飴。

(1/4)

ぐちゃり。
耳障りな水音が夜の静寂を破った。
肉が千切れる音。血が飛び散る音。
それは八つの頃から聞いている馴染み深いものであったが、やはり心地の良いものではない。

ぐち、ぐちゅ、ぐちゃり。
視界に広がるのは汚らしい赤色。
全身血まみれになりながら、ひたすらくないを動かす。

びちゃ、ぴちゃ。
人間であったはずのそれは既にただの肉塊と化していた。
それでもトットリは死体をいじるのをやめなかった。


しばらくそうして肉片を掻き乱した後、トットリは漸くくないを放した。
そして急に何かを思い出したようにポケットの中を探った。
出てきたのは、周りを砂糖でガチガチに固めた大粒の飴玉。
昼間にミヤギにもらったものだ。
ミヤギは甘すぎて食べられないからと言っていた。
確かに甘そうだと思った。
トットリは血肉でベタベタになった手で包み紙を剥がし口に放り込んだ。

「味がせん…」

甘いはずの飴玉は、しかし何の味覚も与えてはくれなかった。
トットリは先ほど投げたくないを拾って、もう一度死体の前に屈み込んだ。
何の生き物であったか判別もできないような、ただの肉と骨の塊。
それを見下ろすトットリの目に光は宿っていなかった。



*prev | | next#


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -