新一に電話をかける。
『みお姉か?掛けてきたってことは』
「えぇ、聞いたんでしょう?視神経」
『あぁ、ウッズの狙撃は、今回の犯人が行った…とすれば』
「でしょうね…ウォルツとマーフィーの居場所、高木刑事に聞いておいて。私もそっちすぐ行くから」
『了解。世良…の、ねーちゃんも居るから、
携帯のGPS投げるな』
「ん、了解」
通話を切って部屋を出れば、玄関にいるのは
「…なーんで二人がいるの!?」
「ま、運転手くらいに思ってりゃいいさ」
「行くんだろ新一んとこ」
「…はぁ…わかったわかった!安全運転でよろしく!」
「お前が言うな!」
車に3人で乗り込んで少しすれば新一から着信が入る。
「新一?どうした『マーフィーさんが東京に向かってる!送られてきたチケットで新幹線に乗ってるらしい!』はぁ!?」
列車など無防備すぎる。それも、いくら早く走ってるとはいえ、時刻表もあればいつごろどこを通過するかも分かりきっている。
『浅草に11時10分だ!』
「陣平さん、間に合う!?」
「ギリギリだな…!捕まってろ!」
アクセルを初っ端から踏み込み、車が加速する。
浅草方面。
その時だ、また携帯が震える。
「佐藤刑事…?もしも『美織ちゃん!?』!?な、なに…です!?」
『さっきコナンくんがマーフィーさんが狙われるって!』
「あぁ…!手短に話します!
チケットが今のタイミングで誰かから送られてきた、真犯人からの罠だとすると指定席でじっと居ている狙い、ってことになります
つまり、駅の見えるところからどこに居るさえ分かっていれば事前にスナイプポイントをつけるとこも可能…藤波森山のルーティーンのない二人だからこそおびき寄せたと考えるのが妥当!
今私も浅草に向かってます!警視庁で浅草を包囲してください!」
『なっ…わかったわ!
あなたも無理しないで!』
通話を切れば時刻は10時59分
「まーずい」
「くっそ邪魔だな!車ァ!」
「私らも車だからね!?っ、ボール…?」
「おいあれ新一じゃねぇか!?」
「まさか…徐行中に狙撃…私ここで降りるから!
二人はこのままサイレン飛ばして永代橋に!あの停車してるバン!」
「っおい!」
一瞬緩んだ車の速度に合わせて外に着地して新一を見つけると駆け寄る。「新一!」その時、パンっとボールが弾け飛んだ。
「おーい!マーフィーさーん!」
気づいた時には、真純ちゃんが新一を抱えて移動していた。確かに赤い何かが噴出して弧を描いた。
「真純ちゃん!っし、んっ…コナン!」
まだ、まだマーフィーは撃たれていない。駆け寄り車を見据えるが、2人に駆け寄る前に脇腹を撃たれた。的確に動きを鈍らせる狙撃に膝を着く。
その数秒後、レーザーポインターが掻き消え、黒いバンも走り出していた。
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