寒い夜

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寒い、猛烈に寒い。
この島の夜は本当冷えるな。
昼間のうちは、もういいって…そんな頑張んなって…って言いたくなるほど太陽が燃え盛って蒸し暑いってのに、夜は妙に寒い。

…いや待てよ、寒いのはここだけかも知んねぇ。
天気が良いのに急に土砂降りになったりするときがあるから、この島は突然の雨が多いんだなと思ってたらこの洞窟の辺りだけだったし(ちなみにあれはこの洞窟で俺が同棲している根暗男の同僚の嫌がらせらしい)、ときどき変な音が聞こえるなと思ったらラップ音だった(あ、これは関係ないか?)。

とにかく、この島に来てからの俺の不幸は大概この変体質の同居人のせいだ。
きっとこの寒気もこの洞窟とこの男のせいだそうに決まってる。
どうせ知らねぇうちに幽霊とか呼び寄せてるに違いない。
だって昼間あんな暑いのに、夜こんな寒いわけねぇもん。よく知らねぇけど南国だから夜だってそんな寒くないはずだ。きっとそうだ。

くそー壬生に戻りてぇ。大体なんで俺はこんな薄気味悪い洞窟で薄気味悪い男と薄気味悪い夜を過ごさなきゃなんねーんだ。
明かりくらいつけろって何度か言ってはみたが、隣でうとうとしてやがる根暗男・アラシヤマは「わて明るいの苦手やから…」とか意味のわからんことをほざいて人の話なんざ聞きゃしねぇ。
なんでこのご時世に蝋燭1本なんだよ、もっと文明の利器を活用しろよこの島には不思議且つ有難いことに電気が通ってんだからよ。

「あー寒い」
「そうどすか?」
何がそうどすかだくそう腹立つ。お前は今まで寒い空気の中寒い目で見られ寒い奴として育って来たから寒さに強いのかも知れねぇが俺は違う。
燃え盛る太陽と暖かい(と言ったら語弊があるかも知れねぇが…)仲間に囲まれて生きてきたんだ。第一俺、寒いの苦手だし。

「寒いから寒いっつってんだよ…」
さすがに今思ったことをそのまま言ったら洞窟の隅で蹲ってすすり泣きしそうなので適当に逸らしておいた。さすが俺。

「でも寒い言われても布団はそれ一枚しかありまへんえ?あ、せや、特別にわてのトージ君貸したりまひょか?」
「あーん?そのデッサン人形に何ができるってんだよ」
「抱いて寝たら温おすかと…」
「ふざけんなどこの世界に木製人形抱いて寝る男がいるんだよ!気色わりぃ」
「うう…気色悪うて悪おしたなぁ…」
「え、マジかよ…」
俺が軽蔑の眼差しを向けると、アラシヤマはデッサン人形を抱えたまま隅の方で蹲ってすすり泣きを始めた。
うぜぇ。猛烈にうぜぇ。



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