鮮血色のビターチョコ
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念願の本部帰還。
長かった、と笑顔が零れる。
荷物をまとめて仮の住まいに別れを告げた。
「さようなら」
もう来ないことを祈ろう。
ガタリ、とキャリーの車輪が敷居を跨いだ。
カツカツと靴音を響かせてエレベーターに乗り込んだ。1階のボタンを押し、点灯させると独特の浮遊感と静寂。
ポーンと軽い音が1人の狭い空間に響いた。
小さな管理人も居ない小さなエントランス。
ネームプレートの大して挿さっていないポストを横目に出入口を潜った。
「淺井様ですね?」
小さなマンションに不相応の黒い車が停まっており、側に控えていた運転手が声をかけてきた。
「……えぇ」
「お待ちしておりました。
空港までお送りいたします」
ニッコリと笑う男性に小さく眉を寄せ誘われるがままに車へ乗り込んだ。
「……珍しい趣向ですね」
窓の外の景色は見覚えのあるものから変化して流れてゆく。
「そうですか?
……彼から連絡を受けてね。念の為護衛してほしい、と」
「必要なかったと思いますけど」
乗り込んだ後部座席には早苗の他に男が1人。
「君がヘマをするとも思えないが、恩人の忘れ形見だからね」
「桜沢さんって結構、父のことを引きずってますよね?」
「さぁ、どうだかね。さぁ着いた」
「ありがとうございました、では」
そそくさと車を降りて空港入口へ向かった。
再度の帰還「覚えているかね? 彼女のことは」
「えぇ、勿論。よく覚えていますよ……
FBIになってしまったというのは日本の損失だと思いますがね」
「君は本当にFBIが嫌いなのだね。
降谷くん」
「うわっ赤井さんなんでいるんですか」
「迎えに来てやったんだ一応な」
「経費の無駄遣い〜」
「安心しろ。ポケットマネーだ」
「さらっとそういうのに引くわ〜」
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