異次元の狙撃手7
夜の街を走る自身の愛車。
しかし運転しているのは、自分自身でなく前に座るサングラスを掛けた警視庁の刑事なのだが。
車内を静寂が包む。
「…ていうか、鍵どうしたの」
「お前のスペアキー、佐久間邸に置いてるの取ってきた。丁度諸伏もいたしな」
「…マジかよ」
「んじゃあどっちに帰る？
沖矢さんも住んでる他人の家である工藤邸？諸伏を住まわせてる自分の実家？それとも、俺ら誰かん家？」
「研二さん言い方が卑猥だよ！何をする気！」
「え？ナニ？」
「萩ィ！てめぇは今すぐ道路に捨てられてぇのか！」
ふざけてる場合じゃねぇぞ！と陣平さんが研二さんを叱った。
「わぁってるって！諸伏のこともあっからとりあえず佐久間邸な」
わぁ、お説教フルコースの予感！
「今回は仕方ないでしょ！
目の前で狙撃されてんだから！」
「だからってあんな危険な運転する事がいいとは限らねぇぞ。いっそ免停なれ。その方が安心だ」
「やだよ！今回は捜査の為って特例降りたんだから！」
「その特例何回目？
なんか警視庁緩くなぁい？」
自身の正当性を主張するも流されてしまう。
さてどうするか。
叱られるのは慣れてるからいいんだけど、まぁ悪いのは私だし、叱られるということは私のことがどうでもよくないという事だから有難いものだ。
「なぁにほかの事考えてんの？
事件詳細はかるーく聞いたけど、あんまり首突っ込むなよ。FBIとのつながり云々は分かるがお前は一般人だろ？
危険からうまく逃げられるように過ごせよ。
危険に合うのは義務じゃねぇんだ」
ぽんぽん、と頭を撫でた研二さんは呆れたようにそう忠告した。
何度目かの私の無茶を何度も仕方がないと笑う研二さん、何度も何度も叱ってくれた静かに車を走らせる陣平さんに、どこからともなく助けてくれる死んだ事になっている景光さん、私を中心にいろんな人を巻き込んだと思っていて罪悪感を覚えている本当は優しい零さん、遠くから私たちを見守り、時折新一や私に助け舟を出してくれる秀一さん。
勿論、彼らの目的と利害が一致しただけの関係だったが、そんな彼らに支えられてるんだと、こんな時なのに感じてしまった。
「おい何笑ってんだ。
そんなに説教がうれしいのか？」
「う、嬉しくないよ！馬鹿じゃないの！？」
「え〜嬉しいんじゃないの〜？
ドM？？」
「は？意味わかんないんだけど。
研二さん何言ってんの？」
「冷たい！俺にだけ冷たい！」
先の静寂が嘘のように騒がしい車内で恐怖の自宅へ帰るのだった。
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