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眠い。
すこぶる眠い。
あの兎達が帰った後、すっかり飛んでいってしまった眠気を呼び戻そうと頑張ってみたけど眠気が来る前に朝になってしまった。
仕方なく準備をして学校に向かい、教室に辿り着いた時に急激な眠気に襲われた。
…なんで眠気が来て欲しい時に来ないで今来るのかしらね。
薄れていく意識の中でそう思ったけど、それ以上考える事は出来なくて深い暗闇に沈んだ…。

「…うちゃ…」
どれくらい寝てたんだろう。
久々に夢も見ないくらい眠った気がする。
あぁ、学校に着いてすぐ寝たんだ…
もう一時間目の授業始まるのかな。
「涼ちゃんってば!!」
突然の大声。
その声でまだ残っていた眠気が吹き飛んだ。
ゆっくり顔を上げると親友の顔。
「…おはよ陽菜」
「おはよー…って違うくて!!」
いつも思うけど朝からテンション高いよね君。
まだわぁわぁと言ってる陽菜を頬杖ついて見る。
「もう昼休みなのにさ、涼ちゃん全然起きないんだもん!」
そう言って陽菜は少し怒ったようにぷくり、と頬を膨らませた。
うん、君ってそういう顔似合うよね。
…あれ?
「…もう昼休み?」
「そうだよ!」
携帯を開いて私の目の前にずいっと差し出してきた。
小さい画面の右上には【12:48】の表示。
…なんてことなの。
どうやら午前の授業をまるまる寝て過ごしたらしい。
しかも今日の三時間目は…
「吉沢先生があとで職員室来いだってー」
ドS眼鏡もとい吉沢先生の授業だった…。
最悪だ…思わずため息を吐いた。
「けどさ、珍しいよね?」
「え?」
「涼ちゃんがこんなに寝てるの」
と、きんぴらごぼうを食べながら陽菜が言う。
…いつお弁当だしたの?
そんなことより、昨夜の事を言おうかと迷ったけど、元はといえば陽菜と恭平が東のアリスの噂を確かめようと言い出したせいなので話す事にした。
信じてもらおうなんてつもりはない。

「…それ、ほんとなの!?」
「まじかよ、喋る兎って」
話し終えると陽菜は目を輝かせるし、恭平は腕を組みながらまじかよ、と連呼している。
…って
「恭ちゃんいつからいたの?」
私も思ったことを陽菜が代わりに聞く。
お前が話し出した時から、としれっと言う幼なじみに軽くデコピンを食らわせてやった。