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翌日朝の事だった。
始発で電車に乗り朝練に向かう。
7時過ぎに朝練が開始されるからそれまでにマネージャーは持ち回りで事前準備をする。
今日は本来貴子先輩の番だが、やり方や準備を教えてもらうために1年は全員だった。
当番の時以外は7時に間に合いさえすればいい(というかマネージャーは朝練参加必須ではない)が、当番の時は基本6時半過ぎ頃に登校し準備に入るとのこと。
静かで空いている電車ではほとんどが寝ている。
駅には間…まぁ多分ギリギリだろう。
最寄りで降りて直ぐに駆ける。
朝練があるだろう運動部でもまだ早い時間だからか、人通りは疎らだ。
微妙な時間帯。
裏門から入りマネージャーの更衣室に滑り込む。
肩で息をしていたからか貴子先輩が苦笑して寄ってくる。
「す、すみませんギリギリで…」
「大丈夫。
ちゃんと朝に連絡くれてたしね。
先行ってるから着替えたら水道来て。多分準備自体は30分かかんないから次からもっとゆっくりで大丈夫よ。
今日は早めに呼んだだけだから」
「あ、はい…」
始発でも間に合わないし、あぁ…一人暮らしも視野に入れないとなぁ…
いや、既に一人暮らし状態ではあるけど。
ため息をついて手早く着替え、水道へ向かう。
「よし、じゃあ始めるわよ。
まぁ基本は放課後とそんなに変わらないわ。
ドリンクを放課後より少なく…まぁジャグ3つくらいで大体足りるわ。
作って、ボール出しで終わり。
朝イチは大体みんなベーラン…ベースランニングでその後にボールを使って軽く練習するの」
ね?そんなに時間かからないでしょ?と貴子先輩が笑うも慣れていない梅本さんや夏川さんは苦笑いだ。
「貴子先輩。
2人が慣れるまで私も2人の時出てもいいですか?」
「え?それはもちろんいいけど…大変よ?」
「私も仕事早く覚えたいので大丈夫です。
それにどうせ朝練の間に呼ばれたりするかもしれませんし、何より放課後の部活の間マネージャー業ができない時もありますからその代わりです」
「そう、わかったわ
慣れてる人がいる方が安心だし頼んだわね」
「ありがとう有澄助かる〜…!」
「いーえ!
朝練始まるまでちょっと走ってていいですか?」
「始まるまで何も無いからいいけど…」
「ありがとうございます」
グラウンドの外周をジャージのまま走る。
その途中寮の方からは数人出てくる。
毎朝のランニングは日課で少しでも軽くでも走ることで体力の衰えは防げる。
──────────「なぁあれ、マネージャーじゃねぇか?」
と言ったのは誰だったか。
みんなが見る方を見れば咲良が外周を走っている。
ベンチの方には既にジャグやボールも出され準備は終わっているらしい。
もう5分もすれば監督が来る時間でベンチ裏で速度を緩めた咲良は数m歩いて隅に置かれたボトルを取り口に運びながら鋭い目をして汗をぬぐう。
「有澄〜!もうすぐ始まるわよ!」
「っはい!」
そのまま藤原先輩に呼ばれた彼女はマネージャーの方へ向かって行った。
あいつは、多分だけど選手を諦めちゃいない。
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