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あの事を思い出しても私が急に変わっては不信感を煽るだけだ。

誰にも死んで欲しくない。

普通の感覚でいえば、組織は悪側に立つ。
目的のためであれば、人の命を平気で奪い、騙し、強奪する。

しかし、ここで過ごした5年という月日は何も知らなかった頃の私の感覚を麻痺させるのには十分すぎる時間だった。

頭では分かっている。
でも、悪いだけの人ではないってそう思ってしまう。

ジンだって、嫌がらずに私の面倒を見ていたし。勿論、上司のベルモットの命令(もしかしたらあのお方のかも知れないが)だからだろうが。

悪いだけの人ではない。
絆されたからなのか、でも、この組織は黒だ。
染み付いた硝煙の匂い、火薬、何をとっても、真っ黒。

少なからず、世界のために正義を志した、彼らを殺す。でもそれは組織からすれば正義。

以前の私ならば、あちらが正義だと理解して、
今の私ならば、こちらが正義だと思っている。

板挟みになった私はどちらに傾けば良いのか。

だから私はこう言うの。


「ママ、私、組織の人間になりたくない」


母さんが目を見開いた。


「どうしたのアリス?」

「誰の敵にもなりたくないの
みんな好き、でも人は殺したくないの」

「人なんか殺させないわ
ママが、ちゃんと────」

「それでも」

「その事はもっと後に考えましょう
今は寝ましょう? 大丈夫。大丈夫よ」


正義の定義を示せない


私が寝たと思ったママはこう言った。


「まともに育ったことを喜ぶべきか、憐れむべきか」

と。


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