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自己防衛は大切です



「いっつつ……ねぇ、玲香起きてる?」

「起きてるよー……ったく、まぁたこれか……」

おはこんばんちわ。美音ですどうも。
埃っぽい廃屋の真っ暗な部屋のど真ん中のポールに手錠で両手を繋がれてます。
裏には玲香も座ってる。

まぁ端的にいえば、誘拐です。
玲香は城ヶ崎財閥の長女でお嬢さまだから昔からこういうことは良くあったらしい。

「巻き込んじゃってごめんね〜
多分うちのが私につけてるGPSを……って、そこにぶっ壊されてるわ」

「なにそれ知りたくなかったな?」

ガチャッ

「よう城ヶ崎玲香ちゃん?
わりぃな痛い思いさせて〜
それにお友達も〜……って君も見たことある顔だねぇ?」

「……関係ございませんでしょ? 気持ち悪い顔、私の友人に近づけないでくださらない?」

「さっすが財閥お嬢様?
お話通り気が強いねぇ〜?」

「おい、こっちのガキ白樫だってよ」

「白樫ってーと、聞いたことがあるな
城ヶ崎のお嬢様はあの天才監督のお嬢さんとオトモダチってな」

あーあきーづかれちゃった。

「つまりこいつも相当金づるになってくれるってわけだ?」

「まぁ、お電話してくっから大人しくお待ちくださいね?」

ぎぃっと嫌な音を立て扉がしまった。

「……はぁ、めんどくさ!
玲香、ヘアピンある?」

「あるけど……何すんのさ」

と後ろ手に玲香がヘアピンを渡してきた。

「ピッキング」

「はぁ!? なんでそんなんできんのアンタ!?」

「父さんに教わったの」

まさか私がこのセリフを使うなんて……
今後のことを考えれば『ハワイで親父に教わった』って使うハメになりそう。

「あの人ほんと馬鹿なの?」

「多分馬鹿なんでしょーよっと」

ガチャっとこちらの手錠を外し、続いて玲香の手錠を外す。

「……ほんとに外しちゃうし……」

「くそ古いタイプだしちょっとコツ掴めばこれくらいなら外せるよ
新しいやつだったらやばかったね」

「で、どうやって出る?」

「私の携帯も取られてるしねぇ〜……」

と上の方を見ると小さな窓がある。カーテンが引かれていたために気づかなかった。

「子供なら通れそうかな……」

「足場作んなきゃいけないしその間に戻ってこられたらやばくない?」

「まずバリケードから作るよ
大丈夫。策ならあるから」

割とどうにでもなるもんだし、腕時計の時刻も下校時からそんなに経ってない。
つまり東京から出てはいないだろうしそんなに遠くない。

と、言うと玲香はため息をつくも

「じゃああんたに任せるよ
天才の娘さん」

「財閥お嬢に言われると頑張んなきゃねー」

そうして二人してニッと笑う。

腕時計のライトをつけると事務机が四方にあり、椅子も置いてある。

「机に椅子乗せりゃ届きそうだね」

「バリケードも机と……この棚で時間は稼げそうだし先に──玲香、さっきの場所戻るよ」

「え?」

コツコツと微かに足音が聞こえる。

「戻ってきてる
バリケード作る余裕もないね
手元隠して座っとくよ」

「了解」

ギッ

「大人しく座ってんだねぇ
えらいえらい!
今お電話入れてお迎えを呼んだからね」

「はは!
身代金でしょ? さっさと受け取り準備でもしてれば?」

「おい、いい気になってんじゃ──「やめろ。大事な商品だ」……ちっ」

バタンッ

「……腹立つなぁ、殺すか!」

「落ち着いて!?」

ズルズルとちょっとずつ最低限の音で2台の事務机を扉の前にセットし、一つをひっくり返し何とか机上に載せ、もう1台の事務机を窓の真下に配置しその上に椅子を載せた時──

ガッ!!

