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髪は趣味じゃない短いまま。
似合わない微妙な長さのスカート。
似合いもしないのに成長した胸は押し込めて。
リボンはイヤだと許可を貰ったネクタイを締める。
「…行ってきます。母さん」
中学から住んでいる家を出て徒歩10分の駅に向かう。
1時間ほど座って電車に乗っていればいつの間にやら県境を超えて居た。
そういえばあの人はDVDで私の試合を見たと言っていたな。どこで出回っているのやら。
今日から通う高校の最寄り駅は自分と同じく制服を着た人間で溢れている。
5分ほど歩き校門をくぐる。
門の横には『入学式』の文字。
事前に知らされていたクラスに入り席に着く。
地元から遠く離れている為、知り合いは居ない。
強いて言えば、小学生時代の対戦相手とかがいるかもしれない程度。
「ねぇねぇ、あの人かっこよくない?
どこ中かな?」
「ほんとだ〜…県外かな?」
「どっかの部活の推薦組とか?」
「話しかけてみようよ」
こういう視線にも慣れた。
外を見て小さくため息をこぼした。
「はい。席に着いてください。
体育館へ移動しますから着いてきて」
恐らく担任でもなんでもない案内だろうに私をここ、青道高校に呼んだ麗しい女教師、高島先生が先陣を切る。
「礼さん」
「…来たわね」
「居心地が悪いです」
「仕方ないでしょう?
あなた目立つんだもの…にしてもまた髪短くしたかしら?
その状態で上がネクタイだから本当に男子にしか見えないわ」
「生まれてくる性別は間違えましたよ」
「えぇ!?女ァ!?」
後ろからさっきの女子の叫びが教室にこだました。
「…期待させてごめんね」
苦笑して体育館行きの列に加わる。
「…いや、別に女でもいいわこの際」
と聞こえたのは、空耳だと信じたい。
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