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捜索












数分前に国木田くんからかかってきた電話。

『太宰がまた自殺未遂だ!』

その声色に焦りの色はなく、むしろ怒りが込められている。それもそのはず。
太宰治は自殺が趣味と言うほどで、この自殺未遂も何十、いや何百回目だと言われるほど。

しかし、そんな数こなしている自殺は一回も成功したことは無い。ただの一度もだ。

それはさておき、どうやら今回は入水自殺らしく、突然川へと身を投げたらしい。浅ければよかったものの、ちょうど良い深さで流され行方不明。

はぁ、とため息を付けば扉の先から「森」と私の名を呼ぶ探偵社のトップの声が聞こえた。

「はい」

「太宰の捜索がてら、虎探しに手を貸してこい」

「わかりました〜
じゃ、行ってきます」

つい先程終えた報告書やらを社長に手渡し、膝で寝ていた猫をソファへ下ろし廊下へ向かう。半年ほど前まで着ていた甘ロリから漸く少しでもフォーマルなものに変えられたことと、外出調査ということで丁度今日それを着ていてよかった、と息を吐いた。

なにもあの甘ロリドレスは私の趣味ではない。
いや、可愛いとは思うし、自分自身20年近くも買い与えられそれだけを着ていたので似合っていないわけでもないことは分かっていた。しかし着続けていたのは、あれは父の趣味だったからだ。
だが、それでも前職ならばそれが目印になり不都合はないようにもあったが、そこを出れば場面に応じた衣服を着用することを求められる。

ロリータ服が悪いわけじゃない。
ただ単に、私の趣味から外れてしまっただけである。

バイトのナオミや、与謝野先生達にロリータ以外の店を教えてもらい、付き合ってもらい半年ほどかけて漸くロリータを封印できるほどの衣服を確保出来たのだ。

というわけで、今現在河原を歩いている。

「はぁ、どこに行ったのよ……」

太宰、と呼びかけて出てくるのであれば国木田くんは毎回困ってはいないだろう。
ふと、川を見れば棒が2本流れていた。……いや、棒と云えば語弊がある。足だ。右と左の両足。見覚えのある色のズボンに靴。それが下流に向かって流れてゆく。はぁ、とゆっくり息を吐き出し河原へ降りようと一歩踏み出した。

しかし、バシャンっという水音に歩を止めた。
バシャバシャと水しぶきが上がり、それを見ていればとぷんっと沈んだ足の主を誰かが引き摺りあげた。よく見ればみすぼらしい服を着た少年が探し人、太宰に声をかけている。あわあわとしている様は少し面白くてついつい、放ってしまったが上体を起こした太宰の言葉に固まっていた。
流石に可哀想になり河原へ降りて声をかける。

「何をしているの莫迦太宰」

「その声は私のアリスじゃないか!」

「あなたのじゃないわよ莫迦やろ」

「えっと……」

戸惑うような少年の声が私たちに届いた。

*

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