異次元の狙撃手2
冷や汗をかきながら
「ば、バカヤロー!
これくらいの高さどうってこたァねぇ!」
強がっちゃうんだよね。この人。
英理ちゃんの前でも蘭ちゃんの前でも。
それが彼のいいところでもあるんだが。
「じゃあ床見ても平気よねぇ?」
あ、なるほど。
床ァ?と疑問符をつけながら小五郎くんは下を見た。そこはガラス張りで真下が見える仕組みになっている。高いところが得意なものは楽しいかもしれないが彼には苦行だろう。
案の定叫びながら走り去ってしまった。
「あーあ…」
「ごめんね園子」
「いいのよ〜
騒がしいのはいつものことよ!」
と二人は絶景を見る、と窓際へ戻って行った。
予告編位は頭に浮かぶが、確か蘭ちゃんの周りで第一の狙撃が起こっていたはずだ。
園子ちゃんの高笑いに呆れてる者もいるが、楽しそうでなにより。
周囲を確認しているが、何も無いようだ。
少年探偵団は夏休みの宿題に模型を作るようだし、平和そのもの。
全く、「映画」はいつも日常を壊す。
「Their the Yellow Building!」
と英語が突然聞こえてきた。
そちらに気を配ったのは私だけでなく新一も。
「Oh wow! it's Amazing!」
「I Seen!It is a very cute building!」
英語で夫妻だろう二人に説明する壮年の男性。
建物の説明では築30年と言っているがそこそこの古さに改築を勧めたくなる。
男を見れば薄気味悪く笑っている。
ふっとなにかに気づいた新一は後ろを振り返った。が、哀ちゃんに聞かれ、目を逸らした。
前を向けばキラリと何かがしたのビルの屋上で光っている。
まさか、見つけた。のかもしれない。
が、どこを狙っている?この周囲であることは確か、なのに…
バンッと破裂音と共に銃弾が真っ直ぐ発射された。
パリーンッと真横のガラスが割れ、後ろのモニターを割った。
ガラスとモニターの間にいた薄く笑っていた男は血を吐き、倒れた。胸には銃痕。
蘭ちゃんの悲鳴がフロアに響く。
くそっ…!もう少し早く見つけられれば…!
新一は身を低くして哀ちゃんを転ばせる。
「狙撃よ!全員伏せて!」
そして楽しいはずのタワーの第一展望台は地獄と化した。窓辺にいた夫妻に子供たちも伏せ、私は蘭ちゃんや園子ちゃんに覆いかぶさる。
ふざっけんな。
マジありえない。
が、他のものは悲鳴をあげエレベーターの方へ駆けて行った。たしかにこれ以上の狙撃はなかったように思えるがアレでは二次災害を引き起こしかねない。
立ち上がった新一は窓の外を凝視する。
「見つけた?」
「ああ!やっぱりあそこだ。
先行くぞ!」
「私はあとから追うわ。
スケボーのが早いでしょ」
そう聞くやいなや蘭ちゃんの無事を確認して博士の方に走り寄り、キーを受け取るとエレベーターへ走っていった。
「あ!待って!」
それに気づいた蘭ちゃんは声を上げた。
「大丈夫。私が追うから、蘭ちゃんは子供たちをお願い」
彼女が頷くのを確認すると、客の誘導から離れているスタッフを探して
「非常階段はありますか?
佐久間美織と言います。警察からの指示で下へ降りたいのですが宜しいですか?」
「あぁ!わかりました!
こちらへ!」
全く。あまりこの手は使いたくないが致し方ないだろう。
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