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どんな辱めだこれは



「いいいいいやぁあああああ!!」

「もー! 美音! わがまま言わないの!」

「いやぁあああ! ひとりでるすばんするもん!」

「だめよ! ちゃんとママが送り迎えするでしょう?
お留守番じゃなくて、小学校に上がる前にみんなとお友達になる練習よ!」
「くっ……」

さて、現状を説明しよう。
只今の時刻は午前8:13。
そして私は生まれて三年の月日が流れ、幼少期に通う鬼門。
そう、幼稚園へ連れていかれようとしている。
勘弁してくれ。

「ぎ、ぎむきょーいくじゃないからいかなくてももんだいないでしょ!?!?」

ここまで喋れるようになった私は平仮名発音ではあるが主義主張をはっきり表せるようになった。

「よくそんな難しい言葉を……」

ため息をつく母、弥生に罪悪感は積もるがここだけは譲れない。
何しろ精神年齢では私は25歳。
幼稚園など通えば私の精神年齢など誤魔化すのは難しい。
今までは映画監督、それも天才と呼ばれる父の娘なのだから〜、と誤魔化してはいたものの本物の子供に紛れればおかしいのは一目瞭然。

いくら父、春彦があの、工藤優作と並ぶ推理力を持ち合わせていようともプロである幼稚園教諭の目をごまかすことは不可能に近い。

あとこれは単純な話だが、25にもなるのに20以上も年下の子供と一緒にいるなど耐えられない。主に心が。
むしろ幼稚園教諭の方が歳が近い。下手をすれば母よりも。若ければ22,3だろうし、つまるところ年下に世話など見られるのは辛い。
仕方ないと割り切った母、弥生や叔母の有希子、父の春彦でも下の世話や食事の世話の間心が辛かった。

気分は前世の─────
いや、老後の介護をされている気分だった。

とにかくこれ以上一人の時間を抜くわけにはいかない。
断固拒否。

「美音〜幼稚園に行ったら貴方が欲しがってたパソコン、買ってあげるわよ〜」
「!?」

卑怯だ。物で釣るだなんて!
小児にお小遣いなどという概念はない。
パソコンさえあればもっと色々なことを調べられる。

「ふふ、納得したようだし交渉成立ね」

妹に似てるその綺麗な顔で勝ち誇ったようにウインクをこちらへ飛ばす様子を、およそ3歳児とは思えない憎々しく、目に映る母の様子を苦い表情で見つめるしか出来なくなった。
幼稚園という名の地獄に向かわざるを得ない。

どんな辱めだこれは

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