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元部下の再会












空気が澱む地下。
明かりは点々と付いてはいるが、外からの光は当然差し込まない閉鎖空間。
そこは多くの人間が痛めつけられ、阿鼻叫喚し、精神を壊し、世界を恨むほどの苦痛を味わう場所。
生きている事を後悔し、生まれてきたことを悔やむ場所である。

壁や床どころか空間そのものにそれが染み込んでおり、鉄臭い匂いやどこか焼けるような匂いが空間に充満している。

「さぁって、お迎えに行かなきゃね……」

「どこへです?」

背後から声をかけられ、苦笑して振り返る。

「処刑場……かな?」

「行かせません。さすれば太宰さんも逃げられぬ」

コォッと空気が渦巻けば鋭い刃がアリスを襲う。

「私がここにいるってことは」

トンっと軽い音を立てて壁を蹴る彼女に芥川は訝しんだ。

「首領が逃がしたのでは、とか考えない?
相変わらずの独断専行……まだまだね」

ゴゴゴゴッという鈍い物音が地面を揺らせばアリスと芥川の間を壁、天井、地面からせり出たコンクリート造りの壁が立ちはだかった。

「ごめんなさいね、龍之介」

「まっ……! くそっ……!」

羅生門で壁を粉々に砕けばそこには既に彼女の姿はなかった。
地下の拷問場、処刑場は既に芥川でさえも殆どの全容を把握していると思ってはいたのだが、どうにも知らぬ事もあるようだ、と残骸を見下ろし顔を歪めた。
拷問部隊は尾崎紅葉の直下の部隊であり、その部隊でさえも口を割らぬ場合は幹部である太宰治が行うか彼女、森アリスが指示を出していた。勿論、太宰に至っては四年前までで、アリスは一年前までの話であるが。
芥川は現在遊撃隊長で、黒蜥蜴の直属の上司。
つまり、自身らの強力な暴虐性で敵組織をこの「拷問場」へ連れてくるまでが仕事である。
この建物の全容を知るのは幹部又は、幹部に準ずる地位権利を持つ人間だけだ。

「……逃げ切れる、と思うな……」

お嬢……いや、アリスさん。

視線を鋭くさせて芥川は踵を返した。

*

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