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住むところ

「波香」

「…怒った?」

「…怒ってないよ」

不安げに敦を見る波香に苦笑した。

「仕事も見つかったし、僕がお前に戻るように云う理由もない」

「…でも、住むところ…」

「敦君の家に住めばいいじゃないか」

にっこり笑った太宰にキョトンと波香は彼を見る。「寧ろどこに住むつもりだったのさ」と太宰の問いに波香は「…探偵社を間借りできればって」という答えに大人達はため息をつく。
聡明すぎるのも考えものだ。

「うちに住めばいい、というか抑々そのつもりだったんだけど…」

「…いいの?」

「波香を一人に出来るわけないだろう?」

「うん…!」

微かに笑った彼女に空気が和らいだ。

「却説、それじゃあ話は纏まったところで…」

と太宰が扉へ向かえば国木田が寸でのところで首根っこを掴んだ。

「どこへ行く気だこの阿呆」

「…ちょ、ちょーっとそこまでお仕事にぃ」

「俺が代わりに行ってやろう。
貴様の仕事はそこに山積みだッ!」

「ちょっと調べ物に…」

「あぁん?」

「…敦君、書類の書き方を教えよう」

「この流れでですか?」

困ったように眉を下げる敦を見て波香が手を上げた。

「わたしがやる」

「へ?」

国木田は瞠目し、片膝をつくと波香に視線を合わせた。

「お前は働き者だな…太宰も見習え!こんな幼子よりも貴様は…」

グチグチグチグチと続く国木田の口撃に太宰が両手をあげて降参した事で、珍しく国木田の予定通りに今日は進みそうだ。

*










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