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おかえり

事務所を出て駅に向かう与謝野と波香。
彼女の手には未だにぬいぐるみが抱かれており、片手は与謝野と手を繋ぎ、歩く。

「この時間は人が多いからねェ、手ェ離すんじゃないよ」

素直にはい、と返事した。
電車に揺られたどり着いたのはそんなに遠くなく横浜内のファミレス。

「おいしいかい?」

ニコニコと両手に顎を乗せて波香を見る与謝野は既にパスタを食べ終えており、食後のデザートであるバニラアイスが運んでこられていた。

「おいしいです」

と波香が返せば与謝野は子供が敬語なんか使わなくて良いンだよ、と苦笑した。

「ごちそうさまでした」

手を合わせてお子様ランチのハンバーグを食べ終えれば与謝野が「これも食べな」と手元にあった先までカチカチだったバニラアイスが手渡された。

「!」

少し柔らかくなったバニラアイスを目を輝かせて見る波香は与謝野の顔を見る。

「ほら、食べな」

と促した与謝野を見て、バニラアイスをゆっくりと食べる。

食べ終われば与謝野が腕を引き、大きめの商業施設の子供服売り場に連れられた。

「うん、これも可愛いねぇ…こっちも…波香!これも着てきな!」

「…与謝野せんせ、疲れた…」

「おや、そうかい…時間も頃合だね…それじゃあ全部買ってそろそろ帰ろうか…」

波香は三着目頃から値札を見るのをやめた。
ずっと付いていた女性店員は喜んでそれらを紙袋に入れ店外まで見送りまでしてくれた。

電車に乗るも、帰宅ラッシュと重なり満員を避けるために特急でなく普通の電車で最寄まで戻る。

その頃には今日一日歩き回り、更に走りもした波香はこくり、こくり、と眠気に必死で抗っていた。

─────────────

敦は自宅であるアパートに終業後戻る。
空腹ではあったのだが、国木田が気を利かせたのか夕食を奢ってくれたのだった。
本当にいい先輩を持った、と感動していた。

七時を回った頃だったか、部屋の扉が叩敲(ノックされ、開けば与謝野医者、と波香が立っていた。

「あんまり遅くなるのもダメだからねぇ」

と波香を送ってきたようだった。

「あ、ありがとうございます!」

と礼を云えばガサリと数個の紙袋を押し付けられた。

「波香の服だよ。女の子なんだから色々着せてやンな」

中を見ればしばらくは着回しできる程の枚数の服が入っており、敦は目を見張った。

「で、でも!」

「アンタの入社祝いも服だったろう?それと同じさ」

「いや、でもこの量は…」

「アンタのためじゃない、波香の為さ
遠慮すンじゃないよ。それに、妾からだけじゃなく社長からも含まれてンだ」

と云われ、去って行った。
その与謝野の後ろ姿に向かって

「…あぁもう…ありがとうございます!」

敦は声を掛ければ与謝野が後ろ手に手を振った。

「まぉいいや…
波香おかえり」

敦が笑って彼女に手を差し伸べた。
数週間ぶりに云われたその言葉は、訓練(カリキュラムから帰ってきた部屋で敦が掛けてくれた言葉であった。

手をとる前に靴を脱いですぐに敦の腕の中に飛びついた。
軽い幼子の体くらい敦でも受け止められる。抑々数週間前まで何度となく抱き上げ、受け止めていたのだから。

「ただいま…!」

*










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