と扉が開こうと音を立てた。

「なんだ? 建付けか?」

「ガキ共バリケード作りやがった!」

「なに? さっさと開けろ! おい! 逃げようったってそうはいかねぇぞクソガキ!」

「本性出したな馬鹿野郎!
あんたが壊したGPSと奪った携帯とは別に携帯私が持ってっから!」

「舐めた真似を! ぶっ殺してやる!」

ガンッガンッ

「玲香! さっさと乗って出ろ!」

「で、でも美音が!」

「二人共捕まったらそれこそ共倒れだ! あんただけでも行け!」

バリケードと言えど事務机と椅子と棚だけ。
成人男性2人なら数分ともたないだろう。

「……わかった!」

と玲香が窓から出た時、ガガッと男が流れ込んできた。

「チッ……!」

「んの糞ガキ! タダで済むと思うなよ!」

「思ってない、よっ!!」

ガンッと手に持った椅子を振り回し、足を一人の男の急所にぶつけた。

「があっ!?」

そのまま蹲る男の頭にクッション部分を上から振り下ろす。

「正当防衛、よね?」

「おい! ……チッ、使えねぇ雑魚が…!」

思い出せ、思い出せ。
昔読んだ本に書いてあった人間の急所。
あとがなく机に飛び乗る。

「お前だけでもまぁ金は入るだろ。
ちゃんと家に帰れるかは分かんねぇけど、なぁ!!」

腕を振り上げる男。

今っ!

足を横に薙ぐと丁度男の脇の下を強打する。

「ガッづぁっ……!」

痛みに悶え頭を下げる男に同時にまたつま先を一点に目掛けて薙いだ。

「あがぁっ!?」

「……人体の急所は複数あるけれど脇の下は神経が集中し、攻撃を加えられるとダメージが大きい。そして、今蹴った耳の後ろの乳様突起は刺されると運動機能が麻痺するほどの急所」

「くっ、そ、がき、が……」

「じゃ、私の携帯返してね? Bye!」

携帯もゲットしたし脱出もセイコー!

「あ、どーも、目暮警部補〜?」

『美音くんかね!?』

「脱出成功したから〜えっと……写メでいい?」

『近くに自動販売機とかないかね?
恐らくそこに住所が書いてある』

「あった……えっと……東京都西多摩郡〇〇……」

『聞こえたか! 全員現地に迎え! 直ぐに最寄りの交番の駐在をそちらに向かわせるから待っててくれ』

「了解!」

「ちょっ美音! 大丈夫なの!?」

「しばらくは起きないよ。
乳様突起に蹴りぶっ込んでもう1人は博士が作った麻酔針入りの腕時計で眠らせたから」

「なんでそんな危ないもん持ってんの?」

「護身用?」

「こわいわ!」

それから20分ほどして駐在がこちらに着き、私達は最寄りの交番に保護され3時間ほどした頃小五郎くんやら目暮警部補、まぁ目暮警部なんだけどまだ警部補だから、一応、やら捜査一課が到着し無事事件は解決しましたとさ。

あと乳様突起に蹴りぶち込んだことがバレて逆になんでそこ的確に入れられたの? とかちょっと怒られたけど。気になった人は調べてみてね!

その夜

「父さん、母さん」

パチリと箸をおもむろにテーブルに置く。

「どうしたの?」

母さんが食事をしながらこちらを見た。
てか誘拐されたのになんでこの人たち普通にしてんの。
ビビるわ。

「護身術を、習いたいです」

「……どうして?」

「こんなことが、またあるかもしれない」

「つ、次はパパが「「父さん/春彦は黙ってて」」はい……」

「その時は、今回みたいに上手くいくとは限らない。
だから、自分の身は自分で守りたい!
お願い!」

「……わかったわ。
何がしたいの?」

あっさりOKが出たことにビックリもしたが、さっき調べた、最強の護身術。

「クラヴマガ!! 近くに教室もあるよ!」

「おや、クラヴマガって」

「いい師匠がいるわ!」

は? まじ?

「マジよマジ
後で電話しておくわねー」

──────翌日

PRRRR....…

『おい美音、お前クラヴマガしてぇってどういうつもりだ』

「え? 皇くんなんで知ってんの」

『……ったく……明日土曜だし学校ねぇだろ?朝10時店集合な』

プッ

「え? まじ? もしかして師匠って……」

皇くんのこと……?

自己防衛は大切です

まずはレベル1からスタート!
イエローレベル目指して頑張るぞ!

「ほら! 構えがブレてんぞ!」

皇くん、どんだけ色々やってんのさ……

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