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家で一人でいると昔からそうだったかのように感じる。


そんなことない。
いつだって誰かがこの家にはいたのだから。


夢を見た。


顔は見えないけれど、私はその人を母と呼んでいた。
おかしい。私の母はブロンドヘアーの銀幕のスター。
なのに母と呼ぶ人は黒髪でアジア人。
日本人だと思う。
なぜなら私が日本語でその母へ呼びかけていたから。

「お母さん」

と。

日本語に囲まれて育ってもいないしその言葉を聞くことなんて滅多にない。
ここはアメリカ、ニューヨーク。
耳に触れる言葉は英語ばかり。

でも何故か理解していた。
組織には日本人だっている。
時々、ママも日本語を話している。
試したことはないけれど、私も、日本語を話せる。

ママは昔に比べて家によく帰ってくるようになった。
それでも仕事は忙しいのだろうが。

でも夢の中の母は違った。
煩い、泣くなと喚き散らし、自身で追い出した父親の幻影に取り憑いている、憐れな女。

私がお母さんと呼んでも忙しいと言い、彼女はこちらへ視線をやる。

ますます、父親に似てきた

そう言い遠くへ立っていた。

まって、まってお母さん。
私にはお母さんしかいないのよ。

コツリと米神に硬い感触。
夢の中の私は犯罪組織なんか絶対に接点などないのに、どこから手に入れたのか。
でも、この感触と形を、私は知っている。
昨日だって母は持っていた。

ハンドガン。
自動小銃。

引き金に掛かった指が手前に引かれる瞬間


「アリス!」


バッと目を開く。


「どうしたのアリス……?
真っ青よ……怖い夢でも見た?」

「ママ……」


そうだ、私の母はベルモット、シャロン..ヴィンヤード。
あんな、憐れな女ではない。
それに、銃で自分の頭を撃ち抜いたのも私じゃない。

そうは思っているのに、怖くなった。


「ママァ……うっ……っ……ひうっ……」

「あらあら、大丈夫よ。
もう何も恐くないわ。ママがいるもの」


抱き上げられ母の温もりを感じる。
不安を消し去る為に抱きつく腕に力を込める。
と、言っても幼児の力などたかが知れているが。

大丈夫だと言い続けるこの母の声を聞きながら、奇妙な感覚に蓋をした。


どこかで感じるこの既視感


ありえないありえない!
前世なんてもの。
ありえないわ!

私がなぜ日本語ができるのか、なんて考えたくもない!


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