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5

どうでもいい過去の考察。
あなた達はあの場所に立つ資格が生まれ持ってあるんだから、そんなこと気にせず、

「私のことは壁だと思ってくれて構いません。
余りの暴投でない限りは後ろには逸らしませんから」

ただただ勝つことに貪欲であれ。
とまぁ燃料でも投下しておこう。
こんな、『女』に言われるのなんざ屈辱だろうから。

扱いやすい野球小僧は好きだよ。

「女相手に本気で投げれるかよ…
それなら壁当ての方が────「なら試してみますか?」あ?」

「待て咲良、お前ブランクもあるだろう。
あんまり────」

滝川さんが私を案じて止めようとするが、いやー、私性格が悪いもんで。

「大丈夫ですよぉ滝川さん。
高校生の球なんて大したことないですから」

「あぁ!?」

流石青道高校エース。
プライドはきちんとお持ちのようで。

そうそう、投手はプライドが高くなけりゃね。

「…1イニング分、私が1球でも取れなければ監督には私から進言しますよ。
『女の私にここで壁役は無理だ』って。
あぁ、勿論絶対に取れない暴投のボール球とかはノーカンですけど」

受ける?受けない?
こんなわかりやすい挑発。

あら、1人だけ笑ってんな〜

「いいぜ、座れよ!
怪我しても文句はねぇな!?」

「勿論。
肩あったまってからでも大丈夫ですよ。
ピッチャーの全力を捕れなければキャッチャーにはなれませんからね」

「このやろ…!」

心配そうな滝川さんに見ているだけの1.2年生。
いや、御幸くんは私と同類だから面白そうにニヤニヤしているし、礼さんは呆れたように笑っている。

プロテクターを着けてベンチへ腰を下ろす。

「いつでもどーぞエース様
肩温まったら言ってください」

ミットは使い込んだ物。
プロテクターは部のものだが大きくもなく小さくもない。

エースは控えの3年生に投げ込み肩を温めている。

「…座れ」

「はいはい」

立ち上がって腰を下ろす。
投手としてのプライドがあるなら彼はキチンと『本気』で投げてくるはずだ。

ワインドアップでゆっくりと投球フォームに入り、こちらを睨めつける。

パァンッ

音を立ててミットに収まる硬球。
ビリビリと手にボールの重みが伝わる。

でも、ちゃんと姿勢は崩してない。
きっちり受けたし、とボールを返す。

「ナイッピーです」

パンっと音を立ててグローブに収まる。
あ、舌打ちした。

「…まだ1球目だ」

彼のボールはキレがある。
いやぁ、凄いなぁ…こんなストレート、試合で受けたい。

2球目、3球目と進んでいき、1打席が終わる。
2打席目。

またワインドアップ。
しかし、手元をしっかり確認してから振りかぶっていた。

クンッとボールが打者手元程で沈んだ。

ズザッと少しの砂煙を上げてミットに収まる。
へぇ、フォークか。

「…へぇ」

と呟いたのは誰だか。

結果から言って私はキチンとエースのボールを受けた。
プロテクターを外して肩で息をするエースに向かって歩く。

「私は別に軽い気持ちでここにいるわけじゃありません。
…私がここにいる誰よりも甲子園に執着しても、ここに居る誰よりも野球が上手くても、私は『私』である限りあの扇の要に立つことは絶対に有り得ません」

その言葉にエースである男は息を呑んだ。

「だから、私は私が甲子園に行くためなら何だってしますよ。
あなた方には甲子園に言ってもらわないと困るので」


*

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[mokuji]