ここからはじまる

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そして午前09時25分。
「ミヤギはんは一体何しとるんや…」
アラシヤマは憎々しげに腕時計を睨んだ。集合は9時の約束だ。
いつも決められた時間の15分前には到着するアラシヤマは、もう40分も待っていることになる。
加えて、時間を守れない人間が許せない性格。

「ようもここまで人を待たして平気でおれますなあのお人は…」
「ま、ミヤギの遅刻癖は今に始まったことじゃなかろうが」
「だっちゃ、まだ時間はたーっぷりあるっちゃ」

しかし、細かいことは気にならないコージとミヤギに甘いトットリは平然としていて。
それがまた気に食わないらしい。
アラシヤマは右足を小刻みに揺り動かしながら合切袋から煙草を取り出した。

「ほんまにあの顔だけ阿呆は…」
「ミヤギくんのこと悪う言うたら殺す」

ピキ、とアラシヤマのこめかみに青筋が立つ音がした。
煙草に着火するため人差し指から生み出された炎が、ぼん、と暴発して消えた。

「…この腐れ忍…」
「トットリ、携帯には連絡したんか?」
コージの声がわざとらしくアラシヤマの言葉を遮る。
睨みあげると目でいさめられ、アラシヤマは仕方なく煙草をくわえて押し黙った。

「さっきから電話しちょーけど全然繋がらん。移動中かも知れん」
「まさかまだ寝とるっちゅーこたぁないじゃろうの…」
「いくらミヤギくんでももう起きとるだら」
「わからんぞ、ミヤギは団のこれからを決める大事な会議に二時間も遅刻して、堂々と寝坊しましたと言うた奴じゃけんの」
「さすがにあいは肝が冷えたっちゃ…サービス様をあいだけ待たせて笑っとられるんはミヤギくんだけだらぁな…」
「がいに困った奴じゃ」
「とりあえずメールも入れとこうかいな」
「おう、そうしてくれい」

アラシヤマは暢気な同僚達の暢気な会話を聞きながら、不味そうに煙草をふかした。



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