choke on kiss

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「知っとりんさる?」
「何を?」
「アクセサリーとか身に着けるもんを贈るんは独占欲の表れなんやって」
「……」

2月12日。いつものように部屋を訪れてきたトットリに、アラシヤマは誕生日のプレゼントを贈った。
黒色の一枚革のベースに赤いベルトを巻いたシンプルなデザインのチョーカーを。
受け取ったトットリは、ベッドに寝転んだまま目と指先で嘗め回すようにそれを眺めながら上記の台詞を言った。

迷惑だと言われたように感じて、アラシヤマは少しばかり傷ついた。
贈り物をすること自体、彼にとっては勇気がいることなのだ。
別に大喜びするだろうなどとは思っていなかったが、やはりそれなりの期待はあった。

「あは、これ首輪みたいだっちゃね〜」

そんなアラシヤマを置いてトットリは言葉を続ける。言いながら、チョーカーの金属部分を指でなぞっている。
声は笑っていたが表情は彼の手が邪魔をしてみえなかった。

"独占欲"、"首輪"…彼が何を言いたいのか、10年以上共に過ごしたアラシヤマにはすぐにわかった。
そんなつもりではなかったが、言われてみればそうなのかもしれない。
彼の飼い主がなかなか首輪をかけてやらないのをじれったく思っていたのは確かだ。
そのことについて彼が苦しんでいるのもアラシヤマは知っていた。
だからといって、彼を彼の親友から奪い取り支配したところで、誰も幸福にはなれない。それもよくわかっている。

けれど、街でなんとなく目に付いたあのチョーカーが彼に似合うかも知れないと思ったことは、もしかしたら彼が喜ぶかも知れないと思ったことは、悪いことではないだろう。
アラシヤマは不貞腐れたような、子どもっぽい感情に囚われた。

「いらんねやったら…」
返せ、と言おうとベッドに転がっている同僚に目をやると。

「僕にぴったりだっちゃ」

トットリはいつの間にかチョーカーを身に着けて、嬉しそうに笑っていた。
その笑顔は内に何も含んでいないように思えた。単純な喜びを浮かべただけのものにみえた。
見抜けなかったのか、それとも本当に他意はないのか。
わざとらしいようなその台詞に、まっすぐこちらに寄越してくる不敵な視線に、本当に何の含みもないのか。
歪んだレンズでしか物をみられないアラシヤマは、その笑顔の真意が掴めず戸惑った。



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