希望の旭

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しばらくすると、テキパキと準備をすすめるシンタローたちの元に可愛いお客さんがみえた。
エグチとナカムラの小動物コンビだ。

「シンタローさん何してるのー?」
「してるのー?」
「お、エグチくんにナカムラくん。今みんなで正月の準備してんだよ」
「しょうがつってなーに?」
「なーに?」

無邪気にはしゃぐ二匹。
正月飾りに十円傷をつけられないよう避難させながら、殺し屋のお兄さんたちが質問に答える。

「正月っつーのは一年無事に終わったなーつってお祝いする日だべ」
「んで明日がそのお正月なんだっちゃ」
「そ、だから今夜は島のみんな誘って年越ししようと思ってんだ」

そのためにシンタローは朝から仲間という名の阿呆どもを借り出して準備をしていたのだ。
腐っても日本育ち、正月は祝いたい。

「へー、おもしろそー」
「シンタローさんの国って色んなイベントがあるんだねー」
「ん?んー、まあな」

この島に正月はないらしい。ならば、なおさら盛大に祝いたいとシンタローは思った。
聖域といわれるこの島に、自分達のようなならず者を受け入れてくれた感謝を示す意味も込めて。

「そういやぁ正月料理は用意しちょるんか?」
「さすがにおせちは無理だけど、雑煮は作るつもりだぜ。あと年越し蕎麦な」
「やっぱ雑煮食わねぇと正月って感じしねぇべな」
「だっちゃわいやー」

食べ物の話になるとみんなの頬が緩む。
シンタローの命と秘石を狙っているはずの刺客たちも、明日味わえるであろう雑煮に想いを馳せている。
一緒に新年を祝おうと言ったときのミヤギたちの嬉しそうな顔を思い出して、シンタローの顔にも自然と笑みが浮かんだ。
結局、誰も争いなんて望んでいないのだ。正月くらい素直に平和を謳歌したいのだ。



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