congratulations!

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「今日おめの国さ記念日だべ?」
授業が終わってすぐ、ミヤギはトットリに話し掛けた。
「うん、ミヤギくん覚えとってごしたんだぁか?」
「覚えるも何も、昨日おめがそう言うとったでねか」
「そげだったかいな」
「んだ。だがら今からおめの部屋でお祝いすっぺ。コージたちも呼んでぱーっとやっぺよ」
「お祝い…?」
トットリは首を傾げた。
そもそもとっとり県民の日は鳥取県誕生の記念日であり、ミヤギの考えているような馬鹿騒ぎする日ではない。
確かに昨日、知り合いの何人かに明日は故郷の記念日だとは言ったが、あくまで天気がいいね〜レベルの軽い世間話として触れただけである。
何がどう間違って伝わったのだろうか。

いや、今はそれよりもこの状況の方が問題だった。
「今から…だぁか?」
トットリはこれからあの根暗京都人と会わねばならないのだ。
こちらから呼び出した手前、すっぽかすわけにはいかない。
「あー…僕今からちいと用があるけぇ、先に行って用意しとってごさんかいな…?」
「用事?なんだべ?」
「えーと…」
まさかアラシヤマと約束があるなどとは言えない。
ちゃんと言い訳を考えておくべきだった。
派手好きなミヤギが大騒ぎできる記念日というイベント(何度も言うがとっとり県民の日は大騒ぎする日ではない)を逃す訳ないことは十分予測できたのに。

「オラに言えねぇことか?」
ミヤギの声が少し低くなった。イラついているようだ。
ミヤギは自分の思い通りにならないとすぐに臍を曲げる。特にその原因がトットリであるときは、より苛立ちが強い。
ミヤギの中でトットリは自分の言うことならなんでも素直に聞くことになっているのだ。

「トットリ、これから何があんだべ?」
「あの…」
トットリはミヤギから目を逸らし、教室を見渡した。
アラシヤマの姿はない。
もう中庭へ向かったのだろうか。それなら急がなければ。
万が一あの根暗が自分を待っている間に誰かに声をかけられ「トットリはんと待ち合わせしとるんどす」などとほざきでもすれば、"アラシヤマの友達"というレッテルを貼られることになる。
それは絶対に嫌だ。しかしミヤギを撒く良い考えが浮かばない。
焦ったトットリは強行手段に出た。
「僕急いどるけぇ、ごめん!」
トットリは無理やりミヤギを振り切って駆け出した。
後ろからミヤギが何か言っているようだったが振り返らなかった。
とにかく今はアラシヤマとの用事をすぐに終わらせよう。
そしてひたすら謝ろう。土下座くらいすれば許してもらえるだろう。



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