認識と確認

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トットリが士官学校に入学した当初から、アラシヤマは浮いていた。
コミュニケーション能力が著しく欠乏しているため友達がいない彼は常に一人で行動していた。
入学初日にシンタローと喧嘩して校舎を焼き払い謹慎処分になったことで、彼は校内で知らない者はいないというほど有名になったが、それでも友達はできないようだった。

アラシヤマが復帰してしばらくの間はみな好奇心から彼に構おうとしたが、いつも一人でブツブツと何かを呟いていたり無機物に話しかけていたりと気持ち悪い噂も多かったので(実際彼は独り言が多く植物や小石と会話している)徐々に彼に近づく者もいなくなった。
大体彼に話し掛けたとしても、嫌味か妄言しか返って来ないのだ。
友達が欲しいのならもう少し人に合わせれば良いのにと思うのだが、彼にはそんな考えは毛頭ないらしい。

そういう訳で、クラスに馴染めなかった彼は空気のような扱いを受けている。
というより、存在を認識されていない。
みな彼と学園生活を共にするにつれ、自然と彼だけを視界から外す技術を身に付けてゆく。ひと月も一緒にいれば、1日中彼を見ずに過ごすことも可能だ。
クラスメイトは彼が透明人間であるかのように彼を意識の外へ追いやり日々を送っている。

自分もそうしたいのだが、何故かトットリにはアラシヤマが目に付いて仕方がなかった。特に意識しているわけでも興味があるわけでもないのだが、気が付くと彼を目で追ってしまっている。

「トットリ〜なぁに見とんだべ?」
「え?」
職員室から出てきたミヤギにそう聞かれて、トットリはどきっとした。
「グラウンドになんかあんのけ?」
「いやぁ、何もあらせんっちゃ。もう用事は済んだんだぁか?」
「おう、レポート提出するだけだったかんな」
「そいだら早よ食堂行かい、お腹空いたっちゃ」
トットリは窓を閉めてミヤギに駆け寄った。普段通りの笑顔を向けるとミヤギも同じように笑い返してきて、トットリは安堵した。

窓の外ではアラシヤマがひとり、つまらなそうな顔で木陰に寝そべっていた。



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