::好きな人ができた音柱 その人を目にした時、私の世界は一気に輝いて見えた。一目惚れだなんてお話だけの有り得ないものだと思っていたのに、私はその人を一目見て好きになってしまった。お仕えしている恋柱様には直ぐに気付かれ、お話する度に素敵!と言って応援してくれるからとても幸せだ。その人を想うだけで今日も頑張ろうと思ってしまうのだから、恋というものは不思議なものだ。 「……前の地味っぽさが無くなったかぁ?」 「音柱様ったら、女性に対して酷い言い方ですね」 不躾な物言いだけれど、声色は優しいものだ。輝石がはめ込まれた額当てが陽の光に煌めいて少しだけ眩しかった。 「何かあったのか?」 「実は私、好きな人が出来たんです」 好きな人という単語だけで照れが出てしまい、誤魔化すように笑いながらそう言えば、音柱様は目を大きく見開いて何事かを口にした。とても小さな声で、私には聞こえなかったけれど。 「紅も新しくして、着物も恋柱様が選んでくれたんです。ふふ、似合ってますか?」 「……よく似合ってる。派手に綺麗だ」 「まァ!」 とても嬉しい褒め言葉を貰い、素直に笑ってお礼を言う。柔らかい優しい声色だったのに、音柱様は何故か泣きそうな顔をしていた。 back |