語り部に 微かな手がかり いざ掴まん 燃ゆる心を 鎮抑えて
「で?事件の方は?」
「…まぁ…」
コナンはそう言えば、と目を泳がせる。
先日、資料を渡された時もこの大人達はいたはずだ。
猫被るの忘れた…と口を引きつらせる。
「どうしたんですか?コナンくん?」
沖矢の問いかけに考え込む。
「…まぁいい。それで?
僕達も暇じゃない。進展がないなら先を進んでほしいんだが?」
「うっうん…それなんだけど、事件自体はおかしな点はないと思うよ。
一番まずいのは最初の事件。犯人が捕まってないってことと、捜査資料を見るにまともな捜査をしてない。24年前じゃあ今の刑事さんたちも多分関わってないし…」
「あぁ、当時の捜査資料も中途半端。
捕まえる気はなかったんだろう」
面倒だったからか、あるいは…
「分かることは、ここ見て」
コナンの指した容疑者リスト。
五人の名前が連なっているが、四人目と五人目の間にどうにも空白がある。
「…?一行空いてますわね…」
「普通は容疑が外れたとしても修正なんかしない。そんなことすれば偽装工作がまかり通っちゃうしね。考えられるのは」
「圧力、か」
「だとしたら犯人は警察にとっても国にとっても犯罪を犯した事が不都合になる人間か…」
「まだ消された人物が犯人だとは限らない」
「渋谷さんの言う通りです。
仮にXとして、その容疑者Xが不都合があったから消された、ということも憶測でしかありませんから」
沖矢が窘めるようにそう言った。
「…とりあえず、僕はこの事件、捜査資料以外からも調べてみるよ。母さんとか父さんなら知ってるだろうし…」
「あぁ、そっちの調べ方については一任する。安原さんも別方面から調べてみてください」
「了解です」
「でも、殺人を揉み消すやなんてそんなことあるんやですね…」
「まぁ、警察も総理大臣も神じゃない。人間だ。
自分の欲望と利益で何かをすることもあるだろうな。聖職者の教師だって、それこそジョンと同じ神父だって、完璧はありえないさ」
滝川の妙に説得力のある言葉に、ジョンはまた眉を下げた。
「ま、まぁ、とにかくそこまで昔の事じゃないから洗い直すことは出来るよ。
当時の被害者の死亡推定時刻も正確じゃないから範囲は広くなっちゃうけど、目撃者とか近所の人は散々警察から聞き込みされただろうから覚えてると思うよ」
「そうだね。なら、僕はこの辺りの不動産屋さんとかを当たろうかな」
「でた、ポロッとこぼす誘導尋問」
「やだなあ、人聞きが悪いですよ滝川さん」
尚も笑顔な安原に滝川は顔をひきつらせた。
語り部に 微かな手がかり いざ掴まん 燃ゆる心を 鎮抑えて
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